この記事では「三倍角の公式」について、語呂合わせによる覚え方や証明方法(導き方)、問題の解き方をわかりやすく解説していきます。
三倍角の公式を使いこなせるように、この記事を通してぜひマスターしてくださいね!
目次
三倍角の公式とは?
三倍角の公式とは、ある角の \(3\) 倍の角度の三角関数を求める公式です。
- 正弦(sin)
\begin{align}\color{red}{\sin3\theta = 3\sin\theta − 4\sin^3\theta}\end{align} - 余弦(cos)
\begin{align}\color{red}{\cos3\theta = −3\cos\theta + 4\cos^3\theta}\end{align} - 正接(tan)
\begin{align}\displaystyle \tan3\theta = \frac{\tan^3\theta − 3\tan\theta}{3\tan^2\theta − 1}\end{align}
\(3\theta\)(\(\theta\) の \(3\) 倍)の三角関数を、\(\theta\) の三角関数で表すことができていますね。
\(\sin3\theta\) が \(\sin\theta\) だけの式に、\(\cos3\theta\) が \(\cos\theta\) だけの式で表せるのが特徴的です。
\(\tan\) の三倍角の公式を使う問題は高校数学ではほとんどないので、\(\sin\) と \(\cos\) の公式を使えるようになればOKです!
三倍角の公式の覚え方【語呂合わせ】
ここでは、\(\sin\) と \(\cos\) の三倍角の公式の語呂合わせを紹介します。
- \(\sin\) の三倍角公式
三振取って四三振
\begin{align}\sin3\theta = \color{skyblue}{3\sin\theta} \color{red}{−} \color{orange}{4\sin^3\theta}\end{align}
- \(\cos\) の三倍角公式
まだ未婚、ヨーコ参上
\begin{align}\cos3\theta = \color{red}{−}\color{limegreen}{3\cos\theta} \color{orange}{+ 4\cos^3\theta}\end{align}
三倍角の公式は試験中に導出すると少々時間がかかるため、語呂合わせで覚えるのもひとつの手です。
\(\sin\) の公式だけをゴロで暗記して、\(\cos\) の公式では符号を逆にする、と覚えておいてもいいですね。
三倍角の公式の導き方【証明】
三倍角の公式は、加法定理と二倍角の公式を使って導けます。
- 加法定理
\begin{align}&\sin(\alpha + \beta) = \sin\alpha\cos\beta + \cos\alpha\sin\beta \\ &\cos(\alpha + \beta) = \cos\alpha\cos\beta − \sin\alpha\sin\beta\end{align} - 二倍角の公式
\begin{align}&\sin2\theta = 2\sin\theta\cos\theta \\ &\cos2\theta = 1 − 2\sin^2\theta = 2\cos^2\theta − 1\end{align}
「\(3\theta = \theta + 2\theta\)」とおいて加法定理で展開し、\(2\theta\) の部分を二倍角の公式でさらに展開します。最後に三角比の相互関係で三角関数の種類を統一し、整理します。
sin の三倍角の公式の証明
(見切れる場合は横へスクロール)
\(\sin3\theta\)
\(= \color{orange}{\sin(\theta + 2\theta)}\)
\(= \color{orange}{\sin\theta}\color{salmon}{\cos2\theta}\color{orange}{ + \cos\theta}\color{salmon}{\sin2\theta}\)
(加法定理)
\(= \sin\theta(\color{salmon}{1 − 2\sin^2\theta}) + \cos\theta \cdot \color{salmon}{2\sin\theta\cos\theta}\)
(二倍角の定理)
\(= \sin\theta − 2\sin^3\theta + 2\sin\theta\color{skyblue}{\cos^2\theta}\)
\(= \sin\theta − 2\sin^3\theta + 2\sin\theta(\color{skyblue}{1 − \sin^2\theta})\)
(三角比の相互関係)
\(= \sin\theta − 2\sin^3\theta + 2\sin\theta − 2\sin^3\theta\)
\(= \color{red}{3\sin\theta − 4\sin^3\theta}\)
(証明終わり)
cos の三倍角の公式の証明
(見切れる場合は横へスクロール)
\(\cos3\theta\)
\(= \color{orange}{\cos(\theta + 2\theta)}\)
\(= \color{orange}{\cos\theta}\color{salmon}{\cos2\theta} \color{orange}{ − \sin\theta}\color{salmon}{\sin2\theta}\)
(加法定理)
\(= \cos\theta(\color{salmon}{2\cos^2\theta − 1}) − \sin\theta \cdot \color{salmon}{2\sin\theta\cos\theta}\)
(二倍角の定理)
\(= 2\cos^3\theta − \cos\theta − 2\color{skyblue}{\sin^2\theta}\cos\theta\)
\(= 2\cos^3\theta − \cos\theta − 2(\color{skyblue}{1 − \cos^2\theta})\cos\theta\)
(三角比の相互関係)
\(= 2\cos^3\theta − \cos\theta − 2\cos\theta + 2\cos^3\theta\)
\(= \color{red}{−3\cos\theta + 4\cos^3\theta}\)
(証明終わり)
三倍角の公式の証明そのものが問題として出ることもあるので、一連の流れは理解しておきましょう。
三倍角の公式の使い方
三倍角の公式は、次のような場面で役に立ちます。
- 値が既知の三角関数を使って、その三倍角の三角関数の値を求めたい
→ 練習問題①、練習問題② - 三角関数の角度をそろえたり、次数を下げたりしたい
(三角関数の方程式・不等式・微分積分の問題など)
→ 練習問題③(数IIIの内容)
対応する練習問題を解いて、三倍角の公式の使い方をマスターしましょう。
練習問題①「sin 3α, cos 3α を求める」
\(\displaystyle \cos\alpha = \frac{1}{3}\) のとき、\(\sin3\alpha\), \(\cos3\alpha\) を求めよ。ただし、\(\displaystyle \frac{3}{2}\pi < \alpha < 2\pi\) とする。
先に \(\sin\alpha\) の値を求め、それから三倍角の公式を使っていきます。
\(\alpha\) の範囲に注意して、符号を間違えないようにしましょう。
\(\displaystyle \frac{3}{2}\pi < \alpha < 2\pi\) より、\(\sin\alpha < 0\)
\(\sin^2\alpha + \cos^2\alpha = 1\) より、
\(\begin{align} \sin^2\alpha &= 1 − \cos^2\alpha \\ &= 1 − \left( \frac{1}{3} \right)^2 \\ &= 1 − \frac{1}{9} \\ &= \frac{8}{9} \end{align}\)
\(\sin\alpha < 0\) より
\(\displaystyle \sin\alpha = −\frac{2\sqrt{2}}{3}\)
三倍角の公式より
\(\begin{align} \sin3\alpha &= 3\sin\alpha − 4\sin^3\alpha \\ &= 3 \left( −\frac{2\sqrt{2}}{3} \right) − 4 \left( −\frac{2\sqrt{2}}{3} \right)^3 \\ &= −2\sqrt{2} + \frac{64\sqrt{2}}{27} \\ &= \frac{−54\sqrt{2} + 64\sqrt{2}}{27} \\ &= \frac{10\sqrt{2}}{27} \end{align}\)
\(\begin{align} \cos3\alpha &= −3\cos\alpha + 4\cos^3\alpha \\ &= −3 \cdot \frac{1}{3} + 4 \left( \frac{1}{3} \right)^3 \\ &= −1 + \frac{4}{27} \\ &= \frac{−27 + 4}{27} \\ &= −\frac{23}{27} \end{align}\)
答え:
\(\color{red}{\displaystyle \sin3\alpha = \frac{10\sqrt{2}}{27}}\)、\(\color{red}{\displaystyle \cos3\alpha = −\frac{23}{27}}\)
練習問題②「sin 3θ, cos 3θ, tan 3θ を求める」
\(\displaystyle 0 < \theta < \frac{\pi}{2}\), \(\displaystyle \sin\theta = \frac{3}{5}\) のとき、\(\sin3\theta\), \(\cos3\theta\), \(\tan3\theta\) を求めよ。
まず \(\cos\theta\) の値を求め、それから三倍角の公式を使っていきます。
\(\tan3\theta\) は、三角比の相互関係から求められますね。
\(\displaystyle 0 < \theta < \frac{\pi}{2}\) より、\(\cos\theta > 0\)
\(\sin^2\theta + \cos^2\theta = 1\) より、
\(\begin{align} \cos^2\theta &= 1 − \sin^2\theta \\ &= 1 − \left( \frac{3}{5} \right)^2 \\ &= 1 − \frac{9}{25} \\ &= \frac{16}{25} \end{align}\)
\(\cos\theta > 0\) より
\(\displaystyle \cos\theta = \frac{4}{5}\)
三倍角の公式より
\(\begin{align} \sin3\theta &= 3\sin\theta − 4\sin^3\theta \\ &= 3 \cdot \frac{3}{5} − 4 \left( \frac{3}{5} \right)^3 \\ &= \frac{9}{5} − \frac{108}{125} \\ &= \frac{225 − 108}{125} \\ &= \frac{117}{125} \end{align}\)
\(\begin{align} \cos3\theta &= −3\cos\theta + 4\cos^3\theta \\ &= −3 \cdot \frac{4}{5} + 4 \left( \frac{4}{5} \right)^3 \\ &= −\frac{12}{5} + \frac{256}{125} \\ &= \frac{−300 + 256}{125} \\ &= −\frac{44}{125} \end{align}\)
三角比の相互関係より
\(\begin{align} \tan3\theta &= \frac{\sin3\theta}{\cos3\theta} \\ &= \frac{\frac{117}{125}}{−\frac{44}{125}} \\ &= −\frac{117}{44} \end{align}\)
答え:
\(\color{red}{\displaystyle \sin3\theta = \frac{117}{125}}\)、\(\color{red}{\displaystyle \cos3\theta = −\frac{44}{125}}\)、\(\color{red}{\displaystyle \tan3\theta = −\frac{117}{44}}\)
練習問題③「\(\sin^3x\) の不定積分」
この問題には数IIIで習う三角関数の積分の知識が必要です。
不定積分 \(\displaystyle \int \sin^3x \ dx\) を求めよ。
三角関数とべき乗関数の合成関数は、積分のときには避けたい形です。
ここでは、三倍角の公式を \(\sin^3\theta = \displaystyle \frac{1}{4}(3\sin\theta − \sin3\theta)\) に変形して使うと、次数が下がって積分しやすくなります。
三倍角の公式 \(\sin3\theta = 3\sin\theta − 4\sin^3\theta\) より
\(\sin^3\theta = \displaystyle \frac{1}{4}(3\sin\theta − \sin3\theta)\) であるから、
\(\displaystyle \int \sin^3x \ dx\)
\(= \displaystyle \frac{1}{4}\int (3\sin\theta − \sin3\theta) \ dx\)
\(= \displaystyle \frac{1}{4}\left(−3\cos\theta + \frac{1}{3}\cos3\theta \right) + C\)
\(= \displaystyle −\frac{3}{4}\cos\theta + \frac{1}{12}\cos3\theta + C\)
答え:
\(\color{red}{\displaystyle −\frac{3}{4}\cos\theta + \frac{1}{12}\cos3\theta + C}\)(\(C\) は積分定数)
以上で三倍角の公式の解説は終わりです。
倍角系の公式はたくさんあって大変ですが、それぞれの特色を理解してぜひマスターしてくださいね!
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