この記事では「微分積分」とは何かをざっくりと説明し、公式一覧を紹介してきます。
微分積分学の基本定理も紹介していくので、ぜひ理解を深めてくださいね!
目次
微分積分とは?
ここでは、微分・積分のイメージをつけていきましょう。
微分とは、あるものの微小(瞬間的)な変化を追うものです。
一方、積分とは、あるものの微小(瞬間的)な変化の積み重ねを追うものです。
例えば、動く車を考えます。
動くということは、「位置」が変わり続けているともいえます。
瞬間的な位置変化(速度)を追うのが「微分」、変わり続ける位置変化の積み重ね(距離)を追うのが「積分」ということですね。
距離の情報(ある時間にどの位置にいたか)がわかっていれば、特定の瞬間における速度を求められます。これが「微分」です。
また、速度の情報(ある瞬間にどのくらい位置が変化したか)がわかっていれば、特定の時間内に走った距離を求められます。これが「積分」です。
重要な \(4\) つの用語、「微分係数」「導関数」「不定積分」「定積分」のイメージも、合わせてつかんでおきましょう。
各用語については個別の記事で紹介しているので、ぜひ学習してみてください。
微分積分の記号
続いて、微分積分で使う記号について説明していきます。
Δ (デルタ) と d (ディー)
差や変化量を表すのに、「Δ (デルタ)」や「d (ディー)」という記号を用います。
- \(\bf{\Delta}\) (デルタ)
差(ある点から別の点への変化量) - \(\bf{d}\) (ディー)
限りなく微小な差(ある点から限りなく近い別の点への変化量)
Δy/Δx (差分) と dy/dx (微分)
\(x\) に対する \(y\) の変化量 \(\displaystyle \frac{\Delta y}{\Delta x}\) を「差分」または「平均変化率」といいます。
\(\displaystyle \frac{\Delta y}{\Delta x}\) の変化量を限りなく \(0\) に近づけていくと、\(\displaystyle \frac{dy}{dx}\)、すなわち「微分」が求められます。
- 差分 \(\bf{\displaystyle \frac{\Delta y}{\Delta x}}\)
\(x\) の変化量に対する \(y\) の変化量の割合。「平均変化率」とも呼ばれる。 - 微分 \(\bf{\displaystyle \frac{dy}{dx}}\)
ある点における \(y\) の \(x\) に対する瞬間の変化率。
\(\displaystyle \frac{\Delta y}{\Delta x}\) の変化量を限りなく \(0\) に近づけた値。
\(y = f(x)\) において、
\(\displaystyle \frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{f(x + \Delta x) − f(x)}{\Delta x}\)
\(\begin{align}\displaystyle \frac{dy}{dx}&= \lim_{\Delta x \to 0} \frac{\Delta y}{\Delta x}\\&= \lim_{\Delta x \to 0} \frac{f(x + \Delta x) − f(x)}{\Delta x}\end{align}\)
微分を表す記号
微分は「\(\displaystyle \frac{dy}{dx}\)」のように表すこともあれば、「\(y’\)」とダッシュをつけて表すこともあります。
関数 \(y = f(x)\) を \(x\) について微分することは、次のように表せる。
- \(\displaystyle \frac{dy}{dx}\)
- \(\displaystyle \frac{d}{dx} f(x)\)
- \(y’\)
- \(f’(x)\)
積分を表す記号
積分は、記号「\(\int\)(インテグラル)」と「\(d\)」を用いて表します。
関数 \(y = f(x)\) を \(x\) について積分することは、次のように表せる。
\begin{align} \int f(x) \ dx \end{align}
- \(\int\)(インテグラル)
総和(合計)を求めること。 - \(dx\)
変数 \(x\) の微小(瞬間的な)変化量。
微分の公式一覧
ここでは、微分の公式を一覧でまとめていきます。
それぞれの詳しい内容については、関連記事を確認してください。
微分の定義
微分の定義に関わる公式は次の通りです。
- 平均変化率
\(\displaystyle \frac{f(b) − f(a)}{b − a}\) \((b \neq a)\) - 微分係数
\(\begin{align} f’(a) &= \lim_{b \to a} \frac{f(b) − f(a)}{b − a} \\ &= \lim_{h \to 0} \frac{f(a + h) − f(a)}{h} \end{align}\) - 導関数
\(\displaystyle f’(x) = \lim_{h \to 0} \frac{f(x + h) − f(x)}{h}\)
微分の性質
微分の性質に関する計算公式です。
\(\alpha\), \(\beta\) を定数とすると、\(x\) の関数 \(f(x)\), \(g(x)\) について以下が成り立つ。
- 定数倍
\((\alpha f(x))’ = \alpha f’(x)\) - 和と差
\((f(x) \pm g(x))’ = f’(x) \pm g’(x)\) - 線形性
\((\alpha f(x) \pm \beta g(x))’ = \alpha f’(x) \pm \beta g’(x)\) - 積の微分
\((f(x)g(x))’ = f’(x)g(x) + f(x)g’(x)\) - 商の微分
\(\displaystyle \left( \frac{f(x)}{g(x)} \right)’ = \frac{f’(x)g(x) − f(x)g’(x)}{\{g(x)\}^2}\)
特に \(f(x) = 1\) のとき
\(\displaystyle \left( \frac{1}{g(x)} \right)’ = −\frac{g’(x)}{\{g(x)\}^2}\) - 合成関数の微分
\(\{f(g(x))\}’ = f’(g(x))g’(x)\)
さまざまな関数の微分公式
関数の種類に応じた微分公式が存在します。
- 定数の微分
\((k)’ = 0\)(\(k\) は実数) - べき乗の微分
\((x^p)’ = px^{p − 1}\)(\(p\) は有理数) - 一次式のべき乗の微分
\(\{(ax + b)^n\}’ = an(ax + b)^{n − 1}\) - 三角関数の微分
\((\sin x)’ = \cos x\)
\((\cos x)’ = −\sin x\)
\(\displaystyle (\tan x)’ = \frac{1}{\cos^2 x}\)
\(\displaystyle \left(\frac{1}{\tan x}\right)’ = −\frac{1}{\sin^2 x}\) - 指数関数の微分
\((e^x)’ = e^x\)
\(\displaystyle (a^x)’ = \frac{a^x}{\log a}\)(ただし、\(a > 0\), \(a \neq 1\)) - 対数関数の微分
\(\displaystyle (\log x)’ = \frac{1}{x}\)
(\(\displaystyle \log_a x)’ = \frac{1}{x \log a}\)(ただし、\(a > 0\), \(a \neq 1\))
積分の公式一覧
ここでは、積分の公式を一覧でまとめていきます。
それぞれの詳しい内容については、関連記事を確認してください。
不定積分の定義
不定積分の定義式です。
\(F’(x) = f(x)\) のとき、
\begin{align}\displaystyle \int f(x) \ dx = F(x) + C\end{align}
(\(C\) は積分定数)
定積分の定義
定積分の定義式です。
\(F’(x) = f(x)\) のとき、
\begin{align} \int_a^b f(x) \ dx &= \left[F(x)\right]_a^b \\ &= F(b) − F(a) \end{align}
積分の性質
積分の性質に関する計算公式です(不定積分、定積分のどちらでも成り立ちます)。
\(\alpha\), \(\beta\) を定数とすると、\(x\) の関数 \(f(x)\), \(g(x)\) について以下が成り立つ。
- 定数倍
\(\displaystyle \int \alpha f(x) \ dx = \alpha \int f(x) \ dx\) - 和と差
\(\begin{align}\displaystyle \int \{f(x) &\pm g(x)\} \ dx \\&= \int f(x) \ dx \pm \int g(x) \ dx\end{align}\) - 線形性
\(\begin{align}\displaystyle \int \{\alpha f&(x) \pm \beta g(x)\} dx \\&= \alpha \int f(x) \ dx \pm \beta \int g(x) \ dx\end{align}\)
また、定積分特有の性質もあります。
- 定積分の値と積分変数
\(\displaystyle \int_a^b f(x) \ dx = \int_a^b f(t) \ dt\) - 積分区間の性質
\(\displaystyle \int_a^a f(x) \ dx = 0\)
\(\displaystyle \int_a^b f(x) \ dx = −\int_b^a f(x) \ dx\)
\(\begin{align}\displaystyle \int_a^b f(&x) \ dx \\&= \int_a^c f(x) \ dx + \int_c^b f(x) \ dx\end{align}\)
さまざまな関数の積分公式
関数の種類に応じた積分公式が存在します。
不定積分の形で公式を示していますが、定積分でも成り立ちます。
積分定数を \(C\) とする。
- 定数の積分
\(\displaystyle \int k \ dx = kx + C\)(\(k\) は \(0\) 以外の実数) - べき乗の積分
- \(n \neq −1\) のとき
\(\displaystyle \int x^n \ dx = \frac{1}{n + 1} x^{n + 1} + C\) - \(n = −1\) のとき
\(\displaystyle \int x^{− 1} dx = \int \frac{1}{x} \ dx = \log |x| + C\)
- \(n \neq −1\) のとき
- 一次式のべき乗の積分
\(\displaystyle \int (ax + b)^n \ dx = \frac{(ax + b)^{n + 1}}{a(n + 1)} + C\) - 三角関数の積分
\(\displaystyle \int \sin x \ dx = −\cos x + C\)
\(\displaystyle \int \cos x \ dx = \sin x + C\)
\(\displaystyle \int \tan x \ dx = −\log |\cos x| + C\)
\(\displaystyle \int \frac{1}{\cos^2 x} \ dx = \tan x + C\)
\(\displaystyle \int \frac{1}{\sin^2 x} \ dx = −\frac{1}{\tan x} + C\) - 指数関数の積分
\(\displaystyle \int e^x \ dx = e^x + C\)
\(\displaystyle \int a^x \ dx = \frac{a^x}{\log a} + C\) \((a > 0\), \(a \neq 1)\) - 対数関数の積分
\(\displaystyle \int \log x \ dx = x\log x − x + C\)
積分の計算テクニック
積分にはいくつかの重要な計算テクニックが存在します。
積分定数を \(C\) とする。
- 置換積分法
\(x = g(t)\) と置換できるとき、
\(\begin{align}\int f(x) \,dx &= \int f(g(t)) \frac{dx}{dt} \,dt \\ &= \int f(g(t))g’(t) \,dt \end{align}\) - 部分積分法
\(\displaystyle \int f(x)g'(x) \ dx \) \(\displaystyle = f(x)g(x) − \int f'(x)g(x) \ dx\) - 区分求積法
\(\begin{align}\lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{k = 1}^n f \left( \frac{k}{n} \right) = \int_0^1 f(x) \,dx \end{align}\) - 偶関数・奇関数の定積分
\(f(x)\) が偶関数のとき \(\begin{align}\displaystyle \int_{−a}^a f(x) \, dx = 2 \int_0^a f(x) \, dx\end{align}\)
\(f(x)\) が奇関数のとき \(\begin{align}\displaystyle \int_{−a}^a f(x) \, dx = 0\end{align}\)
微分積分学の基本定理
微分積分学の基本定理とは、「微分と積分が互いに逆の操作・演算である」ことを主張した定理です。
任意の連続関数 \(y = f(x)\) と定数 \(a\) に対して、\(\displaystyle \int_a^x f(t) \ dt\) を \(x\) の関数として微分すると、その導関数は \(y = f(x)\) になる。
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \frac{d}{dx} \int_a^x f(t) \ dt = f(x)}\end{align}
また、関数 \(y = f(x)\) の導関数 \(y = f’(x)\) が連続であるとき、
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \int_a^x f’(t) \ dt = f(x) − f(a)}\end{align}
今でこそ微分と積分は対をなす演算であると当たり前に教わりますが、かつては何の関係もない演算だと考えられていました。
この定理は、世紀の大発見だったわけですね。
積分は複雑な図形の面積を求める方法(求積法)として、微分は運動する物体の軌跡変化(例:砲丸の弾道計算など)を求める方法としてそれぞれ発展していきました。
\(17\) 世紀後半になって、ニュートンやライプニッツが微分積分学の基本定理を発見します。
特にニュートンは、運動の変化量を考える過程で微分積分の関係に気づきました。
記事の最初に確認したイメージを、ニュートンは考えていたわけですね。
以上で説明は終わりです。
微分積分は、天才的な学者たちが何百年も試行錯誤してようやく確立された学問です。
洗練された学問である「微分積分」をいきなり習う私たちが、その難しさにとまどってしまうのはしかたのないことです。
とはいえ、とても奥深く、世の中のいろんなところで活躍している学問なので、どうか嫌がらず、楽しく勉強していってくださいね!