この記事では、「不定積分」の公式ややり方をわかりやすく解説していきます。
分数を含む場合など、さまざまな不定積分の計算問題の解き方を紹介していきますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね。
目次
不定積分とは?
積分とは、微分したら \(f(x)\) となる関数 \(F(x)\) を、微分後の関数 \(f(x)\) から求める計算のことでした。
このとき、「微分したら \(f(x)\) となる関数 \(F(x)\)」のことを「\(\color{red}{f(x)}\) の不定積分」といいます。
「不定」の意味
なぜわざわざ「不定」という言葉をつけるのかというと、微分したら \(f(x)\) となる関数 \(F(x)\) は \(1\) つには定まらないからです。
例として、微分したら \(2x\) となる関数を考えてみましょう。
一番シンプルなのは、\(x^2\) ですね。
\((x^2)’ = 2x\)
では、\(x^2\) の後ろに何かがついた式を微分してみるといかがでしょうか。
\((x^2 + 3)’ = 2x\)
\((x^2 − 1)’ = 2x\)
これらの関数も微分すると \(2x\) になるので、同じく \(2x\) の不定積分といえますね。
このように、ある関数を微分すると定数項の部分は消えるため、微分すると \(2x\) になる関数は無数に存在するのです。
このため、微分したら \(f(x)\) となる関数をまとめて「不定積分」と呼び、以下のように定義します。
不定積分の定義
微分すると \(f(x)\) となる関数を「不定積分」といい、以下のように表す。
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \int f(x) \, dx = F(x) + C}\end{align}
(ただし、\(C\) は積分定数)
また、微分すると \(f(x)\) となる関数を求めること自体も「不定積分」と呼ぶ。
定数部分はなんでもよいので、まとめて「\(C\)」と表し、「積分定数」と呼びます。
また、微分したら \(f(x)\) となる個々の関数は「原始関数」と呼ばれます。
つまり、無数に存在する原始関数の総称が「不定積分」というわけですね。
不定積分と定積分の違いについて説明しています。
積分とは?不定積分と定積分の違いをわかりやすく解説!
不定積分の公式一覧
不定積分には、関数の種類(べき乗関数、指数関数など)に応じて公式が存在します。
ここでは、代表的な不定積分の公式を紹介します。
なお、これらの積分公式は定積分でも利用します。
定積分とは?計算・面積公式や求め方をわかりやすく解説!定数の積分
一般に、定数項(変数をもたない項)の積分は次のようになります。
\(k\) を定数とすると、
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \int k \, dx = kx + C}\end{align}
(\(C\) は積分定数)
なお、「\(\displaystyle \int 1 \, dx\)」は \(1\) を省略して「\(\displaystyle \int \, dx\)」と表すことができます。
定数倍の積分
係数がついた項の場合、係数部分は微分・積分の影響を受けないので、積分の外に出すことができます。
\(k\) を定数とすると、
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \int k f(x) \, dx = k \int f(x) \, dx}\end{align}
多項式の積分
多項式は単項式(項)の集まりなので、多項式に含まれる個々の項を積分すると考えます。
関数 \(f(x)\)、\(g(x)\) について、以下が成り立つ。
\(\color{red}{\displaystyle \int \{f(x) \pm g(x)\} \, dx }\) \(\color{red}{= \int f(x) \, dx \pm \int g(x) \, dx}\)
また、\(m\)、\(n\) を定数とすると、以下も成り立つ。
\(\color{red}{\displaystyle \int \{m f(x) \pm n g(x)\}\, dx }\) \(\color{red}{= m \int f(x) \, dx \pm n \int g(x) \, dx}\)
べき乗の積分公式
べき乗 \(x^n\) の積分は次のように行います。
\(x^n\) の不定積分について、積分定数を \(C\) とおくと
- \(n \neq −1\) のとき
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \int x^n \, dx = \frac{1}{n + 1} x^{n + 1} + C}\end{align}
特に、\begin{align}\color{red}{\int x^0 \, dx = \int 1 \, dx = x + C}\end{align} - \(n = −1\) のとき
\begin{align} \color{red}{\int x^{−1} \, dx = \int \frac{1}{x} \, dx = \log|x| + C}\end{align}
\(n = −1\) のときのみ、積分後の式に絶対値 \(|x|\) の対数が含まれた特殊なかたちになることを頭に留めておきましょう。
一次式のべき乗の積分公式
べき乗の中身が一次式 \(ax + b\) で表せる場合には、式を展開しなくても積分できる公式があります。
\(a\), \(b\) を定数 \((a ≠ 0)\)、\(C\) を積分定数とおくと、
- \(n \neq −1\) のとき
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \int (ax + b)^n \, dx = \frac{(ax + b)^{n + 1}}{a(n + 1)} + C}\end{align} - \(n = −1\) のとき
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \int (ax + b)^{− 1} \, dx = \frac{\log|ax + b|}{a} + C}\end{align}
式の展開の手間を省くために、覚えておくと便利ですよ。
以降の積分公式は数学Ⅲ以降で学ぶ発展的な内容なので、必要のある方だけ覚えましょう!
指数関数の積分公式
指数関数の積分公式です。
積分定数を \(C\) とおくと、
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \int e^x \, dx = e^x + C}\end{align}
また、定数 \(a\) について、
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \int a^x \, dx = \frac{a^x}{\log a} + C}\end{align}
(ただし、\(a > 0\), \(a \neq 1\))
ネイピア数 \(e\) のべき乗は、微分・積分してもかたちが変わりません。
対数関数の積分公式
続いて、対数関数の積分の公式です。
積分定数を \(C\) とおくと、
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \int \log x \, dx = x \log x − x + C}\end{align}
省略されていますが、上記の対数関数の底は \(e\) です。
底が \(e\) 以外の対数では、底の変換公式で底を \(e\) に直してから積分することになります。
「底の変換公式」について説明しています。
指数と対数の関係とは?変換公式や計算問題を解説!
三角関数の積分公式
三角関数の積分公式のうち、以下の \(5\) つは丸暗記してしまった方が早いでしょう。
積分定数を \(C\) とおくと、
- \(\color{red}{\displaystyle \int \sin x \, dx = −\cos x + C}\)
- \(\color{red}{\displaystyle \int \cos x \, dx = \sin x + C}\)
- \(\color{red}{\displaystyle \int \tan x \, dx = −\log |\cos x| + C}\)
- \(\color{red}{\displaystyle \int \frac{1}{(\cos x)^2} \, dx = \tan x + C}\)
- \(\color{red}{\displaystyle \int \frac{1}{(\sin x)^2} \, dx = −\frac{1}{\tan x} + C}\)
これらの公式は右辺の微分から導くことができます。
このほかにも、さまざまなかたちの三角関数を積分できますが、この先は公式を丸暗記するのではなく、公式を導く過程の理解も必要です。
上記以外の公式について知りたい人は、より詳しい参考書などを学習してくださいね。
指数関数、対数関数、三角関数の積分においては、「置換積分法」および「部分積分法」の知識も必要になります。
置換積分法の公式やパターンを見分けるコツをわかりやすく解説 部分積分法の公式や証明、使うコツをわかりやすく解説!
不定積分のやり方【例題】
以下の例題を通して、不定積分のやり方を説明します。
以下の不定積分を求めよ。
\(\displaystyle \int \frac{(x − 1)(x + 2)}{x^2} \, dx\)
まずは、不定積分の公式を適用できる形を作ります。
例題は分数式になっており、そのまま当てはめられる公式がありませんね。
このようなときは、分子を展開していくことからはじめましょう。
\(\displaystyle \int \frac{(x − 1)(x + 2)}{x^2} \, dx\)
\(\displaystyle = \int \frac{x^2 + x − 2}{x^2} \, dx\)
そして、分母を分配して項を分離すれば、多項式の積分としてあつかうことができます。
また、各項の係数部分は自由に積分の外に出すことができましたね(定数倍の積分)。
\(\begin{align} & \int \frac{x^2 + x − 2}{x^2} \, dx \\ &= \int \left( 1 + \frac{1}{x} − \frac{2}{x^2} \right) \, dx \\ &= \int 1 \, dx + \int \frac{1}{x} \, dx − 2 \int \frac{1}{x^2} \, dx \\ &= \int 1 \, dx + \int \frac{1}{x} \, dx − 2 \int x^{−2} \, dx \end{align}\)
ここで、個々の項に不定積分の公式を当てはめましょう。
積分定数 \(C\) をつけ忘れないように気をつけます。
\(\begin{align} & \int 1 \, dx + \int \frac{1}{x} \, dx − 2 \int x^{−2} \, dx \\ &= x + \log |x| − 2(−x^{−1}) + C \\ &= x + \log |x| + 2 \cdot \frac{1}{x} + C \\ &= \color{red}{x + \log |x| + \frac{2}{x} + C} \end{align}\)
このように求められました。
公式に当てはまる形ができるまでは、焦らず式変形するように心掛けましょう。
不定積分の計算問題
不定積分は公式が多く覚えるのが大変ですが、実践的に身につけるのが一番です。
それでは、練習として計算問題を \(4\) 題、頑張って解いてみましょう。
計算問題①「分数式の不定積分」
以下の不定積分を求めよ。
\(\displaystyle \int \frac{1 − y − y^2}{y^2} \, dy\)
\(y\) の関数を \(y\) で積分します。
例題と同じように、展開して多項式を \(1\) 項ずつ切り離し、それぞれに積分公式を適用していきます。
\(\begin{align} & \int \frac{1 − y − y^2}{y^2} \, dy \\ &= \int \left( \frac{1}{y^2} − \frac{1}{y} − 1 \right) \, dy \\ &= \int \frac{1}{y^2} \, dy − \int \frac{1}{y} \, dy − \int 1 \, dy \\ &= −\frac{1}{y} − \log |y| − y + C \end{align}\)
(\(C\) は積分定数)
答え:
\(\displaystyle −\frac{1}{y} − \log |y| − y + C\)(\(C\) は積分定数)
計算問題②「ルートを含む不定積分」
以下の不定積分を求めよ。
\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{x}} + \sqrt{x^3}\)
ルートの公式なんて習ってないぞ!とあわててしまいますね。
ルートが出てきた場合は、指数のかたちに変形してべき乗の積分公式に当てはめましょう。
指数の有理数(分数)への拡張と累乗根
\(a > 0\)、\(k\), \(l\) が自然数のとき、
\begin{align}a^{\frac{k}{l}} = \sqrt[l]{a^k}\end{align}
\(\displaystyle \int \left( \frac{1}{\sqrt{x}} + \sqrt{x^3}\right) \, dx \)
\(\displaystyle = \int \left( \frac{1}{x^{\frac{1}{2}}} + x^{\frac{3}{2}}\right) \, dx \)
\(\displaystyle = \int (x^{−\frac{1}{2}} + x^{\frac{3}{2}}) \, dx \)
\(\displaystyle = \int x^{−\frac{1}{2}} \, dx + \int x^{\frac{3}{2}} \, dx\)
\(\displaystyle = \frac{1}{−\frac{1}{2} + 1} x^{−\frac{1}{2} + 1} + \frac{1}{\frac{3}{2} + 1} x^{\frac{3}{2} + 1} \) \(+ C \)
\(\displaystyle = \frac{1}{\frac{1}{2}} x^{\frac{1}{2}} + \frac{1}{\frac{5}{2}} x^{\frac{5}{2}} + C \)
\(\displaystyle = 2\sqrt{x} + \frac{2}{5} x^2 \sqrt{x} + C \)
(\(C\) は積分定数)
答え:
\(\displaystyle 2\sqrt{x} + \frac{2}{5} x^2 \sqrt{x} + C\)
(\(C\) は積分定数)
計算問題③「指数関数・対数関数の不定積分」
以下の不定積分を求めよ。
\(\displaystyle \int (3^x − 2e^x + \log x) \, dx\)
指数関数、対数関数の積分公式を利用しましょう。
ネイピア数 \(e\) に指数 \(x\) がついている場合と、その他の定数に指数 \(x\) がついている場合とで公式が異なることに注意します。
\(\begin{align} & \int (3^x − 2e^x + \log x) \, dx \\ &= \int 3^x \, dx − 2 \int e^x \, dx + \int \log x \, dx \\ &= \frac{3^x}{\log 3} − 2e^x + x \log x − x + C \end{align}\)
(\(C\) は積分定数)
答え:
\(\displaystyle \frac{3^x}{\log 3} − 2e^x + x \log x − x + C\)(\(C\) は積分定数)
計算問題④「tan x の不定積分」
以下の不定積分を求めよ。
\(\displaystyle \int \tan x \, dx\)
\(\tan\) の積分公式を覚えていれば、そのまま書きます。
覚えていない場合も、三角比の相互関係を利用して、\(\tan x\) を \(\sin x\) と \(\cos x\) で表すと不定積分が導けます(ただし、部分積分法の考え方を利用します)。
今回は、後者の解答を示します。
\(\begin{align} & \int \tan x \, dx \\ &= \int \frac{\sin x}{\cos x} \, dx \\ &= −\int \frac{(\cos x)’}{\cos x} \, dx \\ &= −\log |\cos x| + C \end{align}\)
(\(C\) は積分定数)
答え:
\(−\log |\cos x| + C\)(\(C\) は積分定数)
以上で計算問題も終わりです。
不定積分は計算が複雑になりがちなので、混乱してしまったときは、微分で検算するとよいです。
さまざまな問題に触れて公式の使い方に慣れ、不定積分をマスターしていきましょう!