この記事では、「階差数列」についてどこよりもわかりやすく解説していきます。
階差数列の和を用いてもとの数列の一般項を求める公式やその求め方、階差型の漸化式の解き方なども説明していくので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね!
目次
階差数列とは?
階差数列とは、ある数列の隣り合う \(2\) つの項の差を項とする数列です。
数列 \(\{a_n\}\) の階差数列を \(\{b_n\}\) とすると、以下のように表せます。
以下の例のように、もとの数列 \(\{a_n\}\) の規則性がわかりにくい場合でも、階差数列をとると規則性が見えてくることがあります。
階差数列と一般項の公式
階差数列をもつ数列の一般項は次の公式で求められます。
数列 \(\{a_n\}\) の階差数列を \(\{b_n\}\) とすると、
\begin{align}\color{red}{a_n} &\color{red}{= a_1 + (b_1 + b_2 + \cdots + b_{n − 1})} \\ &\color{red}{= a_1 + \sum_{k = 1}^{n − 1} b_k}\end{align}
(ただし、\(n \geq 2\))
数列 \(\{a_n\}\) の規則性はよくわからないけれど、階差数列 \(\{b_n\}\) にはなんらかの規則がある(等差数列または等比数列になっている)という場合に、この考え方で数列 \(\{a_n\}\) の一般項を求められます。
数列のある項からある項まで順番に足していった総和は、シグマ記号 \(\sum\) を用いて表すことができ、記述量を大きく削減できます。
\begin{align}b_1 + b_2 + \cdots + b_{n − 1} = \sum_{k = 1}^{n − 1} b_k\end{align}
階差数列と一般項の証明
この一般項の考え方は、小学生でも理解できるくらい簡単に証明できます。
数列 \(\{a_n\}\) の階差数列 \(\{b_n\}\) は、以下のように表すことができましたね。
このとき、\(a_n\) は赤字の項をすべて足せば求められます。
つまり、「\(a_1 + (b_1 \ \text{から} \ b_{n − 1} \ \text{までの和})\)」です。
これを式で表すと、
\(n \geq 2\) のとき、
\(\begin{align} a_n &= a_1 + (b_1 + b_2 + \cdots + b_{n − 1}) \\ &= a_1 + \sum_{k = 1}^{n − 1} b_k \end{align}\)
となります。
階差数列の和の範囲を \(b_1\) ~ \(b_n\) と誤って覚えないよう、この関係をしっかり理解しておきましょう!(正しくは \(b_1\) ~ \(b_{n − 1}\))
例題「階差数列をもつ数列の一般項の求め方」
次の例題を通して、階差数列をもつ数列の一般項の求め方を説明します。
次の数列の一般項を求めよ。
\(\{a_n\}\):\(6, 11, 18, 27, 38, \cdots\)
\(\{a_n\}\) は、各項の差も比も一定でなく、規則がよくわかりません。
このような場合に、\(\{a_n\}\) の階差数列を調べます。
もとの数列の各項の差をとって、階差数列を調べます。
新しく作った数列には名前をつけておくとスムーズです。
数列 \(\{a_n\}\) の階差数列を \(\{b_n\}\) とすると、
\(\{a_n\}\):\(6, 11, 18, 27, 38, \cdots\) より
\(\{b_n\}\):\(5, 7, 9, 11, \cdots\)
階差数列 \(\{b_n\}\) は、公差が \(2\) で一定です。
つまり、数列 \(\{b_n\}\) は等差数列であることがわかりますね。
階差数列 \(\{b_n\}\) の一般項を求めます。
今回の場合、\(\{b_n\}\) は等差数列の公式 \(a + (n − 1)d\) から求められますね。
\(\{b_n\}\):\(5, 7, 9, 11, \cdots\)
\(\{b_n\}\) は、初項 \(5\)、公差 \(2\) の等差数列であるから、一般項は
\(\begin{align} b_n &= 5 + 2(n − 1) \\ &= 2n + 3 \end{align}\)
階差数列の一般項がわかったら、\(\displaystyle a_n = a_1 + \sum_{k = 1}^{n − 1} b_k\) \((n \geq 2)\) を使ってもとの数列 \(\{a_n\}\) の一般項を求めます。
このとき、\(\displaystyle \sum_{k = 1}^{n − 1} b_k\) の部分は、\(b_k\) の一般項のかたちに応じて以下の公式で求められます。
和(シグマ \(\bf{\sum}\))の計算
\(a\), \(b\), \(c\) は \(k\) に無関係な定数とする。
- \(\displaystyle \sum_{k = 1}^n a = an\)
- \(\displaystyle \sum_{k = 1}^n k = \frac{1}{2} n(n + 1)\)
- \(\displaystyle \sum_{k = 1}^n k^2 = \frac{1}{6} n(n + 1)(2n + 1)\)
- \(\displaystyle \sum_{k = 1}^n k^3 = \left\{ \frac{1}{2} n(n + 1) \right\}^2\)
- \(\displaystyle \sum_{k = 1}^n ar^{k − 1} = \frac{a(1 − r^n)}{1 − r} = \frac{a(r^n − 1)}{r − 1}\) \((r \neq 1)\)
なお、シグマ記号には以下の性質が成り立つ。
\(\displaystyle \sum_{k = 1}^n (ak^2 + bk + c) = a\sum_{k = 1}^n k^2 + b\sum_{k = 1}^n k + \sum_{k = 1}^n c\)
\(n \geq 2\) のとき、
\(\begin{align} a_n &= a_1 + \sum_{k = 1}^{n − 1} b_k \\ &= a_1 + \sum_{k = 1}^{n − 1} (2k + 3) \\ &= a_1 + 2 \color{salmon}{\sum_{k = 1}^{n − 1} k} + \color{orange}{\sum_{k = 1}^{n − 1} 3}\\ &= 6 + 2 \cdot \color{salmon}{\frac{1}{2} (n − 1)n} + \color{orange}{3(n − 1)} \\ &= 6 + n^2 − n + 3n − 3 \\ &= n^2 + 2n + 3 \end{align}\)
シグマの部分の計算がよくわからない方は、以下の記事で復習しておきましょう。
STEP.3 において、条件「\(n \geq 2\)」を見落とさないでください。
この条件があるのは、初項 \(a_1\) は階差数列とはなんの関係もないので、STEP.3 で求めた一般項が初項 \(a_1\) には必ずしも当てはまらないためです。
そこで最後に、STEP.3 で求めた一般項に \(n = 1\) を代入して、与えられた初項と一致するかを必ず確認します。
\(n^2 + 2n + 3\) において、\(n = 1\) のとき
\(1^2 + 2 \cdot 1 + 3 = 6 = a_1\)
よって、\(a_n = n^2 + 2n + 3\) は \(n = 1\) のときも成り立つ。
答え: \(\color{red}{a_n = n^2 + 2n + 3}\)
このように、\(\{a_n\}\) の一般項が求められました!
ちなみに、与えられた初項と \(n = 1\) を代入した際の値が一致しなくても問題ありません。その場合は、与えられた初項と \(n \geq 2\) における一般項を併記します。
例:\(\left\{\begin{array}{l} a_1 = a\\ a_n = (n \ \text{の式}) \ (n \geq 2)\end{array}\right.\)
階差数列と一般項の計算問題
階差数列を利用して、ある数列の一般項を求める計算問題に挑戦しましょう。
計算問題①「規則がわかりにくい数列の一般項」
次の数列の一般項を求めよ。
\(\{a_n\}\):\(1, 2, 9, 22, 41, \cdots\)
\(\{a_n\}\) は等差数列でも等比数列でもないようですね。
こんなときは、階差数列を調べてみましょう。
数列 \(\{a_n\}\) の階差数列を \(\{b_n\}\) とすると、
\(\{b_n\}\):\(1, 7, 13, 19, \cdots\)
初項 \(1\)、公差 \(6\) の等差数列なので、
\(\begin{align} b_n &= 1 + 6(n − 1) \\ &= 6n − 5 \end{align}\)
よって、\(n \geq 2\) のとき
\(\begin{align} a_n &= a_1 + \sum_{k = 1}^{n − 1} (6k − 5) \\ &= a_1 + 6\sum_{k = 1}^{n − 1}k − \sum_{k = 1}^{n − 1}5 \\ &= 1 + 6 \cdot \frac{1}{2} (n − 1)n − 5(n − 1) \\ &= 1 + 3n^2 − 3n − 5n + 5 \\ &= 3n^2 − 8n + 6 \end{align}\)
\(n = 1\) のとき、\(3 \cdot 1^2 − 8 \cdot 1 + 6 = 1 = a_1\)
よって、\(a_n = 3n^2 − 8n + 6\) は \(n = 1\) のときも成り立つ。
答え: \(\color{red}{a_n = 3n^2 − 8n + 6}\)
計算問題②「階差を 2 回とる問題」
次の数列の一般項を求めよ。
\(\{a_n\}\):\(1, 2, 4, 9, 19, 36, \cdots\)
\(\{a_n\}\) の階差数列を調べてみると、\(1, 2, 5, 10, 17, \cdots\) となり、等差でも等比でもないようです。
そこで、さらなる階差数列(第二階差数列)を求めてみましょう。
規則性のある数列が見えるまで、階差を何回かとるのもテクニックの \(1\) つです。
数列 \(\{a_n\}\) の階差数列を \(\{b_n\}\) とすると、
\(\{b_n\}\):\(1, 2, 5, 10, 17, \cdots\)
さらに、数列 \(\{b_n\}\) の階差数列を \(\{c_n\}\) とすると、
\(\{c_n\}\):\(1, 3, 5, 7, \cdots\)
\(\{c_n\}\) は初項 \(1\)、公差 \(2\) の等差数列であるから
\(\begin{align} c_n &= 1 + 2(n − 1) \\ &= 2n − 1 \end{align}\)
\(n \geq 2\) のとき
\(\begin{align} b_n &= b_1 + \sum_{k = 1}^{n − 1} (2k − 1) \\ &= b_1 + 2\sum_{k = 1}^{n − 1}k − \sum_{k = 1}^{n − 1}1\\ &= 1 + 2 \cdot \frac{1}{2} (n − 1)n − (n − 1) \\ &= 1 + n^2 − n − n + 1 \\ &= n^2 − 2n + 2 \end{align}\)
\(1^2 − 2 \cdot 1 + 2 = 1 = b_1\) より、\(n = 1\) のときも成り立つ。
よって
\(b_n = n^2 − 2n + 2\)
\(n \geq 2\) のとき
\(a_n\)
\(= \displaystyle a_1 + \sum_{k = 1}^{n − 1} (k^2 − 2k + 2)\)
\(= \displaystyle a_1 + \sum_{k = 1}^{n − 1}k^2 − 2\sum_{k = 1}^{n − 1}k + \sum_{k = 1}^{n − 1}2\)
\(= 1 + \displaystyle \frac{1}{6} (n − 1)n(2n − 1) \) \( − \, 2 \cdot \displaystyle \frac{1}{2} (n − 1)n + 2(n − 1)\)
\(= 1 + \displaystyle \frac{1}{6} (2n^3 − 3n^2 + n) \) \( − \, n^2 + n + 2n − 2\)
\(= \displaystyle \frac{2n^3 − 9n^2 + 19n − 6}{6}\)
ここで、
\(\displaystyle \frac{2 \cdot 1^3 − 9 \cdot 1^2 + 19 \cdot 1 − 6}{6} = 1 = a_1 \)
より、\(n = 1\) のときも成り立つ。
よって
\(\displaystyle a_n = \frac{2n^3 − 9n^2 + 19n − 6}{6}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle a_n = \frac{2n^3 − 9n^2 + 19n − 6}{6}}\)
【参考】階差数列を含む漸化式
階差数列をもつ数列の漸化式は「階差型」と呼ばれ、\(a_{n + 1} = a_n + f(n)\) (\(f(n)\) は \(n\) の多項式)のかたちをとります。
漸化式 \(\color{red}{a_{n + 1} = a_n + f(n)}\) で示される数列 \(\{a_n\}\) は、
初項 \(a_1\) で、階差数列 \(b_n = f(n)\) をもつ数列である。
\(a_n\) を移項すると、
\(a_{n + 1} − a_n = f(n)\)
となり、\(f(n)\) は数列 \(\{a_n\}\) の階差数列であると見ることができますね。
階差型とわかれば、あとは階差数列の公式を利用して一般項を求められます。
階差型を含む、基本的な漸化式の解き方についてより詳しく説明しています。
漸化式とは?基本型や特性方程式をわかりやすく解説!
例題「階差型の漸化式の解き方」
次の例題を通して、階差型の漸化式の解き方を説明します。
次の数式で定義される数列 \(\{a_n\}\) の一般項を求めよ。
\(a_1 = 1\), \(a_{n + 1} = a_n + 2^n − 2n\)
\(a_{n + 1} − a_n = 2^n − 2n = b_n\) とみると、階差型の漸化式ですね。
階差型であることさえわかれば、あとはお決まりのやり方でもとの数列の一般項を求めることができます。
\(a_{n + 1} − a_n = 2^n − 2n\) より、
数列 \(\{a_n\}\) は一般項 \(b_n = 2^n − 2n\) の階差数列をもつ。
\(n \geq 2\) のとき
\(\begin{align} a_n &= a_1 + \sum_{k = 1}^{n − 1} (2^k − 2k) \\ &= a_1 + \sum_{k = 1}^{n − 1}2^k − 2\sum_{k = 1}^{n − 1}k\\ &= 1 + \frac{2(2^{n − 1} − 1)}{2 − 1} − 2 \cdot \frac{1}{2} (n − 1)n \\ &= 1 + 2^n − 2 − n^2 + n \\ &= 2^n − n^2 + n − 1 \end{align}\)
\(n = 1\) のとき、\(2^1 − 1^2 + 1 − 1 = 1 = a_1\)
よって、\(a_n = 2^n − n^2 + n − 1\) は \(n = 1\) のときも成り立つ。
答え: \(\color{red}{a_n = 2^n − n^2 + n − 1}\)
以上で階差数列の解説は終わりです。
階差数列はやみくもに公式を覚えるのではなく、構造を理解するようにしましょう!
「等差数列」「等比数列」など、ほかの数列について調べたい方は以下のまとめ記事から探してみてくださいね!
数列を総まとめ!一般項・和・漸化式などの重要記事一覧
これじゃ、高校生が分からないことが分かってないと思います。
高校生はΣを使うからわからないと思います。Σは使うべきところにしか使わない。そうしないと、Σは魔法の記号と思われて、誤用、多用の嵐です。
また、階差数列を用いた一般項の「公式」と記述されている式は公式ではないと思います。「考え方」なのではないでしょうか。
つまり、Σを使うことが、理解されない原因と考えます。
もう一つ。{b_n}=1,2,4,9,・・・
は記号の誤用です。
この度は建設的なご指摘をいただき、大変ありがとうございます。
3件のご指摘について、次のように対応しました。
(1) >高校生はΣを使うからわからないと思います。…
Σが混乱の原因というのはごもっともだと思います。これを受け、説明の順序を変更したり、補足を追加したりしました。
(2) >また、階差数列を用いた一般項の「公式」と記述されている式は公式ではないと思います。…
本件、ご指摘の通りではありますが、検索需要に対応するため、やむなく「公式」という言葉を使用しています。
「階差数列 公式」と調べる方がたどり着きたい式がこの式(教科書にも載っているΣ入りの式)である、とご理解ください。
(3) >もう一つ。{b_n}=1,2,4,9,・・・は記号の誤用です。
{b_n}:1,2,4,9,・・・ のように修正いたしました。
このようなフィードバックをいただくことで、説明に苦慮した部分や誤植を見直すきっかけになっております。
今後ともどうぞ当サイトをよろしくお願いいたします。