陰関数とは?陽関数との違い、微分公式やグラフの書き方

この記事では、「陰関数」とは何か、また、陽関数との違いをわかりやすく解説していきます。

陰関数の微分公式や、陰関数のグラフの書き方も説明していきますので、ぜひこの記事を通してマスターしてくださいね。

 

陰関数とは?

陰関数とは、複数の変数を含む関係式によって間接的に定められる関数のことです。

陰関数の定義

\(x\) の関数 \(y\) が関係式 \(\color{red}{F(x, y) = 0}\) で与えられるとき、\(y\) を \(x\) の陰関数という。

例えば、\(y = f(x)\) は変数 \(x\) の値によって変数 \(y\) の値が決まるので、\(y\) は \(x\) の関数です。

移項して、この関数を \(F(x, y) = 0\) と表せば、「\(y\) は \(x\) の陰関数」と呼ぶことができます。

陰関数の厳密な定義にはもっと細かい条件がありますが、最初の理解はこれで十分です。

 

\(F(x, y) = 0\) は関数とは限らない

注意が必要なのは、陰関数 \(F(x, y) = 0\) の形をした式でも、「関数」であるとは限らないことです。

そもそも、関数の定義は以下でしたね。

関数

ある変数に依存して値がただ \(1\) つに決まる変数、またはその対応を表す式。

例えば、\(x^2 + y^2 − 4 = 0\) という式は座標平面上で中心 \((0, 0)\)、半径 \(2\) の円を表します。

しかし、\(1\) つの \(x\) に対して \(y\) が \(2\) つの値をとる範囲もあるため、厳密には関数ではありません。

\(x = 2\) という式も、\(1\) つの \(x\) に対して \(y\) がいくつも対応するため、関数の定義には当てはまりません。

ほかにも、\((x − 1)^2 + (2y − 1)^2 = 0\) は単なる点 \(\displaystyle \left(1, \frac{1}{2}\right)\) を表すだけなので関数とは言えないなど、陰関数のような見た目 \(F(x, y) = 0\) だからといって関数であるとは言い切れないのです。

 

陽関数表示と陰関数表示

ある関数を \(y = f(x)\) の形で表すことを「陽関数表示」、\(F(x, y) = 0\) の形で表すことを「陰関数表示」といいます。

関数の表示形式

\(x\) が \(y\) の関数であるとき、

  • 陽関数表示:\(\color{red}{y = f(x)}\)
  • 陰関数表示:\(\color{red}{F(x, y) = 0}\)

今まで一般的な関数として習ってきた \(y = f(x)\) という表記方法は、正式には「陽関数表示」と呼ぶのですね。

同じ関数であっても、陽関数として表したり、陰関数として表したりできます。

(例1)

  • 陽関数表示
    \(y = x^2 + 1\)
  • 陰関数表示
    \(x^2 − y + 1 = 0\)

 

また、先ほど厳密には関数でないと説明した円の方程式 \(x^2 + y^2 − 4 = 0\) も、値域によって \(2\) つの(陽)関数に分けることができます

(例2)

  • 陰関数表示
    \(x^2 + y^2 − 4 = 0\)
  • 陽関数表示
    \(y = \cases{ \sqrt{4 − x^2} & ($0 \leq y$) \cr −\sqrt{4 − x^2} & ($y < 0$)}\)
補足

陽関数表示にするのが難しい陰関数も存在します。

(例)\(4x^3 + xy − 2y^2 + y^3 = 0\)

無理やり \(y\) について解けばよいのですが、とても複雑な式になります。

それに対して、陽関数を陰関数表示することは比較的簡単です。

 

陰関数の微分法【公式】

陰関数は、陰関数表示のまま微分できます。

陰関数の微分公式

\(y\) が \(x\) の関数であるとき、

\begin{align}\color{red}{\frac{d}{dx} f(y) = \frac{d}{dy} f(y) \cdot \frac{dy}{dx}}\end{align}

つまり、\(F(x, y) = 0\) を \(x\) について微分するとき、\(y\) を含む部分は合成関数とみて微分するということです。

合成関数の微分

\begin{align}\displaystyle \frac{dy}{dx} &= \frac{dy}{du} \cdot \frac{du}{dx}\\\\ \{f(g(x))\}’ &= f’(g(x))g’(x)\end{align}

 

陰関数の微分のやり方(導関数の求め方)

次の例題を通して、陰関数 \(F(x, y) = 0\) の導関数 \(\displaystyle \frac{dy}{dx}\) を求める手順を説明します。

例題

\(x^2 + y^2 − 4 = 0\) において \(\displaystyle \frac{dy}{dx}\) を求めよ。

 

STEP.1
項ごとに微分する

陰関数の微分では、基本的に項ごとの微分を考えます。

求めたいのは \(\displaystyle \frac{dy}{dx}\)(\(y\) を \(x\) で微分したもの)なので、まずは全体を \(x\) で微分します。

両辺を \(x\) で微分すると

\((x^2)’ + (y^2)’ − (4)’ = 0\)

\(x\) で微分するので、\((x^2)’ = 2x\)、\((4)’ = 0\) は簡単にわかりますね。

一方、\((y^2)’\) は STEP.2 の方法で微分します。

 

STEP.2
y を含む項は合成関数と見て微分する

\(y\) を含む項は合成関数とみなして、\(\text{(全体を $y$ で微分)} \times \text{($y$ を $x$ で微分)}\) を行います。

ここでは、\(y^2\) を \(f(y) = y^2\), \(y = g(x)\) の合成関数と見て、\(x\) について微分するということですね。

\(\displaystyle \frac{d}{dx} y^2 = \frac{d}{dy} y^2 \cdot \frac{dy}{dx} = 2y \cdot y’\)

 

STEP.3
導関数について解く

式全体が微分できたら、導関数 \(\displaystyle \frac{dy}{dx}\) について解きます。

つまり、\(y’ =\) 〜 のかたちに移項すればよいです。

解答全体の流れは次のようになります。

解答

 

\(x^2 + y^2 − 4 = 0\) の両辺を \(x\) で微分すると

\(2x + 2yy’ = 0\)

\(\displaystyle y’ = −\frac{2x}{2y} = −\frac{x}{y}\)

よって \(\displaystyle \frac{dy}{dx} = −\frac{x}{y}\)

 

答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{dy}{dx} = −\frac{x}{y}}\)

陰関数の微分では、特に指示がない限り答えに \(y\) が含まれていても構いません。

\(x\) のみを使って答えよと指示された場合は、元の式を \(y\) について解いておきます。

完了

ちなみに、この問題では陽関数表示に直してから微分することもできますが、計算の手間は増えます。

別解(陽関数として微分)

 

\(x^2 + y^2 − 4 = 0\) より

\(y = \pm\sqrt{4 − x^2}\)

 

(i) \(y = \sqrt{4 − x^2}\) のとき

\(\displaystyle \frac{dy}{dx} = \frac{(−2x)}{2\sqrt{4 − x^2}} = −\frac{x}{\sqrt{4 − x^2}} = −\frac{x}{y}\)

 

(ii) \(y = −\sqrt{4 − x^2}\) のとき

\(\displaystyle \frac{dy}{dx} = −\frac{(−2x)}{2\sqrt{4 − x^2}} = \frac{x}{\sqrt{4 − x^2}} = −\frac{x}{y}\)

 

よって

\(\color{red}{\displaystyle \frac{dy}{dx} = −\frac{x}{y}}\)

陰関数表示された関数を陰関数のまま微分できるのはかなり便利であると実感できますね。

補足

一方で、積分しようと思うと陰関数表示のままでは難しく、陽関数表示に直して積分してあげる必要があります。

 

【参考】陰関数の微分と接線の方程式

陰関数の微分で求めた \(\displaystyle \frac{dy}{dx}\) は、陽関数における \(\displaystyle \frac{dy}{dx}\) と同じように、グラフ上では接線の傾きを意味します。

「接線の方程式」の求め方については、以下の記事で説明しています。

接線、接線の方程式とは?公式や微分による傾きの求め方

 

陰関数の微分の練習問題

それでは、陰関数を微分する問題をいくつか解いてみましょう。

練習問題①「\(x^2 − 2xy + 3y^2 = 1\) の \(\displaystyle \frac{dy}{dx}\)」

練習問題①

\(x\) の関数 \(y\) が \(x^2 − 2xy + 3y^2 = 1\) を満たすとき、\(\displaystyle \frac{dy}{dx}\) を求めよ。

 

\(xy\) を含む項は異なる関数の積の微分ととらえます。

積の微分
\begin{align}(f(x)g(x))’ = f’(x)g(x) + f(x)g’(x)\end{align}

解答

 

両辺を \(x\) で微分すると

\(2x −2(1 \cdot y + xy’) + 6yy’ = 0\)

\(2x −2y −2xy’ + 6yy’ = 0\)

\(x − y − xy’ + 3yy’ = 0\)

\(y’(x − 3y) = x − y\)

よって

\(\displaystyle \frac{dy}{dx} = y’ = \frac{x − y}{x − 3y}\)

 

答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{dy}{dx} = \frac{x − y}{x − 3y}}\)

 

練習問題②「\(x^2 + 9y^2 = 16\) の \(\displaystyle \frac{dy}{dx}\), \(\displaystyle \frac{d^2y}{dx^2}\)」

練習問題②

\(x\) の関数 \(y\) が \(x^2 + 9y^2 = 16\) を満たすとき、\(\displaystyle \frac{dy}{dx}\), \(\displaystyle \frac{d^2y}{dx^2}\) を求めよ。

 

二階微分 \(\displaystyle \frac{d^2y}{dx^2}\) を求めるときは、\(\displaystyle \left( \frac{x}{y} \right)’\) を商の微分と見ます。

商の微分

\begin{align}\displaystyle \left( \frac{f(x)}{g(x)} \right)’ = \frac{f’(x)g(x) − f(x)g’(x)}{\{g(x)\}^2}\end{align}

解答

 

両辺を \(x\) で微分すると

\(2x + 18yy’ = 0\)

\(x + 9yy’ = 0\)

\(\displaystyle \frac{dy}{dx} = y’ = −\frac{x}{9y}\)

 

\(\begin{align} \frac{d^2y}{dx^2} &= −\frac{1}{9} \left( \frac{x}{y} \right)’ \\ &= −\frac{1}{9} \cdot \frac{1 \cdot y − xy’}{y^2} \\ &= \frac{xy’ − y}{9y^2} \\ &= \frac{x \cdot \left( −\frac{x}{9y} \right) − y}{9y^2} \\ &= \frac{−x^2 − 9y^2}{81y^3} \\ &= −\frac{x^2 + 9y^2}{81y^3} \\ &= −\frac{16}{81y^3}\end{align}\)

 

答え: 

\(\color{red}{\displaystyle \frac{dy}{dx} = −\frac{x}{9y}}\), \(\color{red}{\displaystyle \frac{d^2y}{dx^2} = −\frac{16}{81y^3}}\)

 

練習問題③「\(\cos x + \sin y = 1\) の \(\displaystyle \frac{dy}{dx}\)」

練習問題③

\(x\) の関数 \(y\) が \(\cos x + \sin y = 1\) を満たすとき、\(\displaystyle \frac{dy}{dx}\) を求めよ。

 

この問題のように、陽関数表示が難しいときには陰関数の微分が必須ですね。

解答

 

両辺を \(x\) で微分すると

\(−\sin x + (\cos y) y’ = 0\)

よって

\(\displaystyle \frac{dy}{dx} = y’ = \frac{\sin x}{\cos y}\)

 

答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{dy}{dx} = \frac{\sin x}{\cos y}}\)

 

陰関数のグラフの書き方

ここでは、陰関数のグラフの書き方を例題を通して説明していきます。

例題

関数 \(y^2 = x^2(x + 1)\) のグラフを書け。

 

STEP.1
F(x, y) = 0 の形にする

まずは、右辺が \(0\) になるように移項し、陰関数表示にします。

\(y^2 = x^2(x + 1)\) より \(y^2 − x^2(x + 1) = 0\)

 

STEP.2
対称性を確認する

\(F(x, y)\) に次の \(4\) つを代入して、元の式と同じ形になれば対称性をもつことがわかります。

\(\begin{align}F(−x, y) &= y^2 − (−x)^2 \{(−x) + 1\} \\&= y^2 − x^2(−x + 1)\end{align}\)

 

\(\begin{align}F(x, −y) &= (−y)^2 − x^2(x + 1) \\&= y^2 − x^2(x + 1) \\&= \color{red}{F(x, y)}\end{align}\)

 

\(\begin{align}F(−x, −y) &= (−y)^2 − (−x)^2 \{(−x) + 1\} \\&= y^2 − x^2(−x + 1)\end{align}\)

 

\(F(y, x) = x^2 − y^2(y + 1)\)

よって、この関数は \(x\) 軸について対称であるとわかりました。

対称性を利用すると、すべての範囲の増減を調べる必要がなくなるので楽です。

 

STEP.3
陽関数表示 y = f(x) にする

グラフの増減を調べるには、陽関数表示に変形する必要があります。

\(y^2 = x^2(x + 1)\) より

\(y = \pm x\sqrt{x + 1}\)

 

STEP.4
定義域・極値・変曲点を調べる

通常の関数のグラフを書くときと同様に、定義域や極値、変曲点を調べます。

関数 \(y^2 = x^2(x + 1)\) は \(x\) 軸対称なので、\(y = +x\sqrt{x + 1}\) だけを考えればよいですね。

\(x + 1 \geq 0\) より定義域は \(x \geq −1\)

 

\(\begin{align} y’ &= 1 \cdot \sqrt{x + 1} + x \cdot \frac{1}{2\sqrt{x + 1}} \\ &= \frac{2(x + 1) + x}{2 \sqrt{x + 1}} \\ &= \frac{3x + 2}{2\sqrt{x + 1}} \end{align}\)

 

\(y’ = 0\) のとき \(\displaystyle x = −\frac{2}{3}\), \(\displaystyle y = −\frac{2\sqrt{3}}{9}\)

 

\(\begin{align} y’’ &= \frac{3 \cdot 2\sqrt{x + 1} − (3x + 2) \cdot 2 \cdot \frac{1}{2\sqrt{x + 1}}}{(2\sqrt{x + 1})^2} \\ &= \frac{6\sqrt{x + 1} − \frac{3x + 2}{\sqrt{x + 1}}}{4(x + 1)} \\ &= \frac{6(x + 1) − (3x + 2)}{4(x + 1) \sqrt{x + 1}} \\ &= \frac{3x + 4}{4(x + 1)\sqrt{x + 1}} \end{align}\)

 

\(x > −1\) において常に \(y’’ > 0\)

 

 

STEP.5
増減を調べる

増減表に関数の増減を整理しましょう。

 

また、傾きやグラフが向かう先がわからない場合は極限を調べておくとよいです。

\(\displaystyle \lim_{x \to \infty} y = \infty\), \(\displaystyle \lim_{x \to −1+0} y’ = −\infty\)

 

STEP.6
グラフを書く

あとは、増減表にしたがってグラフを書くだけです。

STEP.2 で調べた対称性も加味して図示します。

これでグラフの完成です!

 

完了

 

以上で陰関数の説明は終わりです。

関数、陽関数、陰関数などの言葉の違いをしっかりと理解して、さまざまな問題に対応できるようにしましょう!

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