この記事では、「部分分数分解」の公式ややり方をできるだけわかりやすく解説していきます。
部分分数分解を使った数列や積分などの応用問題も解説するので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね!
目次
部分分数分解とは?
部分分数分解とは、以下の例のように \(1\) つの分数をいくつかの分数の足し算や引き算に式変形することです。
(例)
- \(\displaystyle \frac{1}{6} = \frac{1}{2} − \frac{1}{3}\)
_ - \(\displaystyle \frac{1}{x(x + 1)} = \frac{1}{x} − \frac{1}{x + 1}\)
このように部分分数分解することで、分母と分子がよりシンプルな分数で表せますね。
部分分数分解は単なる式変形ではなく、数列や積分の分野で答えを求める際のテクニックとしても使われます。
部分分数分解の公式
ここでは、部分分数分解の公式を示します。
基本的にどんな分数でも部分分数分解できますが、よく出てくるのは次の \(5\) パターンです。
次の \(5\) つの型の分数は、以下のように部分分数分解できる。
【分母が二次式、分子が一次式以下】
① \(\color{red}{\displaystyle \frac{px + q}{(ax + b)(cx + d)} = \frac{A}{ax + b} + \frac{B}{cx + d}}\)
② \(\color{red}{\displaystyle \frac{px + q}{(ax + b)^2} = \frac{A}{ax + b} + \frac{B}{(ax + b)^2}}\)
【分母が三次式、分子が二次式以下】
③ \(\color{red}{\displaystyle \frac{px^2 + qx + r}{(ax + b)(cx + d)(ex + f)}}\) \(\color{red}{\displaystyle = \frac{A}{ax + b} + \frac{B}{cx + d} + \frac{C}{ex + f}}\)
④ \(\color{red}{\displaystyle \frac{px^2 + qx + r}{(ax + b)^2 (cx + d) }}\) \(\color{red}{\displaystyle = \frac{A}{ax + b} + \frac{B}{(ax + b)^2} + \frac{C}{cx + d}}\)
⑤ \(\color{red}{\displaystyle \frac{px^2 + qx + r}{(ax + b)(cx^2 + dx + e) }}\) \(\color{red}{\displaystyle = \frac{A}{ax + b} + \frac{Bx + C}{cx^2 + dx + e}}\)
(ただし、分子が \(0\) でない、つまり分子の \(p\), \(q\), \(r\) のいずれか \(1\) つが \(0\) でない)
分母が因数分解されたかたちであれば、それぞれの因数を分母にもつ分数に分解できるということですね。
公式②や④のように、分母に同じ因数が \(2\) つある場合は、その因数の \(1\) 乗と \(2\) 乗を分母にもつ分数に分解することに注意してください。
部分分数分解のやり方
部分分数分解の基本的なやり方は、公式に沿って式を立て、恒等式を解くだけです。
恒等式の解き方には、「係数比較法」と「数値代入法」の \(2\) 通りがありましたね。
例題を通して、両方のやり方を説明します。
【やり方①】係数比較法で解く
以下の例題を係数比較法で解く手順を説明します。
\(\displaystyle \frac{3}{x(x + 3)}\) を部分分数分解せよ。
まずは、問題に合う部分分数分解の公式に当てはめます。
式の形をみると、公式①に当てはまりそうですね。
\(\displaystyle \frac{3}{x(x + 3)} = \frac{A}{x} + \frac{B}{x + 3}\) …(*)
とおく。
上記の式で \(A\), \(B\) が求まれば、部分分数分解できることになります。
両辺に同じ数をかけて分母を払います。
また、係数比較法で解くときは、分母を払ったあとで式を降べきの順に整理しておきます。
(*) の両辺に \(x(x + 3)\) をかけると、
\(3 = A(x + 3) + Bx\)
\(x\) について降べきの順に整理すると
\(3 = Ax + 3A + Bx\)
\(3 = (A + B)x + 3A\)
上記の式は、\(x\) の値が何であっても成り立つ恒等式です。
ここで、係数比較法を用いて \(A\), \(B\) を求めます。
\(3 = (A + B)x + 3A\)
この式は恒等式であるから、両辺の係数を比較すると
\(\left\{\begin{array}{l} A + B = 0 \text{…①}\\ 3A = 3 \text{…②}\end{array}\right.\)
②より \(A = 1\)
①に \(A = 1\) を代入して
\(B = − 1\)
あとは (*) に \(A\), \(B\) の値を代入すれば、部分分数分解の完成です!
よって、(*) より
\(\displaystyle \frac{3}{x(x + 3)} = \color{red}{\frac{1}{x} − \frac{1}{x + 3}}\)
【やり方②】数値代入法で解く
次は、数値代入法で解いてみましょう。
\(\displaystyle \frac{8x^2 − 5x + 2}{x(2x − 1)^2}\) を部分分数分解せよ。
まずは、問題に合う部分分数分解の公式に当てはめます。
式をみると、公式④が使えそうですね。
\(\displaystyle \frac{8x^2 − 5x + 2}{x(2x − 1)^2} \) \(\displaystyle = \frac{A}{x} + \frac{B}{2x − 1} + \frac{C}{(2x − 1)^2}\) …(*)
とおく。
両辺に同じ数をかけて分母を払います。
両辺に \(x(2x − 1)^2\) をかけて、
\(8x^2 − 5x + 2 \) \(= A(2x − 1)^2 + Bx(2x − 1) + Cx\)
上記の式は、\(x\) の値が何であっても成り立つ恒等式ですね。
ここで、数値代入法を用いて \(A\), \(B\), \(C\) を求めます。
\(x\) を含む項が \(0\) になるような \(x\) の値を代入していきます。
\(8x^2 − 5x + 2 \) \(= A(2x − 1)^2 + Bx(2x − 1) + Cx\)
\(\color{salmon}{\displaystyle x = \frac{1}{2}, 0, 1}\) をそれぞれ代入すると、
\(\left\{\begin{array}{l} 8\left(\displaystyle \frac{1}{2}\right)^2 − 5\left(\displaystyle \frac{1}{2}\right) + 2 = 0 + 0 + \displaystyle \frac{1}{2}C\\ 0 + 0 + 2 = A(−1)^2 + 0 + 0\\ 8 − 5 + 2 = A + B + C\end{array}\right.\)
すなわち
\(\left\{\begin{array}{l} \displaystyle \frac{3}{2} = \frac{C}{2} \text{…①}\\ 2 = A \text{…②}\\ 5 = A + B + C \text{…③}\end{array}\right.\)
①より \(C = 3\)
②より \(A = 2\)
③より
\(\begin{align} B &= 5 − A − C \\ &= 5 − 2 − 3 \\ &= 0 \end{align}\)
よって
\(A = 2\), \(B = 0\), \(C = 3\)
最後に \(A\), \(B\), \(C\) の値を (*) に戻せば、部分分数分解の完成です。
したがって、(*) から
\(\displaystyle \frac{8x^2 − 5x + 2}{x(2x − 1)^2} = \color{red}{\frac{2}{x} + \frac{3}{(2x − 1)^2}}\)
係数比較法と数値代入法の使い分け
係数比較法と数値代入法、どちらの解き方でも問題なく求められますが、オススメの使い分けは次のとおりです。
元の分数の分母が…
- 二次式以下の場合 → 係数比較法
- 三次式以上の場合 → 数値代入法
分母の次数が増えるほど、係数比較のために右辺を展開して降べきの順に並べる手間が増えていきます。
次数が多い場合は数値代入法を使ってみると比較的楽に計算できますよ!
ちなみに、分母にルートを含む場合は部分分数分解ではなく「有理化」を行います。
これについては応用問題②の (1) で詳しく解説します。
部分分数分解の計算問題
では実際に何問か計算問題を解いてみましょう。
計算問題①「分母が二次式、分子が 1」
\(\displaystyle \frac{1}{(x − 3)(x − 7)}\) を部分分数分解せよ。
問題の式を見ると、公式①に当てはまりますね。分母が二次式なので、ここでは係数比較法の解法を示します。
\(\displaystyle \frac{1}{(x − 3)(x − 7)} = \frac{A}{x − 3} + \frac{B}{x − 7}\)
とおく。
両辺に \((x − 3)(x − 7)\) をかけて
\(1 = A(x − 7) + B(x − 3)\)
\(x\) について降べきの順に整理すると
\(1 = (A + B)x + (−7A − 3B)\)
上の式は恒等式であるので、両辺の係数を比較すると
\(\left\{\begin{array}{l} A + B = 0 \text{…①}\\ −7A − 3B = 1 \text{…②}\end{array}\right.\)
①より \(B = −A\)
②に代入して
\(−7A − 3(−A) = 1\)
\(−4A = 1\)
\(\displaystyle A = −\frac{1}{4}\)
よって \(\displaystyle B = −A = \frac{1}{4}\)
したがって、
\(\begin{align} &\frac{1}{(x − 3)(x − 7)} \\ &= −\frac{1}{4} \frac{1}{x − 3} + \frac{1}{4} \frac{1}{x − 7} \\ &= −\frac{1}{4} \left( \frac{1}{x − 3} − \frac{1}{x − 7} \right) \end{align}\)
答え: \(\displaystyle \frac{1}{(x − 3)(x − 7)} = −\frac{1}{4} \left( \frac{1}{x − 3} − \frac{1}{x − 7} \right)\)
計算問題②「3 つに分解する」
\(\displaystyle \frac{4}{(x + 1)^2(x − 3)}\) を部分分数分解せよ。
問題の式を見ると、公式④に当てはまりますね。分母が三次式なので、ここでは数値代入法の解法を示します。
\(\displaystyle \frac{4}{(x + 1)^2(x − 3)} \) \(= \displaystyle \frac{A}{x + 1} + \frac{B}{(x + 1)^2}+ \frac{C}{(x − 3)}\)
とする。
両辺に \((x + 1)^2(x − 3)\) をかけて
\(4 = \) \(A(x + 1)(x − 3) + B(x − 3) + C(x + 1)^2\)
\(x = 0\), \(−1\), \(3\) をそれぞれ代入して
\(\left\{\begin{array}{l} 4 = −3A − 3B + C \text{…①}\\ 4 = −4B \text{…②}\\ 4 = 16C \text{…③}\end{array}\right.\)
②より \(B = −1\)
③より \(C = \displaystyle \frac{1}{4}\)
①から
\(\begin{align}−3A &= 4 + 3B − C \\&= 4 − 3 − \displaystyle \frac{1}{4} \\&= \displaystyle \frac{3}{4}\end{align}\)
よって \(A = −\displaystyle \frac{1}{4}\)
したがって、
\(\displaystyle \frac{4}{(x + 1)^2(x − 3)}\)
\(= \displaystyle \frac{−\frac{1}{4}}{x + 1} + \frac{−1}{(x + 1)^2} + \frac{\frac{1}{4}}{(x − 3)}\)
\(= \displaystyle −\frac{1}{4} \left\{ \frac{1}{x + 1} + \frac{4}{(x + 1)^2} − \frac{1}{(x − 3)}\right\}\)
答え:
\(\displaystyle \frac{4}{(x + 1)^2(x − 3)} \) \(= − \displaystyle \frac{1}{4} \left\{ \frac{1}{x + 1} + \frac{4}{(x + 1)^2} − \frac{1}{(x − 3)}\right\}\)
計算問題③「分母が 2 乗、分子が一次式」
\(\displaystyle \frac{4x − 1}{(x − 2)^2}\) を部分分数分解せよ。
問題の式を見ると、公式②に当てはまりますね。ここでは、係数比較法の解法を示します。
\(\displaystyle \frac{4x − 1}{(x − 2)^2} = \frac{A}{x − 2} + \frac{B}{(x – 2)^2}\)
とする。
両辺に \((x − 2)^2\) をかけて
\(4x − 1 = A(x − 2) + B\)
\(x\) について降べきの順に整理して
\(4x − 1 = Ax + (−2A + B)\)
上の式は恒等式であるから、両辺の係数を比較すると
\(\left\{\begin{array}{l} A = 4 \text{…①}\\ −2A + B = −1 \text{…②}\end{array}\right.\)
②より \(B = 2A − 1\)
\(A = 4\) を代入して
\(B = 2 \cdot 4 − 1 = 7\)
よって
\(A = 4\), \(B = 7\)
したがって
\(\displaystyle \frac{4x − 1}{(x − 2)^2} = \frac{4}{x − 2} + \frac{7}{(x − 2)^2}\)
答え: \(\displaystyle \frac{4x − 1}{(x − 2)^2} = \frac{4}{x − 2} + \frac{7}{(x − 2)^2}\)
部分分数分解の応用問題
最後に、部分分数分解を使う数列や積分の応用問題を解いてみましょう。
応用問題①「分数の数列の和」
数列 \(\displaystyle a_1 = \frac{3}{1}\), \(\displaystyle a_2 = \frac{3}{1 + 2} \), \(\displaystyle a_3 = \frac{3}{1 + 2 + 3}\), \(\cdots\) の一般項 \(a_n\)、および数列 \(\{a_n\}\) の初項から第 \(n\) 項までの和を求めよ。
\(\displaystyle 1 + 2 + 3 + \cdots + n = \frac{1}{2} n(n + 1)\) になることから、数列の一般項 \(a_n\) はすぐに求められます。
\(a_n\) を求めたあと、数列 \(\{a_n\}\) の初項から第 \(n\) 項までの和を部分分数分解を利用して求めましょう。
\(\displaystyle a_1 = \frac{3}{1}\), \(\displaystyle a_2 = \frac{3}{1 + 2}\), \(\displaystyle a_3 = \frac{3}{1 + 2 + 3}\), \(\cdots\)
より、この数列の一般項 \(a_n\) は
\(\begin{align} a_n &= \frac{3}{1 + 2 + 3 + \cdots + n} \\ &= 3 \cdot \frac{2}{n(n + 1)} \\ &= \frac{6}{n(n + 1)} \end{align}\)
また、数列 \(\{a_n\}\) の初項から第 \(n\) 項までの和を \(S_n\) とすると、
\(\begin{align} S_n &= a_1 + a_2 + \cdots a_n \\ &= \sum_{k = 1}^n a_k \\ &= \sum_{k = 1}^n \frac{6}{k(k + 1)} \end{align}\)
ここで、
\(\displaystyle \frac{6}{n(n + 1)} = \frac{A}{n} + \frac{B}{n + 1}\) …(*)
とする。
両辺に \(n(n + 1)\) をかけて
\(6 = A(n + 1) + Bn\)
右辺を \(n\) について降べきの順に整理して
\(6 = (A + B)n + A\)
上の式は恒等式であるので、両辺の係数比較より
\(A + B = 0\), \(A = 6\)
したがって
\(A = 6\), \(B = −6\)
(*) から、
\(\begin{align}\displaystyle \frac{6}{n(n + 1)} &= \frac{6}{n} − \frac{6}{n + 1} \\&= 6 \left( \frac{1}{n} − \frac{1}{n + 1} \right)\end{align}\)
これを用いて、
\(\begin{align}\displaystyle S_n &= \sum_{k = 1}^n \frac{6}{k(k + 1)} \\& = \sum_{k = 1}^n 6 \left(\frac{1}{k} − \frac{1}{k + 1} \right) \\&= 6 \sum_{k = 1}^n \left(\frac{1}{k} − \frac{1}{k + 1} \right) \\&= 6 \left\{ \left(\frac{1}{1} − \frac{1}{2} \right) + \left(\frac{1}{2} − \frac{1}{3} \right) + \left(\frac{1}{3} − \frac{1}{4} \right) + \cdots + \left(\frac{1}{n} − \frac{1}{n + 1} \right) \right\}\\&= 6 \left(1 − \frac{1}{n + 1} \right) \\&= 6 \cdot \frac{n + 1 − 1}{n + 1} \\&= \frac{6n}{n + 1}\end{align}\)
(見切れる場合は横へスクロール)
答え: \(\displaystyle a_n = \frac{6}{n(n + 1)}\)、\(\displaystyle S_n = \frac{6n}{n + 1}\)
応用問題②「ルートを含む数列の和」
(1) 数列 \(\displaystyle a_n = \frac{1}{\sqrt{n} + \sqrt{n + 1}}\) の初項から第 \(n\) 項までの和を求めよ。
(2) 数列 \(\displaystyle a_n = \frac{1}{n(n + 1)(n + 2)(n + 3)}\) の初項から第 \(n\) 項までの和を求めよ。
(1) は分母にルートを含むので、部分分数分解ではなく「有理化」を行います。
また、(2) のように分母が複雑な数列では、部分分数分解によって差のかたちを作ると、和の計算で前後に同じ項が現れて打ち消し合うことができます。
問題の分母「\(n(n + 1)(n + 2)(n + 3)\)」のように、隣り合う因数の \(n\) の値が \(1\) ずつ増えていく場合は、最後の因数以外と最初の因数以外に部分分数分解すると、数列の和の計算がうまくいきます。(この場合 \(n(n + 1)(n + 2)\) と \((n + 1)(n + 2)(n + 3)\) )
(見切れる場合は横へスクロール)
(1)
数列 \(\displaystyle a_n = \frac{1}{\sqrt{n} + \sqrt{n + 1}}\) の初項から第 \(n\) 項までの和を \(S_n\) とすると
\(\displaystyle S_n = \sum_{k = 1}^n a_k = \sum_{k = 1}^n \frac{1}{\sqrt{k} + \sqrt{k + 1}}\)
ここで、\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{k} + \sqrt{k + 1}}\) の分母を有理化すると、
\(\begin{align} &\frac{1}{\sqrt{k} + \sqrt{k + 1}} \\ &= \frac{1}{\sqrt{k} + \sqrt{k + 1}} \times \frac{\sqrt{k} − \sqrt{k + 1}}{\sqrt{k} − \sqrt{k + 1}} \\ &= \frac{\sqrt{k} − \sqrt{k + 1}}{k − (k + 1)} \\ &= \frac{\sqrt{k} − \sqrt{k + 1}}{−1} \\ &= \sqrt{k + 1} − \sqrt{k} \end{align}\)
これを用いて、
\(\begin{align} S_n &= \sum_{k = 1}^n \frac{1}{\sqrt{k} + \sqrt{k + 1}} \\ &= \sum_{k = 1}^n (\sqrt{k + 1} − \sqrt{k}) \\ &= \sqrt{n + 1} − \sqrt{1} \\ &= \sqrt{n + 1} − 1 \end{align}\)
答え: \(\sqrt{n + 1} − 1\)
(2)
数列 \(\displaystyle a_n = \frac{1}{n(n + 1)(n + 2)(n + 3)}\) の初項から第 \(n\) 項までの和を \(S_n\) とすると
\(\begin{align} S_n &= \sum_{k = 1}^n a_k \\ &= \sum_{k = 1}^n \frac{1}{k(k + 1)(k + 2)(k + 3)} \end{align}\)
ここで
\(\displaystyle \frac{1}{n(n + 1)(n + 2)(n + 3)} = \) \(\displaystyle \frac{A}{n(n + 1)(n + 2)} + \frac{B}{(n + 1)(n + 2)(n + 3)}\)
とおく。
両辺に \(n(n + 1)(n + 2)(n + 3)\) をかけて
\(1 = A(n + 3) + Bn\)
\(1 = (A + B)n + 3A\)
上の式は恒等式であるので、両辺の係数比較より
\(\left\{\begin{array}{l} A + B = 0\\ 3A = 1\end{array}\right.\)
これを用いて
\(\displaystyle A = \frac{1}{3}\)
\(\displaystyle B = −A = −\frac{1}{3}\)
よって、
\(\displaystyle \frac{1}{n(n + 1)(n + 2)(n + 3)} \)
\(= \displaystyle \frac{\frac{1}{3}}{n(n + 1)(n + 2)} + \frac{− \frac{1}{3}}{(n + 1)(n + 2)(n + 3)}\)
\(= \displaystyle \frac{1}{3} \left\{ \frac{1}{n(n + 1)(n + 2)} − \frac{1}{(n + 1)(n + 2)(n + 3)} \right\}\)
これを用いて
\(\begin{align}\displaystyle S_n &= \sum_{k = 1}^n \frac{1}{k(k + 1)(k + 2)(k + 3)}\\&= \frac{1}{3} \sum_{k = 1}^n \left\{ \frac{1}{n(n + 1)(n + 2)} − \frac{1}{(n + 1)(n + 2)(n + 3)} \right\}\\&= \frac{1}{3} \left\{ \frac{1}{1 \cdot 2 \cdot 3} − \frac{1}{(n + 1)(n + 2)(n + 3)} \right\}\\&= \frac{1}{3} \left\{ \frac{1}{6} − \frac{1}{(n + 1)(n + 2)(n + 3)} \right\}\\&= \frac{1}{3} \cdot \frac{(n + 1)(n + 2)(n + 3) − 6}{6(n + 1)(n + 2)(n + 3)}\\&= \frac{(n + 1)(n^2 + 5n + 6) − 6}{18(n + 1)(n + 2)(n + 3)}\\&= \frac{n^3 + 5n^2 + 6n + n^2 + 5n + 6 − 6}{18(n + 1)(n + 2)(n + 3)}\\&= \frac{n^3 + 6n^2 + 11n}{18(n + 1)(n + 2)(n + 3)}\\&= \frac{n(n^2 + 6n + 11)}{18(n + 1)(n + 2)(n + 3)}\end{align}\)
答え: \(\displaystyle \frac{n(n^2 + 6n + 11)}{18(n + 1)(n + 2)(n + 3)}\)
応用問題③「分数関数の積分(分母が 3 次)」
\(\displaystyle \int \frac{3}{x^2(x + 1)} \, dx\) を求めよ。
そのままの形では積分できないので、部分分数分解して積分できる形に変形してみましょう。
ここでは、数値代入法の解法を示します。
\(\displaystyle \frac{3}{x^2(x + 1)} = \frac{A}{x} + \frac{B}{x^2} + \frac{C}{x + 1}\)
とする。
両辺に \(x^2(x + 1)\) をかけて
\(3 = Ax(x + 1) + B(x + 1) + Cx^2\)
\(x = 0\), \(−1\), \(1\) をそれぞれ代入して
\(\left\{\begin{array}{l} 3 = B \text{…①}\\ 3 = C \text{…②}\\ 3 = 2A + 2B + C \text{…③}\end{array}\right.\)
③より
\(2A = 3 − 2B − C\)
\(\displaystyle A = \frac{3}{2} − B − \frac{1}{2} C\)
\(B = 3\), \(C = 3\) を代入して
\(\displaystyle A = \frac{3}{2} − 3 − \frac{3}{2} = −3\)
よって
\(A = −3\), \(B = 3\), \(C = 3\)
したがって
\(\begin{align} &\frac{3}{x^2(x + 1)} \\ &= −\frac{3}{x} + \frac{3}{x^2} + \frac{3}{x + 1} \\ &= 3 \left( −\frac{1}{x} + \frac{1}{x^2} + \frac{1}{x + 1} \right) \end{align}\)
と部分分数分解できる。
したがって、\(C\) を積分定数とすると
\(\begin{align} &\int \frac{3}{x^2(x + 1)} \ dx \\ &= \int 3 \left(−\frac{1}{x} + \frac{1}{x^2} + \frac{1}{x + 1} \right) dx \\ &= 3 \int \left( −\frac{1}{x} + \frac{1}{x^2} + \frac{1}{x + 1} \right) dx \\ &= 3 \left(−\log |x| − \frac{1}{x} + \log|x + 1| \right) + C \\ &= 3 \left( \log|x + 1| − \log|x| − \frac{1}{x} \right) + C \\ &= 3 \left( \log\frac{|x + 1|}{|x|} − \frac{1}{x} \right) + C \end{align}\)
答え:
\(\displaystyle 3 \left( \log\frac{|x + 1|}{|x|} − \frac{1}{x} \right) + C\)(\(C\) は積分定数)
以上で応用問題も終わりです。
部分分数分解は数列や積分の問題を解く際にも活用できます。
最初は式変形が難しいと感じるかもしれませんが、基本的にやることはいつも同じなので、たくさん問題を解いて慣れてくださいね!