グラフの平行移動とは?二次関数などの公式と作図を解説!

この記事では、「グラフの平行移動」についてわかりやすく解説していきます。

一次関数や二次関数の平行移動の公式とやり方、作図方法も紹介していくので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね!

 

グラフの平行移動とは?

グラフの平行移動とは、グラフ上のある図形または関数を、形を変えず、一定方向に一定の距離だけ移動させることです。

一般的に、グラフを平行移動させるときには、 \(x\) 軸方向と \(y\) 軸方向にそれぞれどれだけ移動したかを明記します。

(例:\(x\) 軸方向に \(−4\) 移動、\(y\) 軸方向に \(3\) 移動、など)

 

平行移動の公式

平行移動の公式について説明します。

平行移動の公式(一般化)

グラフの平行移動では、関数の種類によらず一般的に次の関係が成り立ちます。

グラフの平行移動

関数 \(y = f(x)\) のグラフを \(x\) 軸方向に \(p\)、\(y\) 軸方向に \(q\) だけ平行移動したグラフは、

\begin{align}\color{red}{y − q = f(x − p)}\end{align}

すなわち

\begin{align}\color{red}{y = f(x − p) + q}\end{align}

この公式は、どの関数においても成り立ちます。

平行移動後の関数では、「\(x\) を \((x − p)\)、\(y\) を \((y − q)\) に置き換える!」と覚えておきましょう。

 

最もよく目にする一次関数、二次関数の平行移動の公式は次のとおりです。

一次関数の平行移動の公式

一次関数の平行移動

一次関数 \(y = ax\) のグラフを \(x\) 軸方向に \(p\)、\(y\) 軸方向に \(q\) だけ平行移動したグラフは、

\begin{align}\color{red}{y = a(x − p) + q}\end{align}

 

二次関数の平行移動の公式

二次関数の平行移動

二次関数 \(y = ax^2\) のグラフを \(x\) 軸方向に \(p\)、\(y\) 軸方向に \(q\) だけ平行移動したグラフは、

\begin{align}\color{red}{y = a(x − p)^2 + q}\end{align}

 

二次関数 \(y = ax^2 + bx + c\) のグラフを \(x\) 軸方向に \(p\)、\(y\) 軸方向に \(q\) だけ平行移動したグラフは、

\begin{align}\color{red}{y − q = a(x − p)^2 + b(x − p) + c}\end{align}

 

平行移動の原理

\(p\), \(q\) だけ平行移動するのに、なぜ平行移動後の式では \(x\), \(y\) から \(−p\), \(−q\) するのかわかりますか?

これは、平行移動の作業を移動後の立場で見るか、移動前の立場で見るかの違いです。

 

例えば、\(y = x^2\) …① というグラフを、\(x\) 軸方向に \(3\)、\(y\) 軸方向に \(5\) だけ平行移動することを考えましょう。

元の関数 \(y = x^2\) 上の点を \((x, y)\) とし、平行移動後の関数上の点を \((X, Y)\) とします。

移動前の点 \((x, y)\) に対応する移動後の点が \((X, Y)\) ということになります。

すると、

\(x + 3 = X\)、\(y + 5 = Y\)

すなわち

\(x = X − 3\)、\(y = Y − 5\)

 

これを移動前の式 \(y = x^2\) に代入すると、

\(Y − 5 = (X − 3)^2\) …②

となりますね。これが移動後の式です。

解答の際に、\(X\)、\(Y\) の表記を一般的な表記である \(x\)、\(y\) に戻すと、

\(y − 5 = (x − 3)^2\)

となるわけです。

このように、ただマイナスすればいいと考えるのではなく、グラフ上の点を移動させていると理解しましょう。

 

平行移動のやり方

例題を通して、平行移動の式変形のやり方を解説していきます。

例題①「一次関数を平行移動する」

例題①

\(y = 3x\) を \(x\) 軸方向に \(2\)、\(y\) 軸方向に \(4\) だけ平行移動したグラフの式を求めよ。

 

\(x\) 軸方向に \(2\)、\(y\) 軸方向に \(4\) だけ平行移動するので、元の関数の \(x\), \(y\) を \((x − 2)\), \((y − 4)\) に置き換えればよいですね。

解答

 

\(y = 3x\) を \(x\) 軸方向に \(2\)、\(y\) 軸方向に \(4\) だけ平行移動すると、

\(y − 4 = 3(x − 2)\)

\(y = 3(x − 2) + 4\)

\(y = 3x − 6 + 4\)

\(y = 3x − 2\)

 

答え: \(\color{red}{y = 3x − 2}\) 

Tips

このとき、\(y − 4 = 3x − 2\) と括弧(かっこ)を忘れるのはNGです。係数 \(3\) は \(x\) 座標全体にかかるものなので、移動後の \((x − 2)\) 全体にかかります。

 

移動後のグラフ上のどの点をとっても、元のグラフから \(x\) 軸方向に \(2\)、\(y\) 軸方向に \(4\) だけ平行移動していることがわかりますね。

 

例題②「二次関数を平行移動する」

例題②

\(y = 2x^2 + 3x\) を \(x\) 軸方向に \(−1\)、\(y\) 軸方向に \(3\) だけ平行移動したグラフの式を求めよ。

 

二次関数の場合も考え方はまったく同じで、元の関数の \(x\), \(y\) を移動量に応じて置き換えます。

式の中に複数個所 \(x\) があっても、それぞれを置き換えればOKです。

解答

 

\(y = 2x^2 + 3x\) を \(x\) 軸方向に \(−1\)、\(y\) 軸方向に \(3\) だけ平行移動すると、

\(y − 3 = 2\{x − (−1)\}^2 + 3\{x − (−1)\}\)

\(y − 3 = 2(x + 1)^2 + 3(x + 1)\)

\(y − 3 = 2(x^2 + 2x + 1) + 3x + 3\)

\(y = 2x^2 + 4x + 2 + 3x + 3 + 3\)

\(y = 2x^2 + 7x + 8\)

 

答え: \(\color{red}{y = 2x^2 + 7x + 8}\)

最初の置き換えさえうまくいけば、あとは式をきれいに整えてあげるだけですね!

 

ちなみに、グラフを平方完成して頂点の位置を見比べると、平行移動の移動量を視覚的に確認できますよ。

 

平行移動の作図方法

ここでは、平行移動の作図方法を解説していきます。

高校で作図の問題はあまり出ないとは思いますが、平行移動の仕組みを理解するのにとても役に立つので、ぜひ復習してみてください。

例題

\(\triangle \mathrm{ABC}\) の頂点 \(\mathrm{A}\) を点 \(\mathrm{P}\) に平行移動させた図を作図しなさい。

 

STEP.1
頂点から移動させたい方向に線を引く

まず、平行移動させたい図形の各頂点から移動させたい方向に向かって直線を引きます。

はじめに頂点 \(\mathrm{A}\) と点 \(\mathrm{P}\) を結ぶ線を引き、頂点 \(\mathrm{B}\), \(\mathrm{C}\) からもそれと平行な線を引きます。

\(2\) 枚の定規を用いて、平行な直線を引くことがポイントです。

 

STEP.2
頂点から移動させたい点に円弧を描く

コンパスを使って、頂点 \(\mathrm{A}\) から移動させたい点 \(\mathrm{P}\) までの長さを半径とする円弧を描きます。

そして、残りの頂点 \(\mathrm{B}\), \(\mathrm{C}\) からも同じ半径の円弧を描きます。

 

STEP.3
直線と円弧の交点を結ぶ

最後に、直線と円弧の交点 \(3\) 点を直線で結びます。

これで、\(\triangle \mathrm{ABC}\) の頂点 \(\mathrm{A}\) を点 \(\mathrm{P}\) に平行移動させた図の完成です!

 

完了

例として三角形の平行移動の作図を紹介しましたが、多角形であれば同じやり方でできますよ。

 

平行移動の練習問題

それでは、平行移動の練習問題を解いてみましょう。

練習問題①「直線を平行移動する」

練習問題①

直線 \(y = −2x + 1\) のグラフにおいて、以下の問いに答えなさい。

(1) \(y = −2x + 1\) を \(x\) 軸方向に \(8\)、\(y\) 軸方向に \(−7\) だけ平行移動させたグラフの方程式を求めなさい。

(2) 平行移動前と後のグラフを書きなさい。

 

一次関数の平行移動の公式にあてはめるだけのシンプルな問題です。

解答

 

(1)

\(y = −2x + 1\) を \(x\) 軸方向に \(8\)、\(y\) 軸方向に \(−7\) 平行移動すると、

\(y − (−7) = −2(x − 8) + 1\)

\(y = −2(x − 8) + 1 + (−7)\)

\(y = −2x + 16 − 6\)

\(y = −2x + 10\)

 

答え: \(y = −2x + 10\)

 

 

(2) 答え: 下図

 

練習問題②「放物線を平行移動する」

練習問題②

放物線 \(y = x^2 − 4x + 1\) において、以下の問いに答えなさい。

(1) 放物線 \(y = x^2 − 4x + 1\) を \(x\) 軸方向に \(1\)、\(y\) 軸方向に \(−3\) だけ平行移動して得られる放物線の方程式を求めなさい。

(2) 平行移動前と後のグラフを書きなさい。

 

(2) でグラフを書くので、平行移動の計算も平方完成したあとに行うと楽です。

解答

 

(1)

\(y = x^2 − 4x + 1\) を平方完成すると、

\(y = (x − 2)^2 − 4 + 1\)

\(y = (x − 2)^2 − 3\)

 

\(y = (x − 2)^2 − 3\) を \(x\) 軸方向に \(1\)、\(y\) 軸方向に \(−3\) だけ平行移動すると、

\(y − (−3) = \{(x − 1) − 2\}^2 − 3\)

\(y = (x − 3)^2 − 3 − 3\)

\(y = (x − 3)^2 − 6\)

 

答え:

\(y = (x − 3)^2 − 6\)

(展開すると \(y = x^2 − 6x + 3\))

 

 

(2) 答え: 下図

 

平行移動の応用問題

最後に、平行移動の応用問題に挑戦してみましょう!

応用問題「どれだけ平行移動したか」

応用問題

グラフが放物線 \(y = x^2 + 2x + 4\) を平行移動したもので、点 \((0, 3)\) と点 \((−1, 10)\) の \(2\) 点を通る放物線の方程式を求めよ。

また、\(x\) 軸、\(y\) 軸方向にどれだけ平行移動したグラフか。

 

求める式を \(y = ax^2 + bx + c\) とおき、通る \(2\) 点をそれぞれ代入すれば \(b\)、\(c\) の値が出てきます。

このとき、\(a\) の値が平行移動する前のグラフの式と同じであることに注目しましょう。

解答

 

求める放物線の方程式を \(y = ax^2 + bx + c\) とおくと、 \(a\) は平行移動前の値と同じなので

\(y = x^2 + bx + c\) …①

 

①が点 \((0, 3)\) と点 \((−1, 10)\) を通るので、

\(x = 0\), \(y = 3\) を代入して

\(3 = 0^2 + b \cdot 0 + c\)

\(c = 3\)

 

\(x = −1\), \(y = 10\) を代入して

\(10 = (−1)^2 + b(−1) + c\)

\(10 = 1 − b + c\)

\(b = c − 9\)

\(c = 3\) より

\(b = 3 − 9 = −6\)

 

よって、求める放物線の方程式は

\(y = x^2 − 6x + 3\)

となる。

 

また、平行移動前後のグラフを平方完成すると、

\(\begin{align} y &= x^2 + 2x + 4 \\ &= (x + 1)^2 + 3 \end{align}\)

 

\(\begin{align} y &= x^2 − 6x + 3 \\ &= (x − 3)^2 − 6 \\ &= \{(x − 4) + 1\}^2 + 3 + (−9) \end{align}\)

であるから、

求めたグラフは元のグラフを \(x\) 軸方向に \(4\)、\(y\) 軸方向に \(−9\) だけ平行移動したものである。

 

答え:

\(y = x^2 − 6x + 3\)

\(x\) 軸方向に \(4\)、\(y\) 軸方向に \(−9\) だけ平行移動

以上で応用問題も終わりです!

 

平行移動について理解が深まりましたか?

公式を丸暗記するというよりは、平行移動と式変形の仕組みを理解して、さまざまなグラフに対応できるようになりましょう!

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