この記事では、「内接円」についてできるだけわかりやすく解説していきます。
内接円の半径の公式や求め方、内接円の性質についても説明していくので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
内接円とは?
内接円とは、ある多角形の内側にあって、すべての辺に接する円です。
三角形の内接円ならば、その三角形の \(3\) つの辺すべてに接する円のことです。
四角形ならば \(4\) つすべて、五角形なら \(5\) つすべての辺に接する円、といった具合です。
\(1\) つの多角形について、内接円は必ず \(1\) つに定まります。
三角形の内接円の半径の公式
次に、三角形の内接円の半径を求める公式を確認しましょう。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) の面積を \(S\)、\(3\) つの角 \(\mathrm{A}\), \(\mathrm{B}\), \(\mathrm{C}\) に向かい合う辺の長さをそれぞれ \(a\), \(b\), \(c\)、その内接円の半径を \(r\) とすると、
\begin{align}\color{red}{\displaystyle r = \frac{2S}{a + b + c}}\end{align}
三角形の内接円の半径は公式化されていますが、四角形以上の多角形では別の方法で求める必要があります。
内接円の性質や、多角形の性質を利用して求めることが多いです。
公式の証明
なぜ内接円の半径が上記の公式で求められるのかは、\(\triangle \mathrm{ABC}\) を内心 \(\mathrm{I}\)(内接円の中心)で \(3\) つに分割してみるとわかります。
三角形 \(\triangle \mathrm{ABC}\) の内心を \(\mathrm{I}\) とおくと、
\(\triangle \mathrm{ABC} = \triangle \mathrm{IAB} + \triangle \mathrm{IBC} + \triangle \mathrm{ICA}\)
と分割できる。
ここで、内接円の半径を \(r\) とおくと、\(r\) は分割した三角形の高さに相当するから
\(\left\{\begin{array}{l} \triangle \mathrm{IAB} = \displaystyle \frac{1}{2}cr\\\triangle \mathrm{IBC} = \displaystyle \frac{1}{2}ar \\\triangle \mathrm{ICA} = \displaystyle \frac{1}{2}br\end{array}\right.\)
よって、三角形 \(\triangle \mathrm{ABC}\) の面積 \(S\) は
\(\begin{align}S &= \displaystyle \frac{1}{2}cr + \frac{1}{2}ar + \frac{1}{2}br \\&= \displaystyle \frac{1}{2}r(a + b + c)\end{align}\)
したがって、
\(\displaystyle r = \frac{2S}{a + b + c}\)
(証明終わり)
三角形の内接円の半径の求め方
それでは、三角形の内接円の半径の求め方を説明します。
問題で与えられている条件によって、いくつかの求め方があります。
① 直角三角形の場合
直角三角形の場合、内接円の半径は \(2\) 通りの方法で求められます。
\(3\) 辺の長さがそれぞれ \(3\), \(4\), \(5\) である直角三角形の内接円の半径 \(r\) を求めよ。
【手順 1】直角をなす \(2\) 辺と内接円の中心がなす正方形に注目する
直角三角形の頂点、内接円の中心、各辺と内接円との接点に次のように記号を振る。
四角形 \(\mathrm{IDCE}\) は \(1\) 辺の長さが \(r\) の正方形である。
【手順 2】各頂点から接点までの長さを \(r\) で表す
円の外にある点から引いた \(2\) 本の接線の長さは等しいので、各頂点から接点までの長さは次のように表せる。
【手順 3】斜辺の長さを \(r\) で表す
したがって、斜辺 \(\mathrm{AB}\) について
\(\begin{align}\mathrm{AB} &= \mathrm{AF} + \mathrm{FB} \\&= \mathrm{AE} + \mathrm{BD} \\&= (3 − r) + (4 − r) \\&= 7 − 2r\end{align}\)
\(\mathrm{AB} = 5\) であるから、
\(5 = 7 − 2r\)
\(2r = 2\)
\(r = 1\)
答え: \(r = 1\)
- 三角形の面積公式
\begin{align}S = \displaystyle \frac{1}{2} \times (\text{底辺}) \times (\text{高さ})\end{align} - 三角形の内接円の半径の公式
\begin{align} r = \displaystyle \frac{2S}{a + b + c}\end{align}
【手順 1】三角形の面積を求める
直角三角形の面積を \(S\) とおくと、
\(S = \displaystyle \frac{1}{2} \cdot 3 \cdot 4 = 6\)
【手順 2】内接円の半径の公式に当てはめる
よって、内接円の半径 \(r\) は
\(\begin{align}\displaystyle r &= \frac{2S}{a + b + c} \\&= \frac{2 \cdot 6}{3 + 4 + 5} \\&= \frac{2 \cdot 6}{12} \\&= 1\end{align}\)
答え: \(r = 1\)
② 3 辺の長さと面積がわかる場合
三角形の \(3\) 辺の長さと面積がわかっている(あるいはすぐにわかる)場合は、内接円の半径の公式がすぐに使えます。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(a = 4\), \(b = 7\), \(c = 9\)、面積 \(S = 6\sqrt{5}\) のとき、内接円の半径 \(r\) を求めなさい。
三角形の内接円の半径の公式
\begin{align} r = \displaystyle \frac{2S}{a + b + c}\end{align}
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、内接円の半径の公式より、
\(\begin{align} r &= \frac{2S}{a + b + c} \\ &= \frac{2 \cdot 6\sqrt{5}}{4 + 7 + 9} \\ &= \frac{12\sqrt{5}}{20} \\ &= \frac{3\sqrt{5}}{5} \end{align}\)
答え: \(\displaystyle \frac{3\sqrt{5}}{5}\)
③ 3 辺の長さだけがわかる場合
三角形の \(3\) 辺の長さだけがわかっている場合、まず三角形の面積を求め、そのあとで内接円の半径の公式に当てはめます。
\(3\) 辺の長さが \(a = 5\), \(b = 6\), \(c = 3\) の \(\triangle \mathrm{ABC}\) における内接円の半径 \(r\) を求めよ。
このとき、面積の求め方には \(2\) 通りがあります。
- 余弦定理(変形バージョン)
\begin{align}\cos \mathrm{A} = \frac{b^2 + c^2 − a^2}{2bc}\end{align} - 三角比の相互関係
\begin{align}\sin^2 \mathrm{A} + \cos^2 \mathrm{A} = 1\end{align} - 三角比を用いた三角形の面積公式
\begin{align} S = \frac{1}{2} bc \sin \mathrm{A}\end{align} - 三角形の内接円の半径の公式
\begin{align} r = \displaystyle \frac{2S}{a + b + c}\end{align}
【手順 1】余弦定理である角の余弦(\(\cos\))を求める
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、余弦定理より
\(\begin{align}\cos \mathrm{A} &= \frac{b^2 + c^2 − a^2}{2bc} \\&= \frac{6^2 + 3^2 − 5^2}{2 \cdot 6 \cdot 3} \\&= \frac{36 + 9 − 25}{2 \cdot 6 \cdot 3} \\&= \frac{20}{2 \cdot 6 \cdot 3} \\&= \frac{5}{9}\end{align}\)
【手順 2】三角比の相互関係から余弦(\(\cos\))を正弦(\(\sin\))に変換する
\(\sin^2 \mathrm{A} + \cos^2 \mathrm{A} = 1\) より
\(\begin{align} \sin^2 \mathrm{A} &= 1 − \cos^2 \mathrm{A}\\ &= 1 − \left(\frac{5}{9} \right)^2\\ &= 1 − \frac{25}{81} \\ &= \frac{56}{81} \end{align}\)
\(0^\circ < \angle \mathrm{A} < 180^\circ\) より、\(\sin \mathrm{A} > 0\) であるから
\(\displaystyle \sin \mathrm{A} = +\sqrt{\frac{56}{81}} = \frac{2\sqrt{14}}{9}\)
【手順 3】三角比を用いた三角形の面積公式で面積を求める
\(\triangle \mathrm{ABC}\) の面積を \(S\) とおくと、
\(\begin{align}S &= \displaystyle \frac{1}{2} bc \sin \mathrm{A} \\&= \displaystyle \frac{1}{2} \cdot 6 \cdot 3 \cdot \frac{2\sqrt{14}}{9} \\&= 2\sqrt{14}\end{align}\)
【手順 4】内接円の半径の公式に当てはめる
内接円の半径 \(r\) は
\(\begin{align} r &= \frac{2S}{a + b + c} \\ &= \frac{2 \cdot 2\sqrt{14}}{5 + 6 + 3} \\ &= \frac{2 \cdot 2\sqrt{14}}{14} \\ &= \frac{2\sqrt{14}}{7} \end{align}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{2\sqrt{14}}{7}}\)
-
ヘロンの公式
\begin{align}S = &\sqrt{s(s − a)(s − b)(s − c)} \\ \displaystyle &s = \frac{a + b + c}{2}\end{align} - 三角形の内接円の半径の公式
\begin{align} r = \displaystyle \frac{2S}{a + b + c}\end{align}
【手順 1】ヘロンの公式で三角形の面積を求める
\(\triangle \mathrm{ABC}\) の面積 \(S\) は、ヘロンの公式より
\(S = \sqrt{s(s − a)(s − b)(s − c)}\)
\(\begin{align} s &= \frac{a + b + c}{2} \\ &= \frac{5 + 6 + 3}{2} \\ &= 7 \end{align}\)
よって
\(\begin{align} S &= \sqrt{7(7 − 5)(7 − 6)(7 − 3)} \\ &= \sqrt{7 \cdot 2 \cdot 1 \cdot 4} \\ &= 2\sqrt{14} \end{align}\)
【手順 2】内接円の半径の公式に当てはめる
内接円の半径 \(r\) は
\(\begin{align} r &= \frac{2S}{a + b + c} \\ &= \frac{2 \cdot 2\sqrt{14}}{5 + 6 + 3} \\ &= \frac{2 \cdot 2\sqrt{14}}{14} \\ &= \frac{2\sqrt{14}}{7} \end{align}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle \frac{2\sqrt{14}}{7}}\)
なお、ヘロンの公式は発展的な内容なので、学校であまり深く教わらない人もいるかもしれませんね。
【求め方 2】も知っておくと便利ではありますが、まずは基本的な【求め方 1】をしっかりと身につけておきましょう。
内接円の性質
内接円には、\(2\) つの重要な性質があります。
性質① 内心と角の二等分線
多角形の各頂点から内角の二等分線を引くと、必ず \(1\) 点で交わります。その交点が内接円の中心(内心)です。
性質② 内心と各辺との距離
多角形の各辺から内心までの距離が、内接円の半径の長さです。ゆえに、長さはすべて同じです。
内接円の計算問題
最後に、内接円が関係するいくつかの計算問題に挑戦してみましょう。
計算問題①「面積比を r で表す」
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(a = 5\), \(b = 4\), \(c = 3\)、内接円の内心が \(\mathrm{O}\)、半径が \(r\) のとき、次の問いに答えよ。
(1) \(\triangle \mathrm{ABO}\) の面積 \(S_1\) を \(r\) を用いて表せ。
(2) \(\triangle \mathrm{BCO}\) の面積 \(S_2\) を \(r\) を用いて表せ。
(3) \(\triangle \mathrm{CAO}\) の面積 \(S_3\) を \(r\) を用いて表せ。
(4) \(\triangle \mathrm{ABC}\) の内接円の半径 \(r\) を求めよ。
\(\triangle \mathrm{ABC}\) の面積は、\(\triangle \mathrm{ABC}\) を \(3\) つに分けた面積の和と等しいという式にもっていくと、答えが出てきます。
(1) \(\triangle \mathrm{ABO}\) において、底辺を \(c\) とすると、高さは \(r\) となる。
よって、
\(\begin{align} S_1 &= \frac{1}{2} cr \\ &= \frac{1}{2} \cdot 3 \cdot r \\ &= \frac{3}{2} r \end{align}\)
答え: \(\displaystyle \frac{3}{2} r\)
(2) \(\triangle \mathrm{BCO}\) において、
\(\begin{align} S_2 &= \frac{1}{2} ar \\ &= \frac{1}{2} \cdot 5 \cdot r \\ &= \frac{5}{2} r \end{align}\)
答え: \(\displaystyle \frac{5}{2} r\)
(3) \(\triangle \mathrm{CAO}\) において、
\(\begin{align} S_3 &= \frac{1}{2} br \\ &= \frac{1}{2} \cdot 4 \cdot r \\ &= 2r \end{align}\)
答え: \(2r\)
(4) \(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(\angle \mathrm{BAC}= 90^\circ\) であるから、
\(\begin{align} S &= \frac{1}{2} \cdot b \cdot c \\ &= \frac{1}{2} \cdot 4 \cdot 3 \\ &= 6 \end{align}\)
また、 \(S = S_1 + S_2 + S_3\) なので、
\(\displaystyle 6 = \frac{3}{2} r + \frac{5}{2} r + 2r = 6r\)
\(6r = 6\)
\(r = 1\)
答え: \(1\)
計算問題②「3 辺の長さから面積、半径を求める」
\(\triangle \mathrm{ABC}\) において、\(3\) 辺の長さが \(a = 4\), \(b = 3\), \(c = 2\) であるとき、次の問いに答えよ。
(1) \(\cos \mathrm{A}\) を求めよ。
(2) \(\sin \mathrm{A}\) を求めよ。
(3) \(\triangle \mathrm{ABC}\) の面積 \(S\) を求めよ。
(4) \(\triangle \mathrm{ABC}\) の内接円の半径 \(r\) を求めよ。
余弦定理や三角比を用いた面積公式を上手に利用しましょう。得られた答えをもとに次の問題を解いていくので、計算ミスのないように注意しましょう!
(1) \(\triangle \mathrm{ABC}\) において、余弦定理より
\(\begin{align} \cos \mathrm{A} &= \frac{b^2 + c^2 − a^2}{2bc} \\ &= \frac{3^2 + 2^2 − 4^2}{2 \cdot 3 \cdot 2} \\ &= \frac{9 + 4 − 16}{2 \cdot 3 \cdot 2} \\ &= −\frac{3}{2 \cdot 3 \cdot 2} \\ &= −\frac{1}{4} \end{align}\)
答え: \(\displaystyle −\frac{1}{4}\)
(2) \(\sin^2 \theta + \cos^2 \theta = 1\) より
\(\begin{align} \sin^2 \mathrm{A} &= 1 − \cos^2 \mathrm{A} \\ &= 1 − \left(− \frac{1}{4} \right)^2 \\ &= 1 − \frac{1}{16} \\ &= \frac{15}{16} \end{align}\)
\(\sin \mathrm{A} > 0\) より、
\(\displaystyle \sin \mathrm{A} = \frac{\sqrt{15}}{4}\)
答え: \(\displaystyle \frac{\sqrt{15}}{4}\)
(3) \(\triangle \mathrm{ABC}\) において、三角形の面積の公式より
\(\begin{align} S &= \frac{1}{2} bc \sin \mathrm{A} \\ &= \frac{1}{2} \cdot 3 \cdot 2 \cdot \frac{\sqrt{15}}{4} \\ &= \frac{3\sqrt{15}}{4} \end{align}\)
答え: \(\displaystyle \frac{3\sqrt{15}}{4}\)
(4) \(\triangle \mathrm{ABC}\) において、内接円の半径の公式より
\(\begin{align} r &= \frac{2S}{a + b + c} \\ &= \frac{2 \cdot \frac{3\sqrt{15}}{4}}{4 + 3 + 2} \\ &= \frac{\frac{3\sqrt{15}}{2}}{9}\\ &= \frac{\sqrt{15}}{6} \end{align}\)
答え: \(\displaystyle \frac{\sqrt{15}}{6}\)
以上で問題も終わりです!
内接円の問題は、三角比や三角関数とも関わりが深い内容です。
内接円への理解を深めて、さまざまな問題に対応できるようにしましょう。
ありがとうございます!テスト前に見直しました。
この度はコメントいただきありがとうございます。
当サイト記事がお役に立てておりましたら何よりです。
今後ともどうぞ当サイトをよろしくお願いいたします。