この記事では、「等比数列」についてどこよりもわかりやすく解説していきます。
等比数列の一般項や和の公式の覚え方と使い方、問題の解き方について説明していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね!
目次
等比数列とは?
等比数列とは、はじめの数にある一定の数をかけ続けていく数列のことです。
隣り合う項の比が一定だから、「等比数列」と呼ぶのですね。
例えば、
\(1, 2, 4, 8, 16, \cdots\)
という数列は、「はじめの数 \(1\) に一定の数 \(2\) をかけ続けていく等比数列」です。
このとき、はじめの数のことを「初項」、かけ続ける一定の数を「公比」といいます。
したがって、この数列は「初項 \(1\)、公比 \(2\) の等比数列」と表現できます。
等比数列の一般項
等比数列の一般項は次のように表されます。
初項 \(a\)、公比 \(r\) の等比数列 \(\{a_n\}\) の一般項 \(a_n\) は
\begin{align}\color{red}{a_n = a \cdot r^{n − 1}}\end{align}
一般項
規則性をもつ数列の任意の項を一般化した式(第 \(n\) 項の値)。
等比数列の一般項の覚え方
等比数列の一般項の公式を覚えるには、一般項の成り立ちを理解するのが一番です。
初項 \(a\)、公比 \(r\) の等比数列 \(\{a_n\}\) は以下のように表せます。
初項に公比をかけていくので、\((\text{項数} − 1)\) 個分の公比が各項にかかっていることになります。
よって、第 \(n\) 項 \(a_n\) は、初項 \(a_1\) に公比 \(r\) を \((n − 1)\) 回かけたものとなるので、「\(\color{red}{a_n = a \cdot r^{n − 1}}\)」となります。
公式を覚えるのが苦手な人は、毎回このように一般項を自分で導く訓練を積みましょう。
そうすれば、自然と一般項を覚えられるようになりますよ!
例題「等比数列の一般項の求め方」
例題を通して、等比数列の一般項の求め方を説明します。
公比が \(3\)、第 \(4\) 項が \(108\) である等比数列 \(\{a_n\}\) の一般項を求めよ。
等比数列の一般項は、初項 \(a\) と公比 \(r\) さえわかれば求められます。
まずは求める数列の一般項を数式として表します。
公比は \(3\) とわかっているので、初項を \(a\) と文字でおいて表しましょう。
\(\{a_n\}\) の初項を \(a\) とおくと、公比は \(3\) であるから
一般項は \(a_n = a \cdot 3^{n − 1}\) …(*)
問題文にある項(第 \(4\) 項)を一般項の式で表し、\(a\) を求めます。
\(\begin{align} a_4 &= a \cdot 3^{4 − 1} \\ &= a \cdot 3^3 \\ &= 27a \end{align}\)
\(a_4 = 108\) であるから、
\(27a = 108\)
\(a = 4\)
最後に、初項と公比の値を最初の式に代入すれば、一般項の完成です!
(*) に \(a = 4\) を代入して、
\(a_n = 4 \cdot 3^{n − 1}\)
答え: \(\color{red}{a_n = 4 \cdot 3^{n − 1}}\)
等比数列の和の公式
等比数列の和の公式は次のとおりです。
初項 \(a\)、公比 \(r\) の等比数列 \(\{a_n\}\) の初項から第 \(n\) 項までの和を \(S_n\) とすると、
- \(r \neq 1\) のとき
\begin{align}\color{red}{S_n} \ &\color{red}{= \frac{a(1 − r^n)}{1 − r}} \\ &\color{red}{= \frac{a(r^n − 1)}{r − 1}} \end{align} - \(r = 1\) のとき
\begin{align}\color{red}{S_n = na}\end{align}
等比数列の和の公式の覚え方
等比数列の和の公式を覚えるのにも、やはり公式の成り立ちを理解するのが一番です。
初項 \(a\)、公比 \(r\) の等比数列 \(\{a_n\}\) の初項から第 \(n\) 項までの和 \(S_n\)は、以下のように表せます。
\(S_n = a + ar + ar^2 + ar^3 + \cdots + ar^{n − 1}\) …(*)
ここで、(*) に \(r\) をかけた式を (*) から引くと、中間の項がすべて消えます。
あとは、\(r\) の値に応じて式を整理すれば等比数列の和の公式が得られます。
- \(r \neq 1\) のとき
\((1 − r)S_n = a − ar^n\) の両辺は \((1 − r)\) で割れて
\(\begin{align} S_n = \color{red}{\frac{a(1 − r^n)}{1 − r}} = \color{red}{\frac{a(r^n − 1)}{r − 1}} \end{align}\)
- \(r = 1\) のとき
どの項も初項 \(a\) と同じ値なので、(*) は
\(\begin{align} S_n &= a + a + a + \cdots + a \\ &= \color{red}{na} \end{align}\)
等比数列の和の公式の使い分け方
等比数列の和の公式は、公比の値によって次のように使い分けます。
- 公比 \(r\) が \(1\) よりも大きい → \(\displaystyle S_n = \frac{a(r^n − 1)}{r − 1}\)(\(r\) が前にくる式)
- 公比 \(r\) が \(1\) よりも小さい → \(\displaystyle S_n = \frac{a(1 − r^n)}{1 − r}\)(\(r\) が後ろにくる式)
- 公比 \(r\) が \(1\) → \(S_n = na\)
こうすることで、分数の分母が正となるので計算しやすくなります。
(例1)等比数列 \(1\), \(2\), \(4\), \(8\), \(16\) の和
初項 \(1\)、公比 \(2\)、項数 \(5\) の等比数列であるから、
\(\begin{align}S_5 &= \displaystyle \frac{1(2^5 − 1)}{2 − 1} \\&= \displaystyle \frac{32 − 1}{1} \\&= \color{red}{31}\end{align}\)
(例2)等比数列 \(4\), \(−12\), \(36\), \(−108\), \(324\) の和
初項 \(4\)、公比 \(−3\)、項数 \(5\) の等比数列であるから、
\(\begin{align}S_5 &= \displaystyle \frac{4\{1 − (−3)^5\}}{1 − (−3)} \\&= \displaystyle \frac{4\{1 − (−243)\}}{4} \\&= \color{red}{244}\end{align}\)
(例3)等比数列 \(−5\), \(−5\), \(−5\), \(−5\), \(−5\) の和
初項 \(−5\)、公比 \(1\)、項数 \(5\) の等比数列であるから、
\(S_5 = 5 \cdot (−5)= \color{red}{−25}\)
例題「等比数列の和の求め方」
例題を通して、等比数列の和の求め方を説明します。
初項が \(1\)、公比が \(2\) の等比数列の、第 \(7\) 項から第 \(12\) 項までの和を求めよ。
中途半端な項からスタートしている和でも、情報を整理すれば等比数列の和の公式に当てはめることができます。
等比数列の和を求めるのに必要なものは、和における初項 \(a\)、公比 \(r\)、項数 \(n\) です。
求めたい和の先頭である第 \(7\) 項を初項と見るのがポイントです。
この数列を \(\{a_n\}\) とおくと、初項 \(1\)、公比 \(2\) の等比数列であるから
一般項は \(a_n = 1 \cdot 2^{n − 1} = 2^{n − 1}\)
求める和を \(S\) (第 \(7\) 項から第 \(12\) 項までの和)とおくと、
初項は \(a_7 = 2^{7 − 1} = 64\)
公比は \(2\)
項数は \(12 − 7 + 1 = 6\)
一般に、第 \(A\) 項から第 \(B\) 項までの項数は「\(\color{red}{B − A + 1}\)」と求められます。
単に引き算をするだけでなく、\(1\) を足すことを忘れないでくださいね。
等比数列の和の公式に初項、公比、項数の値を代入すれば、答えが求められます!
なお、公比が \(1\) よりも大きい場合は \(r\) が前にくる公式 \(\displaystyle S_n = \frac{a(r^n − 1)}{r − 1}\) を使うとスムーズでしたね(→ 等比数列の和の公式の使い分け)。
よって、\(S\) は初項 \(64\)、公比 \(2\)、項数 \(6\) の等比数列の和であるから
\(\begin{align} S &= \frac{64(2^6 − 1)}{2 − 1} \\ &= \frac{64(64 − 1)}{1} \\ &= 64 \cdot 63 \\ &= 4032\end{align}\)
答え: \(\color{red}{4032}\)
等比数列の性質
等比数列には、\(2\) つの重要な性質があります。
性質① 公比が一定
等比数列には、どの \(2\) 項間の比も等しいという性質があります。
これは等比数列の定義そのものですね。
等比数列 \(\{a_n\}\) の公比が \(r\) のとき、すべての自然数 \(n\) について次の関係が成り立つ。
\begin{align} \color{red}{a_{n + 1} = ra_n} \end{align}
すなわち
\begin{align} \color{red}{\frac{a_{n + 1}}{a_n} = r }\end{align}
このように、数列の規則性を隣り合う項の関係式で表したものを「漸化式」といいます。
漸化式とは?基本型や特性方程式をわかりやすく解説!
性質② 等比中項
等比数列の連続する \(3\) 項において、両端の項の積は真ん中の項の \(2\) 乗に等しいという性質があります。
このとき、真ん中の項 \(b\) を「\(a\) と \(c\) の等比中項」といいます。
\(3\) つの数 \(a, b, c\) が等比数列を成すとき、以下の等式が成り立つ。
\begin{align}\color{red}{b^2 = ac}\end{align}
等比中項の関係式は、等比数列の定義から導けます。
数列 \(a, b, c\) の公比を \(r\) とおくと、
\(\displaystyle r = \frac{b}{a} = \frac{c}{b}\)
\(\displaystyle \frac{b}{a} = \frac{c}{b}\) に \(ab\) をかけて
\(\color{red}{b^2 = ac}\)
等比数列の計算問題
それでは、等比数列の仕上げに計算問題を解いていきましょう。
計算問題①「\(a_2 = 4\), \(a_4 = 1\) である等比数列の一般項」
第 \(2\) 項が \(4\)、第 \(4\) 項が \(1\) となる等比数列 \(\{a_n\}\) の一般項を求めよ。
初項と公比がわからないので、文字でおいて等比数列の一般項を表し、問題文の条件を当てはめます。
この数列を満たす一般項が \(1\) つだけとは限らないことに注意しましょう。
数列 \(\{a_n\}\) の初項を \(a\)、公比を \(r\) とおくと、
一般項は \(a_n = ar^{n − 1}\)
\(a_2 = 4\) より、
\(ar = 4\) …①
\(a_4 = 1\) より、
\(ar^3 = 1\)
\(ar \cdot r^2 = 1\) …②
①を②に代入して、
\(4 \cdot r^2 = 1\)
\(\displaystyle r^2 = \frac{1}{4}\)
\(\displaystyle r = \pm \frac{1}{2}\) …③
(i) \(\displaystyle r = \frac{1}{2}\) のとき
③を①に代入して、
\(\displaystyle \frac{a}{2} = 4\)
\(a = 8\)
よって、\(\{a_n\}\) の一般項は、
\(\begin{align} a_n &= 8 \cdot \left( \frac{1}{2} \right)^{n − 1} \\ &= 2^3 \cdot \left( \frac{1}{2} \right)^{n − 1} \\ &= \left( \frac{1}{2} \right)^{n − 4} \end{align}\)
(ii) \(\displaystyle r = −\frac{1}{2}\) のとき、
③を①に代入して、
\(\displaystyle −\frac{a}{2} = 4\)
\(a = −8\)
よって、\(\{a_n\}\) の一般項は、
\(\begin{align} a_n &= −8 \cdot \left( −\frac{1}{2} \right)^{n − 1} \\ &= (−2)^3 \cdot \left( \frac{1}{2} \right)^{n − 1} \\ &= \left( −\frac{1}{2} \right)^{n − 4} \end{align}\)
よって、\(\{a_n\}\) の一般項は
\(\displaystyle \left( \frac{1}{2} \right)^{n − 4}\) または \(\displaystyle \left( −\frac{1}{2} \right)^{n − 4}\)
答え:
\(\color{red}{\displaystyle a_n = \left( \frac{1}{2} \right)^{n − 4}}\) または \(\color{red}{\displaystyle a_n = \left( −\frac{1}{2} \right)^{n − 4}}\)
計算問題②「等比数列をなす数を求める」
数列 \(a, b, 2, c, 18\) は各項が正の等比数列である。このとき、\(a, b, c\) の値を求めよ。
連続する \(3\) 項ずつに注目して、等比中項の関係を利用します。
\(c\) は \(2, 18\) の等比中項なので、
\(c^2 = 2 \cdot 18 = 36\)
\(c\) は正の値なので、
\(c = 6\)
また、公比を \(r\) とすると、等比数列の性質より
\(\displaystyle r = \frac{c}{2} = \frac{6}{2} = 3\)
したがって、
\(3b = 2\)
\(\displaystyle b = \frac{2}{3}\)
\(3a = b\)
\(\displaystyle a = \frac{b}{3} = \frac{\frac{2}{3}}{3} = \frac{2}{9}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle a = \frac{2}{9}, \displaystyle b = \frac{2}{3}, c = 6}\)
計算問題③「等比数列の和を求める」
第 \(3\) 項が \(12\)、第 \(4\) 項が \(−24\) となる等比数列 \(\{a_n\}\) の第 \(5\) 項から第 \(10\) 項までの和を求めよ。
問題文から、公比の値はすぐに求められます。
また、(\(a_5\) から \(a_{10}\) までの和) = (初項を \(a_5\) としたときの第 \(6\) 項までの和) とみなすことで、和の公式が適用できます。
\(\{a_n\}\) の公比を \(r\) とすると、等比数列の性質より、
\(a_4 = ra_3\)
よって公比は
\(\displaystyle r = \frac{a_4}{a_3} = −\frac{24}{12} = −2\)
また、
\(\begin{align} a_5 &= ra_4 \\ &= (−2) \cdot (−24) \\ &= 48 \end{align}\)
第 \(5\) 項から第 \(10\) 項までの項数は \(10 − 5 + 1 = 6\)
ここで、\(\{a_n\}\) の第 \(5\) 項から第 \(10\) 項までの和 \(S\) は、初項 \(a_5 = 48\), 公比 \(−2\) の等比数列の初項から第 \(6\) 項までの和と等しいので、
\(\begin{align} S &= \frac{48\{1 − (−2)^6\}}{1 − (−2)} \\ &= \frac{48(1 − 64)}{3} \\ &= 16 \cdot (−63) \\ &= −1008 \end{align}\)
答え: \(\color{red}{−1008}\)
以上で等比数列の解説は終わりです。
等比数列の問題は、性質を理解すればスマートに解くことができます。
練習を重ねて必ず理解できるようになりましょう!
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