この記事では、「指数と対数の関係」をわかりやすく解説していきます。
変換公式やグラフ、計算問題の解き方も説明していきますので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね。
目次
指数・対数とは?
指数と対数は根本的には同じもので、何を求めるかによって呼び方が変わります。
- 指数
\(a\) のべき乗「\(a^p = M\)」の答え \(M\) を求めるときの \(p\) の部分。 - 対数 \(\log\)
指数 \(p\) を求めるための道具。
\(\log_a M\) は「\(a\) を底とする \(M\) の対数」と呼ぶ。
「\(a\) を \(p\) 乗したら何になるか」を考えるときに使うのが「指数」、「\(a\) を何乗したら \(M\) になるか」を考えるときに使うのが「対数」ということですね。
ちなみに、\(a^p = M\) でも \(p = \log_a M\) でも \(a\) は「底」、\(M\) は「真数」と呼びます。
指数関数と対数関数のグラフの関係
指数関数 \(y = a^x\) と対数関数 \(y = \log_a x\) は、\(x\) と \(y\) を入れ替えた関係、すなわち逆関数の関係にあります。
よって、底 \(a\) の値が同じならば、指数関数と対数関数のグラフは \(y = x\) に関して対称です。
指数と対数の変換公式
指数と対数は、その定義から相互に変換することができます。
\(a > 0\), \(a \neq 1\), \(M > 0\) のとき
定義 \begin{align}\color{red}{a^p = M \iff p = \log_a M} \text{…①}\end{align}
定義より、
\(M = a^p\) を \(p = \log_a M\) に代入して
\begin{align}\color{red}{p = \log_a a^p} \text{…②}\end{align}
特に \(\log_a a = 1\), \(\log_a 1 = 0\), \(\displaystyle \log_a \frac{1}{a} = −1\)
また、
\(p = \log_a M\) を \(M = a^p\) に代入して
\begin{align}\color{red}{M = a^{\log_a M}} \text{…③}\end{align}
定義式①から \(M\) や \(p\) を消去した式②、③もよく使います。
定義式① \(a^p = M \iff p = \log_a M\) に従った指数と対数の変換は、考えなくてもできるくらい練習しておきましょう。
(例①)
- \(2^p = 5\) を満たす数 \(p\)
\(p = \log_2 5\) - \(3^p = 6\) を満たす数 \(p\)
\(p = \log_3 6\) - \(3 = \log_4 M\) を満たす数 \(M\)
\(M = 4^3 (= 64)\)
式② \(p = \log_a a^p\) は、対数を簡単な値に直すときに便利です。
(例②)
- \(\log_3 81 = \log_\color{salmon}{3} \color{salmon}{3}^4 = 4\)
- \(\displaystyle \log_{10} \frac{1}{1000} = \log_{\color{salmon}{10}}\color{salmon}{10}^{−3} = −3\)
また、式③ \(M = a^{\log_a M}\) をとっさに使えると計算がとても楽になります。
(例③)
- \(\color{salmon}{4}^{\log_\color{salmon}{4} 5} = 5\)
- \(\color{salmon}{3}^{\log_\color{salmon}{3} 18} = 18\)
べき乗の指数部分が「対数」で、べき乗の底と対数の底がそろっていたら使える!と覚えておきましょう。
指数と対数の計算公式
ここでは、指数・対数の計算でよく使う公式について説明していきます。
指数法則
指数・対数の計算公式の多くは、「指数法則」から導けます。
\(a > 0\)、\(b > 0\)、\(r\), \(s\) が実数のとき、以下が成り立つ。
① \(\color{red}{a^r \times a^s = a^{r + s}}\)
② \(\color{red}{a^r \div a^s = \displaystyle \frac{a^r}{a^s} = a^{r − s}}\)
③ \(\color{red}{(a^r)^s = a^{rs}}\)
④ \(\color{red}{(ab)^r = a^r b^r}\)
⑤ \(\color{red}{\displaystyle \left( \frac{b}{a} \right)^r = \frac{b^r}{a^r}}\)
対数の性質
対数計算には、「対数の性質」を利用します。
\(a > 0\), \(a \neq 1\), \(M > 0\), \(N > 0\)、\(k\) は実数、\(n\) は \(2\) 以上の自然数のとき、
- \(\color{red}{\log_a MN = \log_a M + \log_a N}\)
- \(\color{red}{\displaystyle \log_a \frac{M}{N} = \log_a M − \log_a N}\)
特に、\(\color{red}{\displaystyle \log_a \frac{1}{N} = −\log_a N}\) - \(\color{red}{\log_a M^k = k\log_a M}\)
特に、\(\color{red}{\displaystyle \log_a \sqrt[n]{M} = \frac{1}{n} \log_a M}\)
それぞれ、どのように導かれるかを確認しましょう。
\(\log_a M = p\), \(\log_a N = q\) とすると、
\(M = a^p\), \(N = a^q\)
指数法則 \(a^p a^q = a^{p + q}\) より
\(MN = a^{p + q} \iff \) \(\log_a MN = p + q = \log_a M + \log_a N\)
よって \(\color{red}{\log_a MN = \log_a M + \log_a N}\)
(証明終わり)
\(\log_a M = p\), \(\log_a N = q\) とすると、
\(M = a^p\), \(N = a^q\)
指数法則 \(\displaystyle \frac{a^p}{a^q} = a^{p − q}\) より
\(\displaystyle \frac{M}{N} = a^{p − q} \iff \) \(\displaystyle \log_a \frac{M}{N} = p − q = \log_a M − \log_a N\)
よって \(\color{red}{\displaystyle \log_a \frac{M}{N} = \log_a M − \log_a N}\)
(証明終わり)
\(\log_a M = p\) とすると \(M = a^p\)
両辺を \(k\) 乗すると \(M^k = a^{kp}\)
よって
\(\log_a M^k = \log_a a^{kp} = kp = k \log_a M\)
したがって \(\color{red}{\log_a M^k = k \log_a M}\)
(証明終わり)
底の変換公式
対数の底は、自在に変換することができます。
\(a, b, c\) は正の数で \(a \neq 1\), \(b \neq 1\), \(c \neq 1\) のとき、
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \log_a b = \frac{\log_c b}{\log_c a}}\end{align}
特に、\(\color{red}{\displaystyle \log_a b = \frac{1}{\log_b a}}\)
\(\log_a b = p\) とすると \(a^p = b\)
両辺の底を \(c\) とする対数をとって
\(\log_c a^p = \log_c b\)
③より \(p \log_c a = \log_c b\)
よって
\(\displaystyle p = \frac{\log_c b}{\log_c a}\)
ゆえに \(\color{red}{\displaystyle \log_a b = \frac{\log_c b}{\log_c a}}\)
(証明終わり)
【発展】対数の関係式
さらに、教科書ではあまり強調されませんが、以下の関係式も知っていると便利です。
\(b > 0\), \(b \neq 1\), \(a > 0\), \(c > 0\) のとき
\begin{align}\color{red}{a^{\log_b c} = c^{\log_b a}}\end{align}
\((\log_b c)(\log_b a) = (\log_b a)(\log_b c)\) より、
\(\log_b (a^{\log_b c}) = \log_b (c^{\log_b a})\)
したがって
\(\color{red}{a^{\log_b c} = c^{\log_b a}}\)
(証明終わり)
この式を使うと、次のような問題で簡単な値に変形できます。
(例)
- \(32^{\log_2 3} = 3^{\log_2 32} = 3^5 = 243\)
- \(25^{\log_5 4} = 4^{\log_5 25} = 4^2 = 64\)
べき乗の指数部分が「対数」のとき、左端と右端の数を交換するイメージですね。
指数と対数の計算問題
最後に、指数と対数の計算問題に挑戦しましょう。
計算問題①「指数部分が log の値」
\(9^{\log_3 5}\) を求めよ。
このような問題では、求めたい値を別の文字でおき、両辺の対数をとると計算しやすいです。
\(9^{\log_3 5} = M\) とおく。
左辺は正であるから、両辺の \(3\) を底とする対数をとると
\(\log_3 (9^{\log_3 5}) = \log_3 M\)
\(\log_3 5 \log_3 9 = \log_3 M\)
\(2\log_3 5 = \log_3 M\)
\(\log_3 5^2 = \log_3 M\)
よって
\(M = 5^2 = 25\)
したがって
\(9^{\log_3 5} = M = 25\)
答え: \(\color{red}{25}\)
「\(\color{red}{a^{\log_a p} = p}\) \(\color{red}{(a > 0, a \neq 1)}\)」を利用すると、より簡単に求められます。
\(\begin{align} 9^{\log_3 5} &= (3^2)^{\log_3 5} \\ &= 3^{2\log_3 5} \\ &= 3^{\log_3 5^2} \\ &= 3^{\log_3 25} \\ &= 25 \end{align}\)
計算問題②「指数の関係式と対数の利用」
\(2^x = 5^y = \sqrt{10}\) が成り立つとき、 \(\displaystyle \frac{1}{x} + \frac{1}{y}\) の値を求めなさい。
指数のままでは扱いにくい問題は、各辺の対数をとると計算しやすくなります。
\(2^x = 5^y = \sqrt{10}\) の各辺は正であるから、各辺の \(2\) を底とする対数をとって
\(\log_2 2^x = \log_2 5^y = \log_2 10^{\frac{1}{2}}\)
\(\displaystyle x = y \log_2 5 = \frac{1}{2} \log_2 10\)
\(\log_2 10 = \log_2 2 + \log_2 5 = 1 + \log_2 5\) より、
\(\displaystyle x = \frac{1 + \log_2 5}{2}\)
\(\displaystyle y = \frac{1 + \log_2 5}{2\log_2 5}\)
よって
\(\displaystyle \frac{1}{x} + \frac{1}{y}\)
\(\displaystyle = \frac{2}{1 + \log_2 5} + \frac{2\log_2 5}{1 + \log_2 5}\)
\(\displaystyle = \frac{2(1 + \log_2 5)}{1 + \log_2 5}\)
\(= 2\)
答え: \(\color{red}{2}\)
以上で問題も終わりです!
指数と対数は密接に関係しているので、それぞれを関連づけて理解するとよいですね。
いろいろな計算を練習して、ぜひ指数・対数を使いこなしてくださいね!