確率漸化式とは?問題の解き方を超わかりやすく解説!

この記事では、「確率漸化式」の問題の解き方をていねいに、わかりやすく解説していきます。

確率漸化式には難問も多く、苦手な人も多いですよね。

例題を通してじっくり解説していきますので、ぜひ苦手意識を克服してくださいね!

 

確率漸化式とは?

確率漸化式とは、反復試行のあとにある状態になっている確率が満たす漸化式のことです。

数列における漸化式は隣り合う項 \(a_n, a_{n + 1}, \cdots\) の関係でしたね。

確率漸化式では、隣り合う(前後の)試行における確率 \(P_n, P_{n + 1}, \cdots\) の関係を示します。

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「反復試行の確率」や「漸化式」にまだ不安のある人は、先に復習しておきましょう!

反復試行の確率・独立試行の確率とは?公式や見分け方 漸化式とは?基本型や特性方程式をわかりやすく解説!

 

確率漸化式の問題の見分け方

確率漸化式の問題を見分けるポイントは次のとおりです。

  • ある試行を「繰り返す」または「一定時間ごとに行う
    → \(n\) 回目(または \(n\) 秒後など)にある状態になっている確率
  • \(n\) 回の試行のうち、どの事象がいつ・何回起こるかわからない
  • 前後の試行の確率に何らかの規則が見出せる

確率漸化式の問題は文章題で与えられます。

したがって、反復試行の確率の問題なのか、確率漸化式を立てるべき問題なのかを見極めるのが実はいちばん難しいところです。

反復試行の確率の問題では注目している事象が起こる回数が指定されているので、ここが大きな違いです。

上記のポイントを押さえて、まずは問題を読んだときに「これは確率漸化式の問題だ」と認識できるようになりましょう。

 

確率漸化式の解き方

確率漸化式の問題を解く流れは、大きく次のとおりです。

Tips
  1. 前後の試行の確率に隠れた規則を見つける
  2. 規則を元に確率漸化式を立てる
  3. 確率漸化式を解く

規則を見出すには、ズバリ \(n\) 回目と \(n + 1\) 回目の関係を考えます。

次のような状態遷移図を書くのがオススメです。

このとき、\(P_{n + 1}\) を \(P_n\) を使って表すと、次のようになります。

互いに排反なので、確率の加法定理が成り立ちます。これが、「確率漸化式」です。

あとは、この漸化式を解いていけばいいということになります。

補足

状態遷移図には、\(1\) 回の試行である状態から次の状態に移ることを単純に示す書き方もあります。

この場合、注目している状態に向いている矢印の部分を考えればよいですね。

 

例題「3 のカードが奇数回取り出される確率」

例題を通して、確率漸化式を解く手順を説明します。

例題

\(1, 2, 3, 4, 5\) の数字が書かれた \(5\) 枚のカードの中から \(1\) 枚取り出し、元に戻すことを繰り返す。\(n\) 回目の試行で数字 \(3\) のカードが取り出される回数が奇数である確率を \(n\) で表せ。

 

\(n\) 回の試行のうち、\(3\) のカードがいつ・何回出るかはわからないけれど、\(3\) のカードが出る回数の偶奇は直前の試行後の状態に応じて決まります。

この関係を、\(n\) 回目と \(n + 1\) 回目の試行において表現するのがポイントです。

STEP.1
求める確率を文字でおく

まずは、求めたい確率を \(P_n\) とおきます。

\(n\) 回目までに数字 \(3\) のカードが奇数回取り出される確率を \(P_n\) とおく。

 

STEP.2
とりうる状態と各試行の確率を整理する

\(n\) 回の試行のあと、とりうるすべての状態を考えておきましょう。

今回の場合は次の \(2\) 通りの状態がありますね。

\(n\) 回の試行で

  • \(3\) のカードが奇数回取り出される
  • \(3\) のカードが偶数回取り出される

 

また、\(1\) 回の試行で起こる事象の確率も整理しておきましょう。

\(1\) 回の試行で

  • \(3\) のカードを取り出す確率
    → \(\displaystyle \frac{1}{5}\)
  • \(3\) 以外 \((1, 2, 4, 5)\) のカードを取り出す確率
    → \(\displaystyle \frac{4}{5}\)
Tips

このとき、確率の和は必ず \(1\) になります。

\(1\) にならない場合は、何か事象を見落としているのでもう一度よく考えましょう。

 

STEP.3
状態遷移図を書く

ここで、\(n\) 回目と \(n + 1\) 回目の関係を状態遷移図で確認します。

このとき、\(P_{n + 1}\) だけに注目するとスムーズです。

\(n + 1\) 回目までに \(3\) のカードが奇数回取り出されるのは、

(i) \(n\) 回目までに \(3\) のカードが奇数回取り出され、\(n + 1\) 回目に \(3\) 以外のカードが取り出される場合

(ii) \(n\) 回目までに \(3\) のカードが偶数回取り出され、\(n + 1\) 回目に \(3\) のカードが取り出される場合

これで、規則がわかりましたね。

補足

状態遷移図は次のように書いてもOKです。

 

STEP.4
確率漸化式を立てる

状態遷移図をもとに、確率漸化式を立てます。

(i), (ii) は互いに排反であるから、

\(\displaystyle P_{n + 1} = \frac{4}{5} P_n + \frac{1}{5} (1 − P_n)\)

すなわち

\(\displaystyle P_{n + 1} = \frac{3}{5}P_n + \frac{1}{5}\)

 

STEP.5
確率漸化式を解く

あとは漸化式を解くだけです。今回は特殊解型の漸化式ですね。

\(\displaystyle P_{n + 1} = \frac{3}{5}P_n + \frac{1}{5}\)

特性方程式 \(\displaystyle \alpha = \frac{3}{5}\alpha + \frac{1}{5}\) を解くと \(\displaystyle \alpha = \frac{1}{2}\) であるから、

漸化式は

\(\displaystyle P_{n + 1} − \frac{1}{2} = \frac{3}{5} \left( P_n − \frac{1}{2} \right)\)

と変形できる。

 

ここで、数列 \(\displaystyle \left\{ P_n − \frac{1}{2} \right\}\) は

初項 \(\displaystyle P_1 − \frac{1}{2} = \frac{1}{5} − \frac{1}{2} = −\frac{3}{10}\)

公比 \(\displaystyle \frac{3}{5}\)

の等比数列であるから、

\(\begin{align} P_n − \frac{1}{2} &= −\frac{3}{10} \cdot \left( \frac{3}{5} \right)^{n − 1} \\ &= −\frac{1}{2} \cdot \left( \frac{3}{5} \right)^n \end{align}\)

したがって、

\(\begin{align} P_n &= −\frac{1}{2} \cdot \left( \frac{3}{5} \right)^n + \frac{1}{2} \\ &= \frac{1}{2} \left\{1 − \left( \frac{3}{5} \right)^n \right\} \end{align}\)

よって、\(\color{red}{\displaystyle P_n = \frac{1}{2} \left\{1 − \left( \frac{3}{5} \right)^n \right\}}\) と求められました!

 

完了

 

確率漸化式の練習問題

それでは、確率漸化式の問題をいくつか解いてみましょう。

練習問題①「サイコロの 2 の目が偶数回出る確率」

練習問題①

サイコロを \(n\) 回投げるとき、\(2\) の目が偶数回出る確率 \(p_n\) を求めよ。

ただしサイコロのそれぞれの目が出る確率はすべて同様に確からしいとする。

 

規則を見出すには、実験してみるのが一番です。

\(n\) 回投げるまでに \(2\) が偶数回出たときと奇数回出たときで、それぞれ \(n + 1\) 回目にどうなれば偶数回になるでしょうか。

解答

 

\(n + 1\) 回投げたあとに \(2\) の目が偶数回出るのは、

(i) \(n\) 回までに \(2\) の目が偶数回出て、\(n + 1\) 回目に \(2\) 以外が出る

または

(ii) \(n\) 回までに \(2\) の目が奇数回出て、\(n + 1\) 回目に \(2\) が出る

のどちらかである。

 

(i), (ii) は互いに排反であるから、以下の漸化式が成り立つ。

\(\displaystyle p_{n + 1} = \frac{5}{6} p_n + \frac{1}{6} (1 − p_n)\)

 

整理すると、

\(\begin{align} p_{n + 1} &= \frac{5}{6} p_n − \frac{1}{6} p_n + \frac{1}{6} \\ &= \frac{2}{3} p_n + \frac{1}{6} \end{align}\)

 

特性方程式 \(\displaystyle \alpha = \frac{2}{3} \alpha + \frac{1}{6}\) の解は \(\displaystyle \alpha = \frac{1}{2}\) であるから、

漸化式は

\(\displaystyle p_{n + 1} − \frac{1}{2} = \frac{2}{3} \left( p_n − \frac{1}{2} \right)\)

と変形できる。

 

\(\displaystyle p_1 = \frac{5}{6}\) より、

数列 \(\displaystyle \left\{ p_n − \frac{1}{2} \right\}\) は

初項 \(\displaystyle p_1 − \frac{1}{2} = \frac{1}{3}\)、公比 \(\displaystyle \frac{2}{3}\) の等比数列であるから、

 

\(\begin{align} p_n − \frac{1}{2} &= \frac{1}{3} \cdot \left( \frac{2}{3} \right)^{n − 1} \\ &= \frac{2^{n − 1}}{3^n} \end{align}\)

よって

\(\begin{align} p_n &= \frac{2^{n − 1}}{3^n} + \frac{1}{2} \\ &= \frac{1}{2} \left\{ \left( \frac{2}{3} \right)^n + 1 \right\} \end{align}\)

 

答え: \(\color{red}{\displaystyle p_n = \frac{1}{2} \left\{ \left( \frac{2}{3} \right)^n + 1 \right\}}\)

補足

状態遷移図は次のように書いてもOKです。

 

練習問題②「コインの表裏で三角形の頂点を移動する点」

練習問題②

表裏がそれぞれ \(\displaystyle \frac{1}{2}\) の確率で出るコインがある。

点 \(\mathrm{P}\) は最初、正三角形 \(\mathrm{ABC}\) の頂点 \(\mathrm{A}\) にある。

各頂点の位置関係は、時計回りに \(\mathrm{A} \to \mathrm{B} \to \mathrm{C}\) である。

点 \(\mathrm{P}\) は、コインを \(1\) 回投げて表が出たら時計回りに \(1\) つ、裏が出たら反時計回りに 1 つ隣の頂点へ移動する。

例えば点 \(\mathrm{P}\) が頂点 \(\mathrm{A}\) にあるとき、表なら \(\mathrm{B}\)、裏なら \(\mathrm{C}\) に移動する。

\(n\) 回の操作のあと、点 \(\mathrm{P}\) が頂点 \(\mathrm{A}\) にある確率 \(p_n\) を求めよ。

 

まずは \(1\) 回の試行でどのようなことが起こりうるかをイメージしてみるのが大切です。

そうすると、前後の試行における確率の関係に気づきやすくなります。

また、必要があれば別の確率を定義してみるとスムーズに解答できますよ。

解答

 

\(n\) 回目に点 \(\mathrm{P}\) が頂点 \(\mathrm{B}\) にある確率を \(q_n\) とおくと、

\(n\) 回目に点 \(\mathrm{P}\) が頂点 \(\mathrm{C}\) にある確率は \(1 − p_n − q_n\) と表せる。

 

(i) \(n\) 回目に点 \(\mathrm{P}\) が頂点 \(\mathrm{A}\) にあるとき

\(n + 1\) 回目に点 \(\mathrm{P}\) が頂点 \(\mathrm{A}\) にくることはない。

(ii) \(n\) 回目に点 \(\mathrm{P}\) が頂点 \(\mathrm{B}\) にあるとき

\(n + 1\) 回目に裏が出れば点 \(\mathrm{P}\) が頂点 \(\mathrm{A}\) にくる。

(iii) \(n\) 回目に点 \(\mathrm{P}\) が頂点 \(\mathrm{C}\) にあるとき

\(n + 1\) 回目に表が出れば点 \(\mathrm{P}\) が頂点 \(\mathrm{A}\) にくる。

 

(i) ~ (iii) は互いに排反であるから、以下の漸化式が成り立つ。

\(\displaystyle p_{n + 1} = 0 \cdot p_n + \frac{1}{2} q_n + \frac{1}{2} (1 − p_n − q_n)\)

よって

\(\displaystyle p_{n + 1} = −\frac{1}{2} p_n + \frac{1}{2}\)

 

特性方程式 \(\displaystyle \alpha = −\frac{1}{2}\alpha + \frac{1}{2}\) を解くと \(\displaystyle \alpha = \frac{1}{3}\) であるから、

漸化式は

\(\displaystyle p_{n + 1} − \frac{1}{3} = −\frac{1}{2} \left( p_n − \frac{1}{3} \right)\)

と変形できる。

 

\(p_1 = 0\) より、

数列 \(\displaystyle \left\{ p_n − \frac{1}{3} \right\}\) は

初項 \(\displaystyle p_1 − \frac{1}{3} = −\frac{1}{3}\)、公比 \(\displaystyle −\frac{1}{2}\)

の等比数列であるから

\(\displaystyle p_n − \frac{1}{3} = −\frac{1}{3} \cdot \left( −\frac{1}{2} \right)^{n − 1}\)

 

整理すると、

\(\begin{align} p_n &= \frac{1}{3} − \frac{1}{3} \cdot \left( −\frac{1}{2} \right)^{n − 1} \\ &= \frac{1}{3} \left\{1 − \left( −\frac{1}{2} \right)^{n − 1} \right\} \end{align}\)

 

答え: \(\color{red}{\displaystyle p_n = \frac{1}{3} \left\{1 − \left( −\frac{1}{2} \right)^{n − 1} \right\}}\)

補足

状態遷移図は次のように書いてもOKです。

複数の状態を行き来する場合は、こちらの方が直感的にわかりやすいかもしれませんね。

以上で問題も終わりです!

 

確率漸化式の考え方はセンター試験(共通テストの前身)でも取りあげられたことがあるほか、難関大の入試で本当によく出てきます。

頻出分野である確率漸化式をマスターして、ライバル達に差をつけましょう!

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