この記事では、無理関数(ルートの中に変数をもつ関数)についてわかりやすく解説していきます。
グラフの書き方や無理方程式・無理不等式の解き方、微分積分のやり方も説明しますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね!
無理関数とは?
無理関数とは、ある変数についての無理式(ルートの中に変数を含む式)で表された関数のことです。
- \(y = \sqrt{x}\)
- \(y = \sqrt{3x − 1} − 2\)
- \(y = \sqrt[3]{x^2 + x + 5}\)
高校数学で扱うのは、ルート(根号)の中が \(x\) の一次式である「一次無理関数」がほとんどです。
無理関数の定義域と値域
ルート(根号)の中身は \(0\) 以上の数でないといけないので、無理関数の定義域と値域は自ずと限定されます。
(例)
- \(y = \sqrt{x}\)
定義域は \(x \geq 0\)、値域は \(y \geq 0\) - \(y = \sqrt{3x − 1}\)
定義域は \(\displaystyle x \geq \frac{1}{3}\)、値域は \(y \geq 0\) - \(y = \sqrt{2x + 5} − 1\)
定義域は \(\displaystyle x \geq −\frac{5}{2}\)、値域は \(y \geq −1\) - \(y = −\sqrt{5x − 4}\)
定義域は \(\displaystyle x \geq \frac{4}{5}\)、値域は \(y \leq 0\)
一次無理関数のグラフ
ルート(根号)の中が \(x\) の一次式である無理式で表された関数を「一次無理関数」といいます。
もっとも簡単な一次無理関数、\(y = \sqrt{x}\) のグラフは次のとおりです(\(x \geq 0\) という定義域があることに注意)。
このグラフ、何かに似ていませんか?
そう、二次関数 \(y = x^2\) の放物線を半分にして横に寝かせた形になっていますね!
それもそのはず、\(y = \sqrt{x}\) の両辺を二乗すると \(y^2 = x\) となり、 \(y = x^2\) \((x \geq 0)\) の逆関数になっているのです。
一次無理関数 \(y = \pm \sqrt{\pm ax}\) のグラフ
無理関数のグラフは、根号全体および中身の符号によって向きが異なります。
一次無理関数 \(y = \pm \sqrt{\pm ax}\) を例にとると次のようになります。
\(a > 0\) とする。
- \(\color{red}{y = \sqrt{ax}}\)
定義域 \(x \geq 0\), 値域 \(y \geq 0\)
頂点 \((0, 0)\)、軸が \(x\) 軸である放物線 \(\displaystyle x = \frac{1}{a} y^2\) の上半分 - \(\color{red}{y = −\sqrt{ax}}\)
定義域 \(x \geq 0\), 値域 \(y \leq 0\)
\(y = \sqrt{ax}\) のグラフと \(x\) 軸に関して対称なグラフ - \(\color{red}{y = \sqrt{−ax}}\)
定義域 \(x \leq 0\), 値域 \(y \geq 0\)
\(y = \sqrt{ax}\) のグラフと \(y\) 軸に関して対称なグラフ - \(\color{red}{y = −\sqrt{−ax}}\)
定義域 \(x \leq 0\), 値域 \(y \leq 0\)
\(y = \sqrt{ax}\) のグラフと原点に関して対称なグラフ
\(a\) の符号および根号の外の符号と、グラフが存在する象限の関係を押さえておきましょう。
一次無理関数 \(y = \sqrt{a(x − p)} + q\) のグラフ
無理関数のグラフは、他の関数と同様に平行移動できます。
関数 \(y = \sqrt{ax}\) \((a \neq 0)\) のグラフを \(x\) 軸方向に \(p\)、\(y\) 軸方向に \(q\) だけ平行移動してできるグラフは
\begin{align}\color{red}{y = \sqrt{a(x − p)} + q}\end{align}
放物線の頂点は \(\color{red}{(p, q)}\)
よって、よく目にする一次無理関数 \(y = \sqrt{ax + b}\) \((a \neq 0)\) のグラフは、\(y = \sqrt{ax}\) のグラフを \(x\) 軸方向に \(\displaystyle −\frac{b}{a}\) だけ平行移動したものになります。
これを知っていれば、一次無理関数のグラフは簡単に書くことができますね。
「グラフの平行移動」については以下の記事で説明しています。
グラフの平行移動とは?二次関数などの公式と作図を解説!
一次無理関数のグラフの書き方
以下の例題を通して、無理関数のグラフの書き方を説明します。
次の関数のグラフを書け。
\(y = \sqrt{3x + 5} + 2\)
まず、無理式の部分を \(\displaystyle \sqrt{ax + b} = \sqrt{a \left( x + \frac{b}{a} \right)}\) の形に変形し、基本形 \(y = \sqrt{a(x − p)} + q\) を得ます。
こうすることで、\(x\) 軸、\(y\) 軸方向への移動量がわかりやすくなります。
\(\begin{align}y &= \sqrt{3x + 5} + 2 \\&= \sqrt{3 \left( x + \frac{5}{3} \right)} + 2\end{align}\)
よって、\(y = \sqrt{3x}\) のグラフを \(x\) 軸方向に \(\displaystyle −\frac{5}{3}\)、\(y\) 軸方向に \(2\) だけ平行移動したものである。
変形した式から、定義域と値域を求めておきます。
無理式の中身、および無理式全体が正の値になることから、\(x\), \(y\) のとりうる値は必ず限定されますね。
\(\displaystyle y = \sqrt{3 \left( x + \frac{5}{3} \right)} + 2\) より、
定義域は \(\displaystyle x \geq −\frac{5}{3}\)、値域は \(y \geq 2\)
なお、定義域と値域の境界値 \(\left(\displaystyle −\frac{5}{3}, 2\right)\) が放物線の頂点です。
\(x\) 軸との交点は \(y = 0\) を代入、\(y\) 軸との交点は \(x = 0\) を代入してそれぞれ求めます。
今回の例題では、値域が \(y \geq 2\) なので \(x\) 軸との交点はありません。
\(x = 0\) のとき \(y = \sqrt{5} + 2\)
最後に放物線の半分を横向けにしたグラフを書けば完成です!
今回の例題の場合、グラフの向きは \(y = \sqrt{ax}\) 型ですね。
なお、頂点の座標と \(x\) 軸, \(y\) 軸との交点の座標がわかっていれば向きで悩むこともないはずです。
無理関数の方程式・不等式
無理関数を含む方程式(無理方程式)、無理関数を含む不等式(無理不等式)の解き方を説明します。
無理方程式の解き方 → 次のどちらかの方法で解く
- 両辺を \(2\) 乗する
- 同値変形で解く
\(\sqrt{A} = B \iff B \geq 0\) かつ \(A = B^2\)
無理不等式の解き方 → 次のどちらかの方法で解く
結論から言っておくと、どちらも 1 の方法で解くのがオススメです。
\((x + 1)(x − 1) = 0 \iff x = −1, 1\) のように、ある条件式を必要十分条件の関係にある別の条件式に書き換えることを「同値変形」といいます。
無理方程式および無理不等式では上記の同値変形が成り立ちますが、意味を理解せず丸暗記するのはオススメしません。
無理方程式の解き方① 両辺を 2 乗する
次の例題を通して、無理方程式の両辺を \(2\) 乗して解く方法を説明します。
方程式 \(\sqrt{2x − 3} = x − 3\) を解け。
両辺を \(2\) 乗すると根号が解消できるので、まず \(x\) を求めます。
そのあと、求めた \(x\) が元の式を満たすかどうかを必ず確認します。
両辺を \(2\) 乗すると
\(2x − 3 = (x − 3)^2\)
\(2x − 3 = x^2 − 6x + 9\)
\(x^2 − 8x + 12 = 0\)
\((x − 2)(x − 6) = 0\)
\(x = 2, 6\)
このうち、\(\sqrt{2x − 3} = x − 3\) を満たすのは
\(x = 6\)
答え: \(\color{red}{x = 6}\)
元の方程式は左辺が無理式なので、両辺ともに正の値である必要があります。
\(2\) 乗することで一度その条件が無視されてしまうので、求めた解が元の式を満たすかどうかを最後に確認してください。
無理方程式の解き方② 同値変形で解く
次の例題を通して、無理方程式を同値変形によって解く方法を説明します。
方程式 \(\sqrt{2x − 3} = x − 3\) を解け。
無理方程式では、\(\sqrt{A} = B \iff B \geq 0\) かつ \(A = B^2\) という同値変形が成り立ちます。
「\(B \geq 0\) :両辺が正の値」「\(A = B^2\) :両辺を \(2\) 乗した式が成り立つ」ことを示せますね。
\(\sqrt{2x − 3} = x − 3\) より、
\(x − 3 \geq 0\) かつ \(2x − 3 = (x − 3)^2\)
\(x \geq 3\) かつ \((x − 2)(x − 6) = 0\)
よって
\(x = 6\)
答え: \(\color{red}{x = 6}\)
無理不等式の解き方① グラフを書く
次の例題を通して、無理不等式をグラフを書いて解く方法を説明します。
不等式 \(\sqrt{2x − 3} > x − 3\) を満たす \(x\) の値の範囲を求めよ。
\(y = \text{(左辺)}\) と \(y = \text{(右辺)}\) のグラフを書き、上下関係を調べます。
まずは、\(y = \text{(左辺)}\)、\(y = \text{(右辺)}\) とおいて番号をつけます。
不等式 \(\sqrt{2x − 3} > x − 3\) について、
\(\left\{\begin{array}{l} y = \sqrt{2x − 3}\ \text{…①}\\ y = x − 3\ \text{…②}\end{array}\right.\)
とおく。
①、②の交点を求めます。
無理関数にはあらかじめ定義域、値域があることに注意します。
①の定義域は \(\displaystyle x \geq \frac{3}{2}\)、値域は \(y \geq 0\)
よって、②が①と交点をもつのは、
\(x − 3 \geq 0\) すなわち \(x \geq 3\) の範囲
\(\sqrt{2x − 3} = x − 3\) について、両辺を \(2\) 乗すると
\(2x − 3 = (x − 3)^2\)
\(2x − 3 = x^2 − 6x + 9\)
\(x^2 − 8x + 12 = 0\)
\((x − 2)(x − 6) = 0\)
\(x = 2, 6\)
\(x \geq 3\) より、①と②は \(x = 6\) で交点をもち、このとき \(y = 3\)
交点がわかったら、グラフを書いて上下関係を調べます。
今回は、① > ② になるような \(x\) の範囲を求めればよいですね。
①、②のグラフは次のようになる。
したがって、①のグラフが②のグラフよりも上側にくるような \(x\) の値の範囲は
\(\displaystyle \frac{3}{2} \leq x < 6\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{3}{2} \leq x < 6}\)
グラフを書くときは、不等号の種類(\(<\) と \(\leq\)、\(>\) と \(\geq\))にも気を配りましょう。
\(=\) を含まない場合は、点を白丸にしておくとわかりやすいですね。
無理不等式の解き方② 同値変形で解く
参考までに、無理不等式を同値変形で求める方法を説明します。
不等式 \(\sqrt{2x − 3} > x − 3\) を満たす \(x\) の値の範囲を求めよ。
無理不等式の同値変形は不等号の向きや両辺の形に応じて次のようになります。
- \(\sqrt{A} < B\) \(\iff\) \(A \geq 0\) かつ \(B > 0\) かつ \(A < B^2\)
- \(\sqrt{A} > B\) \(\iff\) (\(B < 0\) かつ \(A \geq 0\)) または (\(B \geq 0\) かつ \(A > B^2\))
- \(\sqrt{A} > \sqrt{B}\) \(\iff\) \(A > B\) かつ \(B \geq 0\)
例題では真ん中の同値変形が使えますね。
不等式 \(\sqrt{2x − 3} > x − 3\) について、
\(\text{(左辺)} \geq 0\) より、\(\displaystyle x \geq \frac{3}{2}\)
(i) \(\text{(右辺)} \geq 0\) すなわち \(x \geq 3\) のとき
両辺を二乗しても不等号の向きは変わらないので、
\(2x − 3 > (x − 3)^2\)
\(2x − 3 > x^2 − 6x + 9\)
\(x^2 − 8x + 12 < 0\)
\((x − 2)(x − 6) < 0\)
\(2 < x < 6\)
\(x \geq 3\) より \(3 \leq x < 6\)
(ii) \(\text{(右辺)} < 0\) すなわち \(\displaystyle \frac{3}{2} \leq x < 3\) のとき
\(\text{(左辺)}\) は常に \(0\) 以上であるから、不等式は成り立つ。
(i), (ii) より、
\(\displaystyle \frac{3}{2} \leq x < 6\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{3}{2} \leq x < 6}\)
不等号の向きや場合分けなど気をつける部分が多いため丸暗記は危険です。
同値性を論理的に理解していないと使いこなせないので、グラフを書く方法を優先してください。
無理関数の計算問題
ここまでの知識を使って、分数関数の計算問題に挑戦しましょう。
計算問題①「\(y = −\sqrt{−2x + 4}\) のグラフ」
次の関数のグラフを書け。
\(y = −\sqrt{−2x + 4}\)
\(y = −\sqrt{−ax}\) 型のグラフですね。
無理関数のグラフを書くときは、ルート内外の符号をしっかりと確認して、正しい向きのグラフを書きましょう。
\(y = −\sqrt{−2(x − 2)}\) より、
定義域は \(x \leq 2\)、値域は \(y \leq 0\)
\(x = 0\) のとき \(y = −2\)
\(y = −\sqrt{−2x}\) のグラフを \(x\) 軸方向に \(2\) だけ平行移動したものであるから、グラフは次の通り。
答え:
計算問題②「無理関数の定義域を求める」
関数 \(y = \sqrt{4 − x}\) が \(a \leq x \leq b\) の範囲で \(1 \leq y \leq 2\) の値をとるように定数 \(a, b\) の値を求めよ。
グラフを書いてみると、範囲の条件を一目で理解できますよ。
\(y = \sqrt{4 − x} = \sqrt{−(x − 4)}\) であるから、
\(y = \sqrt{−x}\) のグラフを \(x\) 軸方向に \(4\) だけ平行移動したものである。
単調減少のグラフであるから、 \(a \leq x \leq b\) の範囲では \(x = a\) で最大、\(x = b\) で最小となる。
よって、\(1 \leq y \leq 2\) であるための条件は
\(\sqrt{4 − a} = 2\), \(\sqrt{4 − b} = 1\)
両辺を平方して
\(4 − a = 4\), \(4 − b = 1\)
したがって
\(a = 0, b = 3\)
答え: \(\color{red}{a = 0, b = 3}\)
計算問題③「不等式 \(\sqrt{x} + x < 6\) を解く」
不等式 \(\sqrt{x} + x < 6\) を満たす \(x\) の値の範囲を求めよ。
移項して左辺を無理関数だけにしてあげると、グラフで考えやすいですね。
\(\sqrt{x} + x < 6\) より \(\sqrt{x} < −x + 6\)
\(\left\{\begin{array}{l} y = \sqrt{x} \ (x \geq 0) \text{…①}\\ y = −x + 6 \ \text{…②}\end{array}\right.\)
とおくと、①よりも②が上側にくる \(x\) の値の範囲を求めればよい。
②が①と交点をもつのは、\(−x + 6 \geq 0\) すなわち \(x \leq 6\) の範囲である。
\(\sqrt{x} = −x + 6\) の両辺を二乗して
\(x = (−x + 6)^2\)
\(x^2 − 13x + 36 = 0\)
\((x − 4)(x − 9) = 0\)
\(x \leq 6\) より、①と②は \(x = 4\) で交点をもち、そのとき \(y = 2\)
よって、②のグラフが①のグラフよりも上側にくるような \(x\) の値の範囲は
\(0 \leq x < 4\)
答え: \(\color{red}{0 \leq x < 4}\)
無理関数の微分法【公式】
無理関数を微分するには、1. 無理式(累乗根)をべき乗(指数)に直し、2. 全体をべき乗の微分、3. べき乗の中身を微分します(合成関数の微分より)。
-
累乗根と指数
\(n\) を整数とすると、
\begin{align}\sqrt[n]{a} = a^{\frac{1}{n}} \ (a \geq 0)\end{align} -
べき乗の微分
\(p\) を有理数とすると、
\begin{align}(x^p)’ = px^{p − 1}\end{align} - 合成関数の微分
\(x\) の関数 \(f(x)\), \(g(x)\) について、
\begin{align}\{f(g(x))\}’ = f’(g(x)) g’(x)\end{align}
なお、根号の中身が一次式である無理関数の微分は非常によく登場するため、指数を介さずそのまま公式として覚えてしまってもよいかもしれません。
\(a \neq 0\) とする。
- \(\color{red}{\displaystyle (\sqrt{x})’ = \frac{1}{2\sqrt{x}}}\)
- \(\color{red}{\displaystyle \left( \frac{1}{\sqrt{x}} \right)’ = −\frac{1}{2x\sqrt{x}}}\)
- \(\color{red}{\displaystyle (\sqrt{ax + b})’ = \frac{a}{2\sqrt{ax + b}}}\)
- \(\color{red}{\displaystyle \left( \frac{1}{\sqrt{ax + b}} \right)’ = −\frac{a}{2(ax + b)\sqrt{ax + b}}}\)
ちなみに、途中計算は次のようになります。
\(\begin{align}(\sqrt{x})’ &= (x^{\frac{1}{2}})’ \\&= \frac{1}{2} x^{−\frac{1}{2}} \\&= \frac{1}{2\sqrt{x}}\end{align}\)
\(\begin{align} \left( \frac{1}{\sqrt{x}} \right)’ &= (x^{−\frac{1}{2}})’ \\&= −\frac{1}{2} x^{−\frac{3}{2}} \\&= −\frac{1}{2x\sqrt{x}}\end{align}\)
\((\sqrt{ax + b})’\)
\(\displaystyle = \{(ax + b)^{\frac{1}{2}}\}’\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} (ax + b)^{−\frac{1}{2}} \cdot (ax + b)’\)
\(\displaystyle = \frac{a}{2} (ax + b)^{−\frac{1}{2}}\)
\(\displaystyle = \frac{a}{2\sqrt{ax + b}}\)
\(\displaystyle \left( \frac{1}{\sqrt{ax + b}} \right)’\)
\(\displaystyle = \{(ax + b)^{−\frac{1}{2}}\}’\)
\(\displaystyle = −\frac{1}{2} (ax + b)^{−\frac{3}{2}} \cdot (ax + b)’\)
\(\displaystyle = −\frac{a}{2} (ax + b)^{−\frac{3}{2}}\)
\(\displaystyle = −\frac{a}{2(ax + b)\sqrt{ax + b}}\)
例題「無理関数を微分する」
例題を通して、無理関数を微分する方法を説明します。
次の関数の導関数を求めよ。
(1) \(y = \sqrt{x^2 + 4x + 1}\)
(2) \(\displaystyle y = \frac{4}{\sqrt{2x + 3}}\)
慣れるまでは、累乗根を指数に直してから微分しましょう。
根号の中身が \(x\) の関数ならば合成関数ですので、微分するときは (全体の微分) \(\bf{\times}\) (中身の微分) をすればよいですね。
(1)
\(y = (x^2 + 4x + 1)^{\frac{1}{2}}\) より、
\(\begin{align}\displaystyle y’ &= \frac{1}{2} (x^2 + 4x + 1)^{−\frac{1}{2}} \cdot (x^2 + 4x + 1)’\\&= \frac{1}{2\sqrt{x^2 + 4x + 1}} \cdot (2x + 4)\\&= \frac{x + 2}{\sqrt{x^2 + 4x + 1}}\end{align}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle y’ = \frac{x + 2}{\sqrt{x^2 + 4x + 1}}}\)
(2)
\(y = 4(2x + 3)^{−\frac{1}{2}}\) より、
\(\begin{align}\displaystyle y’ &= −\frac{4}{2} (2x + 3)^{−\frac{3}{2}} \cdot (2x + 3)’\\&= −2 (2x + 3)^{−\frac{3}{2}} \cdot 2\\&= −\frac{4}{(2x + 3)\sqrt{2x + 3}}\end{align}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle y’ = −\frac{4}{(2x + 3)\sqrt{2x + 3}}}\)
無理関数の積分法【公式】
無理関数を積分するには、1. 無理式(累乗根)をべき乗(指数)に直し、2. 関数全体とべき乗の中身の合成関数とみて、置換積分します。
- 累乗根と指数
\(n\) を整数とすると、
\begin{align}\sqrt[n]{a} = a^{\frac{1}{n}} \ (a \geq 0)\end{align} - べき乗の積分
\(p\) を有理数とすると、
\(p \neq −1\) のとき
\begin{align}\displaystyle \int x^p \ dx = \frac{1}{p + 1} x^{p + 1} + C\end{align}
\(p = −1\) のとき
\begin{align}\displaystyle \int x^{− 1} \ dx = \int \frac{1}{x} \ dx = \log |x| + C\end{align} - 置換積分
\(x = g(t)\) と置換できるとき、関数 \(f(x)\) の不定積分は
\begin{align} \int f(x) \ dx &= \int f(g(t)) \frac{dx}{dt} \ dt \\ &= \int f(g(t))g’(t) \ dt \end{align}
なお、根号の中身が一次式である無理関数は、中身の微分が定数になることから、置換するまでもなく積分できます。
微分と同様、指数を介さずそのまま公式として覚えてしまってもよいかもしれませんね。
\(a \neq 0\)、\(C\) は積分定数とする。
- \(\color{red}{\displaystyle \int \sqrt{x} \ dx = \frac{2}{3} x\sqrt{x} + C}\)
- \(\color{red}{\displaystyle \int \frac{1}{\sqrt{x}} \ dx = 2\sqrt{x} + C}\)
- \(\color{red}{\displaystyle \int \sqrt{ax + b} \ dx = \frac{2}{3a} (ax + b)\sqrt{ax + b} + C}\)
- \(\color{red}{\displaystyle \int \frac{1}{\sqrt{ax + b}} \ dx = \frac{2}{a} \sqrt{ax + b} + C}\)
(見切れる場合は横へスクロール)
ちなみに、途中計算は次のようになります。
\(\begin{align}\int \sqrt{x} \ dx &= \int x^{\frac{1}{2}} \ dx \\&= \frac{1}{\frac{3}{2}} x^{\frac{3}{2}} + C \\&= \frac{2}{3} x\sqrt{x} + C\end{align}\)
\(\begin{align}\int \frac{1}{\sqrt{x}} \ dx &= \int x^{−\frac{1}{2}} \ dx \\&= \frac{1}{\frac{1}{2}} x^{\frac{1}{2}} + C \\&= 2\sqrt{x} + C\end{align}\)
\(\displaystyle \int \sqrt{ax + b} \ dx\)
\(\displaystyle = \int (ax + b)^{\frac{1}{2}} \ dx\)
\(\displaystyle = \int \frac{1}{a} \cdot (ax + b)’(ax + b)^{\frac{1}{2}} \ dx\)
\(\displaystyle = \frac{1}{a} \cdot \frac{1}{\frac{3}{2}} (ax + b)^{\frac{3}{2}} + C\)
\(\displaystyle = \frac{2}{3a} (ax + b)\sqrt{ax + b} + C\)
\(\displaystyle \int \frac{1}{\sqrt{ax + b}} \ dx\)
\(\displaystyle = \int (ax + b)^{−\frac{1}{2}} \ dx\)
\(\displaystyle = \int \frac{1}{a} \cdot (ax + b)’(ax + b)^{−\frac{1}{2}} \ dx\)
\(\displaystyle = \frac{1}{a} \cdot \frac{1}{\frac{1}{2}} (ax + b)^{\frac{1}{2}} + C\)
\(\displaystyle = \frac{2}{a} \sqrt{ax + b} + C\)
例題「無理関数を積分する」
例題を通して、無理関数を積分する方法を説明します。
次の不定積分を求めよ。
(1) \(\displaystyle \int \frac{x}{\sqrt{2x + 1} − 1} \ dx\)
(2) \(\displaystyle \int (x + 1)\sqrt[4]{2x − 3} \ dx\)
(1) は、分母を有理化して式を簡単にしてみると、そのまま積分できます。
(2) は、根号部分全体を別の文字で置換してみましょう。
(1)
\(\displaystyle \frac{x}{\sqrt{2x + 1} − 1}\)
\(\displaystyle = \frac{x(\sqrt{2x + 1} + 1)}{(\sqrt{2x + 1})^2 − 1^2}\)
\(\displaystyle = \frac{x(\sqrt{2x + 1} + 1)}{2x}\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} (\sqrt{2x + 1} + 1)\)
よって、
\(\displaystyle \int \frac{x}{\sqrt{2x + 1} − 1} \ dx\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} \int (\sqrt{2x + 1} + 1) \ dx\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} \left\{ \frac{1}{2} \cdot \frac{2}{3} (2x + 1)^{\frac{3}{2}} + x \right\} + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{6} (2x + 1)\sqrt{2x + 1} + \frac{1}{2} x + C\)
答え: \(\displaystyle \color{red}{\frac{1}{6} (2x + 1)\sqrt{2x + 1} + \frac{1}{2} x + C}\)(\(C\) は積分定数)
(2)
\(\sqrt[4]{2x − 3} = t\) とおくと、
\(2x − 3 = t^4\) すなわち \(\displaystyle x = \frac{1}{2} (t^4 + 3)\) より
\(\displaystyle \frac{dx}{dt} = 2t^3\)
よって \(dx = 2t^3 \ dt\)
\(\begin{align} (x + 1)\sqrt[4]{2x − 3} &= \left( \frac{1}{2} t^4 + \frac{5}{2} \right)t \\&= \frac{1}{2} (t^5 + 5t)\end{align}\)
したがって
\(\displaystyle \int (x + 1)\sqrt[4]{2x − 3} \ dx\)
\(\displaystyle = \int \frac{1}{2} (t^5 + 5t) \cdot 2t^3 \ dt\)
\(\displaystyle = \int (t^8 + 5t^4) \ dt\)
\(\displaystyle = \frac{1}{9} t^9 + t^5 + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{9} t^5 (t^4 + 9) + C\)
\(\displaystyle = \frac{1}{9} (2x − 3)\sqrt[4]{2x − 3}(2x + 6) + C\)
\(\displaystyle = \frac{2}{9} (x + 3)(2x − 3)\sqrt[4]{2x − 3} + C\)
答え: \(\displaystyle \color{red}{\frac{2}{9} (x + 3)(2x − 3)\sqrt[4]{2x − 3} + C}\)(\(C\) は積分定数)
以上で無理関数の解説は終わりです!
はじめはとまどってしまう無理関数ですが、慣れてしまえば大したことはありません。
しっかりとマスターしておきましょう!