この記事では、「和 \(S_n\) を含む漸化式」の解き方をわかりやすく解説していきます。
関連公式や一般項の求め方も説明していきますので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね。
目次
和 \(S_n\) を含む漸化式【公式】
数列の和 \(S_n\) を含む漸化式の問題では、以下の関係を利用して \(S_n\) を消去した式に変形します。
数列 \(\{a_n\}\) の一般項を \(a_n\)、初項から第 \(n\) 項までの和を \(S_n\) とすると、
- \(n = 1\) のとき
\(\color{red}{a_1 = S_1}\) …① - \(n \geq 2\) のとき
\(\color{red}{a_n = S_n − S_{n−1}}\) …②
\(S_n\) は初項から第 \(n\) 項までの和、\(S_{n+1}\) は初項から第 \(n + 1\) 項までの和ですから、②が成り立つのがわかりますね。
それでは、具体的な解き方の流れを見ていきましょう。
和 \(S_n\) の漸化式から一般項の求め方
例題を通して、和 \(S_n\) を含む漸化式の解き方を説明します。
数列 \(\{a_n\}\) の初項から第 \(n\) 項までの和 \(S_n\) が、一般項を用いて
\(S_n = −2a_n − 2n + 5\)
と表されるとき、一般項 \(a_n\) を \(n\) で表せ。
まずは関係式に番号をつけておきましょう。
\(S_n = −2a_n − 2n + 5\) …① とする。
また、初項 \(a_1\) はすぐにわかるので、忘れる前に求めておきます。
①において、\(n = 1\) のとき
\(\begin{align} S_1 &= −2a_1 − 2 \cdot 1 + 5 \\ &= −2a_1 + 3 \end{align}\)
\(S_1 = a_1\) より、
\(a_1 = −2a_1 + 3\)
よって
\(3a_1 = 3\) すなわち \(a_1 = 1\)
さて、ここからが考えどころです。
解き始める前に、式変形の方針を確認します。
基本的に、①の式から漸化式(特に \(a_{n+1}\) と \(a_n\) の式)を得ることを目指します。
\(a_{n+1} = S_{n+1} − S_n\) なので、\(S_{n+1}\) の式があれば漸化式にできそうですね。
①の式の添え字部分を \(1\) つ上にずらせば(\(n \to n + 1\))、\(S_{n+1}\) の式ができます。
方針が定まったら、式変形を始めましょう。
①の添え字を上に \(1\) つずらした式(②)から①式を引いて、左辺に \(S_{n+1} − S_n\) を得ます。
①より
\(S_{n+1} = −2a_{n+1} − 2(n + 1) + 5\) …②
② − ① より
\(\begin{array}{rr}&S_{n+1} = −2a_{n+1} − 2(n + 1) + 5\\−) &S_n = −2a_n −2n + 5 \\ \hline &S_{n+1} − S_n = −2(a_{n+1} − a_n) − 2 \end{array}\)
\(\color{red}{a_{n+1} = S_{n+1} − S_n}\) を利用して、和 \(S_{n+1}\), \(S_n\) を消去します。
\(S_{n+1} − S_n = a_{n+1}\) より、
\(a_{n+1} = −2(a_{n+1} − a_n) − 2\)
整理して
\(3a_{n+1} = 2a_n − 2\)
\(\displaystyle a_{n+1} = \frac{2}{3} a_n − \frac{2}{3}\) …③
これで、数列 \(\{a_n\}\) の漸化式に変形できましたね。
あとは漸化式の解法パターンにしたがって一般項を求めるだけです。
今回の漸化式は特殊解型なので、特性方程式を利用して式変形します。
\(\displaystyle a_{n+1} = \frac{2}{3} a_n − \frac{2}{3}\) …③
ここで、\(\displaystyle c = \frac{2}{3} c − \frac{2}{3}\) を解くと
\(c = −2\) より ③は
\(\displaystyle a_{n+1} + 2 = \frac{2}{3} (a_n + 2)\)
と変形できる。
よって、数列 \(\{a_n + 2\}\) は初項 \(a_1 + 2 = 3\)、公比 \(\displaystyle \frac{2}{3}\) の等比数列であるから、
\(\displaystyle a_n + 2 = 3 \cdot \left( \frac{2}{3} \right)^{n−1}\)
したがって
答え: \(\color{red}{\displaystyle a_n = 3 \cdot \left( \frac{2}{3} \right)^{n−1} − 2}\)
ポイントは、添え字をずらした式(②)と元の式(①)の差を求め、関係式「\(a_{n+1} = S_{n+1} − S_n\)」を利用して \(S_{n+1}\), \(S_n\) を消去することです。
問題によっては、添え字を下にずらした方がうまくいくこともあります。
決めつけですぐに変形を始めないで、まずはどうずらせば和(\(S_{n+1}\), \(S_n\))が消去できるか、方針を立てるようにしましょう。
「漸化式」の解き方を忘れている場合は、以下の記事でおさらいしておきましょう!
漸化式全パターンの解き方まとめ!難しい問題を攻略しよう
和 \(S_n\) を含む漸化式の練習問題
それでは、練習問題に挑戦しましょう。
練習問題①「\(S_n\) と \(a_n\) の漸化式」
数列 \(\{a_n\}\) の初項から第 \(n\) 項までの和を \(S_n\) とするとき、以下の関係式が成り立つ。
\(S_n = 2a_n + n\)
このとき、一般項 \(a_n\) を求めよ。
まずは、関係式から和 \(S_n\) を消去するところを目指します。
式が整理できたら、あとは通常の漸化式の問題と同じですね。
\(S_n = 2a_n + n\) …① とする。
①で \(n = 1\) とすると、\(S_1 = a_1\) より
\(a_1 = 2a_1 + 1\)
よって \(a_1 = −1\)
また、
\(S_{n+1} = 2a_{n+1} + (n + 1)\) …②
② − ① より
\(\begin{array}{rr}&S_{n+1} = 2a_{n+1} + (n + 1) \\−) &S_n = 2a_n + n \\ \hline &S_{n+1} − S_n = 2(a_{n+1} − a_n) + 1 \end{array}\)
\(S_{n+1} − S_n = a_{n+1}\) より、
\(a_{n+1} = 2(a_{n+1} − a_n) + 1\)
整理して
\(a_{n+1} = 2a_n − 1\)
ここで、\(c = 2c − 1\) を解くと
\(c = 1\) より
\(a_{n+1} − 1 = 2(a_n − 1)\)
よって、数列 \(\{a_n − 1\}\) は初項 \(a_1 − 1 = −2\)、公比 \(2\) の等比数列であるから
\(a_n − 1 = −2 \cdot 2^{n−1} = − 2^n\)
したがって
\(a_n = 1 − 2^n\)
答え: \(\color{red}{a_n = 1 − 2^n}\)
練習問題②「\(S_n\) と \(S_{n − 1}\) の漸化式」
数列 \(\{a_n\}\) の初項から第 \(n\) 項までの和を \(S_n\) とする。
次の式が成り立つとき、一般項 \(a_n\) を \(n\) で表せ。
\(S_1 = 1\), \(S_{n+1} − 3S_n = 2^{n+1} − 1\)
添え字のずらし方は、問題によって柔軟に考えます。
与えられた式を、漸化式(\(a_n\), \(a_{n+1}\) の式)に変換するにはどうずらせばよいでしょうか。
\(S_{n+1} − 3S_n = 2^{n+1} − 1\) …① とする。
\(a_1 = S_1 = 1\)
また、①において \(n = 1\) のとき
\(S_2 − 3S_1 = 2^2 − 1 = 3\)
\(S_2 = a_1 + a_2 = 1 + a_2\) より、
\(1 + a_2 − 3 = 3\)
\(a_2 = 5\)
ここで、\(n \geq 2\) のとき、①から
\(S_n − 3S_{n−1} = 2^n − 1\) …②
① − ② より
\(\begin{array}{rr}&S_{n+1} − 3S_n = 2^{n+1} − 1 \\−) &S_n − 3S_{n−1} = 2^n − 1 \\ \hline &(S_{n+1} − S_n) − 3(S_n − S_{n−1}) = 2^{n+1} − 2^n \end{array}\)
(見切れる場合は横へスクロール)
\(S_{n+1} − S_n = a_{n+1}\), \(S_n − S_{n−1} = a_n\) より
\(\begin{align} a_{n+1} − 3a_n &= 2^{n+1} − 2^n \\ &= 2^n(2 − 1) \\ &= 2^n \end{align}\)
よって
\(a_{n+1} − 3a_n = 2^n\) …③
③において \(n = 1\) のとき
\(a_2 − 3a_1 = 2^1\) すなわち \(a_2 = 2 + 3 = 5\) より、
③は \(n = 1\) のときも成り立つ。
③の両辺を \(2^{n+1}\) で割ると、
\(\displaystyle \frac{a_{n+1}}{2^{n+1}} − \frac{3a_n}{2^{n+1}} = \frac{2^n}{2^{n+1}}\)
\(\displaystyle \frac{a_{n+1}}{2^{n+1}} − \frac{3}{2}\cdot \frac{a_n}{2^n} = \frac{1}{2}\)
\(\displaystyle \frac{a_{n+1}}{2^{n+1}} = \frac{3}{2}\cdot \frac{a_n}{2^n} + \frac{1}{2}\)
ここで、\(\displaystyle \frac{a_n}{2^n} = b_n\) とおくと
\(\displaystyle b_{n+1} = \frac{3}{2} b_n + \frac{1}{2}\)
\(\displaystyle c = \frac{3}{2} c + \frac{1}{2}\) を解くと \(c = −1\) より
\(\displaystyle b_{n+1} + 1 = \frac{3}{2} (b_n + 1)\)
また、\(\displaystyle b_1 + 1 = \frac{a_1}{2^1} + 1 = \frac{3}{2}\)
数列 \(\{b_n + 1\}\) は初項 \(\displaystyle \frac{3}{2}\)、公比 \(\displaystyle \frac{3}{2}\) の等比数列であるから
\(\begin{align} b_n + 1 &= \frac{3}{2} \cdot \left( \frac{3}{2} \right)^{n−1} \\ &= \left( \frac{3}{2} \right)^n \end{align}\)
よって、\(\displaystyle b_n = \left( \frac{3}{2} \right)^n − 1\)
したがって、
\(\begin{align} a_n &= 2^n b_n \\ &= 2^n \left\{ \left( \frac{3}{2} \right)^n − 1 \right\} \\ &= 3^n − 2^n \end{align}\)
答え: \(\color{red}{a_n = 3^n − 2^n}\)
添え字を下に \(1\) つずらす場合は、\(\color{red}{n \geq 2}\) という条件がつきます。
\(n = 1\) のときはそれより下にずらすことができないので、あらかじめ除外しておくのですね。
以上で問題も終わりです。
和 \(S_n\) を含む漸化式では、和の形を消去するという方針を押さえておけば怖くありません。
練習を積んで、ぜひマスターしてくださいね!
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