この記事では、「図形と漸化式」をわかりやすく解説していきます。
問題を解くコツをていねいに解説していきますので、ぜひこの記事を通して応用問題も解けるようになりましょう!
目次
図形と漸化式の問題パターン
図形と漸化式の問題では、注目している図形の数を \(n = 1, 2, 3, \cdots\) と増やしたとき、それに伴って変化するものの個数や値を求めます。
よくある問題のパターンと、注目する要素について説明していきます。
【パターン①】重ねた図形と領域の個数
同じ形の図形を \(1\) 個、\(2\) 個、\(3\) 個…と重ね、平面が分けられる領域を求めさせる問題です。
このような問題では、図形を \(1\) 個増やしたときに新たに増えた「交点の数 → 線分(または半直線)の数 → 領域の数」で考えます。
線分とは両端が決まっている線、半直線とは一方の端が決まっている線です。
\(2\) つの点を結ぶ線は「線分」、\(1\) つの点から伸びる線は「半直線」ととらえます。
直線を例に考えましょう。
平面上に直線を \(1\) 本引くと、領域が \(1\) つ増えます。
この性質は、直線がどんどん増えても変わりません。
すでにあった直線との交点が追加した直線を分割し、分割された線 \(1\) 本当たり \(1\) つの領域を増やすのです。
この性質は円など別の図形になっても同じです。
「図形の個数 → 領域の数」と直接結びつけず、図形を \(1\) 個増やしたときに新たに増えた「交点の数 → 線分(または半直線)の数 → 領域の数」と順を追って考えるようにしましょう。
【パターン②】接する図形と辺の長さ・面積
同じ形の図形を \(1\) つ前の図形と接するように並べ、辺の長さ(半径)・面積などを求めさせる問題です。
ズバリ、三角形・四角形などの場合は「相似比」に、円の場合は「中心間の距離と三平方の定理」に注目しましょう。
そうすると、辺の比や半径の比から漸化式を立てやすくなります。
書き込むべき情報が多くなるので、なるべく大きく見やすい図を書くのもポイントです!
図形と漸化式を解くコツ
図形と漸化式の問題の山場は、「変化の規則性を読み取り、漸化式を作る」ところです。
この工程は、解答を書き始める前に、問題用紙の余白でやっておくのが大切です。
解答の筋道が立たない状態でいきなり解答を書くのは絶対にNGですよ!
解答を書く前に、以下の \(2\) つを行っておきましょう。
- 実際に図を書く(\(1, 2, 3\) 番目あたりまで)
- \(n, n + 1\) 番目の関係を漸化式で表す
例題「直線が分ける領域の個数」
例題で実際に確認しましょう。
平面上にどの \(3\) 本の直線も \(1\) 点を共有しない、\(n\) 本の直線がある。
どの \(2\) 本の直線も平行でないとき、平面が \(n\) 本の直線によって分けられる領域の個数 \(a_n\) を \(n\) で表せ。
増える図形と領域の問題ですね。
まずは、問題の状況をつかむために \(1, 2, 3\) 番目あたりまで図を書いてみましょう。
これで、問題の状況と規則性がなんとなくわかりますね。
それでは次に、\(n, n + 1\) 番目の関係を漸化式で表しましょう。
直線が \(n\) 本あるところに次の \(1\) 本を増やすと、
- 交点が \(n\) 個増加
- 新たな線が \(n + 1\) 本増加
- 領域が \(n + 1\) つ増加
します。
つまり、\(a_n\) 個あった領域が、\(n + 1\) 番目には \(n + 1\) 個増えて \(a_{n+1}\) 個になることから、
漸化式 \(a_{n+1} = a_n + n + 1\)
が立てられます。
ここまで筋道が立ったら、実際に解答を書き始めましょう。
直線が \(1\) 本のとき、その直線は平面を \(2\) つに分けるから
\(a_1 = 2\)
\(n\) 本の直線で平面が \(a_n\) 個の領域に分けられているとき、\(n + 1\) 本目の直線を引くと、その直線はほかの \(n\) 本の直線で \(n + 1\) 個の線分(または半直線)に分けられ、領域は \(n + 1\) 個増加する。
よって
\(a_{n+1} = a_n + n + 1\)
\(a_{n+1} − a_n = n + 1\) より、
数列 \(a_n\) は、一般項 \(n + 1\) の階差数列をもつので
\(n \geq 2\) のとき
\(\begin{align} a_n &= a_1 + \sum_{k = 1}^{n−1} (k + 1) \\ &= 2 + \frac{1}{2} (n − 1)n + (n − 1) \\ &= \frac{4 + n^2 − n + 2n − 2}{2} \\ &= \frac{n^2 + n + 2}{2} \end{align}\)
\(\displaystyle \frac{1^2 + 1 + 2}{2} = 2 = a_1\) より、
これは \(n = 1\) のときも成り立つ。
答え: \(\color{red}{\displaystyle a_n = \frac{n^2 + n + 2}{2}}\)
このように、変化の規則性を読み取って漸化式を作ることができれば、図形と漸化式の問題は \(8\) 割方突破できたも同然です。
その後の漸化式を解くのに不安を覚える方は、先に漸化式の解き方をマスターしておきましょう!
漸化式とは?基本型や特性方程式をわかりやすく解説! 漸化式全パターンの解き方まとめ!難しい問題を攻略しよう
図形と漸化式の練習問題
それでは、図形と漸化式の練習問題に挑戦しましょう。
練習問題①「2 辺に接する円の漸化式」
\(\angle \mathrm{XPY} \ (= 60^\circ)\) の \(2\) 辺 \(\mathrm{PX}\), \(\mathrm{PY}\) に接する半径 \(1\) の円を \(\mathrm{O_1}\) とする。
次に、\(2\) 辺 \(\mathrm{PX}\), \(\mathrm{PY}\) および円 \(\mathrm{O_1}\) に接する円のうち半径の小さい方の円を \(\mathrm{O_2}\) とする。
以下同様に円 \(\mathrm{O_3}, \mathrm{O_4}, \cdots\) を順に作る。
このとき、円 \(\mathrm{O_n}\) の半径 \(r_n\) を求めよ。
また、円 \(\mathrm{O_n}\) の面積を \(S_n\) とするとき、\(S_1 + S_2 + \cdots + S_n\) を求めよ。
まずは余白で作図して問題のイメージを把握しましょう。
図形を接するように配置する問題では、\(n\) 番目、\(n + 1\) 番目の関係をそのまま図示して確認することができますね。
図の \(\triangle \mathrm{O_nO_{n+1}H}\) について、
\(\mathrm{O_nO_{n+1}} = r_n + r_{n+1}\) …①
\(\mathrm{O_nH} = r_n − r_{n+1}\) …②
\(\angle \mathrm{O_nO_{n+1}H} = 30^\circ\) より
\(\mathrm{O_nO_{n+1}} = 2\mathrm{O_nH}\) …③
①、②、③より
\(r_n + r_{n+1} = 2(r_n − r_{n+1})\)
整理して
\(\displaystyle r_{n+1} = \frac{1}{3} r_n\)
また、\(r_1 = 1\)
よって数列 \(\{r_n\}\) は初項 \(1\)、公比 \(\displaystyle \frac{1}{3}\) の等比数列であるから
\(\displaystyle r_n = \left( \frac{1}{3} \right)^{n−1}\)
また、
\(\displaystyle S_n = \pi r_n^2 = \pi \left( \frac{1}{9} \right)^{n−1}\)
であるから
\(S_1 + S_2 + \cdots + S_n\)
\(\displaystyle = \pi \frac{1 − \left( \frac{1}{9} \right)^n}{1 − \frac{1}{9}}\)
\(\displaystyle = \frac{9\pi}{8} \left\{ 1 − \left( \frac{1}{9} \right)^n \right\}\)
答え:
\(\color{red}{\displaystyle r_n = \left( \frac{1}{3} \right)^{n−1}}\)
\(\color{red}{\displaystyle S_1 + S_2 + \cdots + S_n = \frac{9\pi}{8} \left\{ 1 − \left( \frac{1}{9} \right)^n \right\}}\)
練習問題②「2 辺に下ろした垂線の漸化式」
直線 \(y = ax\) \((a > 0)\) を \(\ell\) とする。
\(\ell\) 上の点 \(\mathrm{A_1}(1, a)\) から \(x\) 軸に垂線 \(\mathrm{A_1B_1}\) を下ろし、\(\mathrm{B_1}\) から \(\ell\) に垂線 \(\mathrm{B_1A_2}\) を下ろす。さらに点 \(\mathrm{A_2}\) から \(x\) 軸に垂線 \(\mathrm{A_2B_2}\) を下ろす。以下同様に線分 \(\mathrm{A_3B_3}\), \(\mathrm{A_4B_4}\), \(\cdots\) を引き、線分 \(\mathrm{A_nB_n}\) の長さを \(l_n\) とおく。
(1) \(l_n\) を \(n, a\) で表せ。
(2) \(l_1 + l_2 + l_3 + \cdots + l_n\) を \(n, a\) で表せ。
直角三角形と相似比に注目しましょう。
また、\(1\) 番目の情報を先に整理しておくとスムーズです。
(1)
\(l_1 = \mathrm{A_1B_1} = a\)
また、\(\angle \mathrm{A_1OB_1} = \theta\) とおくと
\(\displaystyle \cos\theta = \frac{\mathrm{OB_1}}{\mathrm{OA_1}} = \frac{1}{\sqrt{a^2 + 1}}\) …①
図において、
\(\angle \mathrm{A_nB_nO} = \angle \mathrm{A_nA_{n+1}B_n} = 90^\circ\)
\(\angle \mathrm{OA_nB_n} = \angle \mathrm{B_nA_nA_{n+1}}\) (共通)
\(2\) つの角がそれぞれ等しいので
\(\triangle \mathrm{A_nOB_n}\) ∽ \(\triangle \mathrm{A_nB_nA_{n+1}}\)
\(\angle \mathrm{A_nB_nA_{n+1}} = \angle \mathrm{A_nOB_n} = \theta\) より
\(\begin{align} \mathrm{B_nA_{n+1}} &= \mathrm{A_nB_n} \cos\theta \\ &= l_n \cos\theta \end{align}\)
また、
\(\angle \mathrm{B_{n+1}A_{n+1}B_n} = \angle \mathrm{A_nB_nA_{n+1}} = \theta\) であるから
\(\begin{align} l_{n+1} &= \mathrm{B_nA_{n+1}} \cos\theta \\ &= l_n \cos\theta \cdot \cos\theta \\ &= l_n \cos^2\theta \end{align}\)
したがって、①より
\(\displaystyle l_{n+1} = \frac{1}{a^2 + 1} l_n\)
よって数列 \(\{l_n\}\) は初項 \(a\)、公比 \(\displaystyle \frac{1}{a^2 + 1}\) の等比数列であるから
\(\begin{align} l_n &= a \left( \frac{1}{a^2 + 1} \right)^{n−1} \\ &= \frac{a}{(a^2 + 1)^{n−1}} \end{align}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle l_n = \frac{a}{(a^2 + 1)^{n−1}}}\)
(2)
\(a > 0\) より \(\displaystyle \frac{1}{a^2 + 1} \neq 1\)
よって
\(l_1 + l_2 + l_3 + \cdots + l_n\)
\(\displaystyle = a \frac{1 − \left( \frac{1}{a^2 + 1} \right)^n}{1 − \frac{1}{a^2 + 1}}\)
\(\displaystyle = \frac{a^2 + 1}{a} \cdot \frac{(a^2 + 1)^n − 1}{(a^2 + 1)^n}\)
\(\displaystyle = \frac{(a^2 + 1)^n − 1}{a(a^2 + 1)^{n−1}}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{(a^2 + 1)^n − 1}{a(a^2 + 1)^{n−1}}}\)
以上で問題も終わりです。
図形がからむと複雑だからできれば避けたい…と思いがちですが、コツをつかめば難しいものではありません。
漸化式の基本と、図形問題のコツをつかんで、ぜひマスターしてくださいね!
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