この記事では、「分数関数」についてわかりやすく解説していきます。
分数関数のグラフの書き方や不等式の解き方、微分積分のやり方なども説明しますので、この記事を通してぜひマスターしてくださいね!
分数関数とは?
分数関数とは、ある変数についての分数式で表された関数のことです。
\(f(x)\), \(g(x)\) が \(x\) の多項式であるとき、
\(\color{red}{\displaystyle y = \frac{f(x)}{g(x)}}\) の形で表される関数を分数関数という。
分数関数は不等式や微分積分に登場したり、グラフの問題で登場したりします。
グラフの問題では、一次分数関数が出てくることが多いです。
一次分数関数のグラフ
分母と分子が \(x\) の一次式である関数を、「一次分数関数」といいます。
一次分数関数は、反比例の関数 \(\displaystyle y = \frac{a}{x}\) と同じ直角双曲線です。
つまり、反比例の関数を平行移動したものが一次分数関数であるといえますね。
一次分数関数の基本形
一次分数関数は、以下のような「基本形」で表すとグラフの形がわかりやすいです。
関数 \(\displaystyle y = \frac{a}{x}\) のグラフを \(x\) 軸方向に \(p\)、\(y\) 軸方向に \(q\) だけ平行移動してできるグラフの方程式は
\begin{align}\color{red}{\displaystyle y = \frac{a}{x − p} + q}\end{align}
なお、\(\displaystyle y = \frac{a}{x − p} + q\) の漸近線の方程式は
\(\color{red}{x = p}\) および \(\color{red}{y = q}\)
どんな一次分数関数でも、基本形に直せばグラフの概形がわかります。
一次分数関数の変形方法(基本形)
一次分数関数を基本形に直すのは簡単で、\(\bf{\text{(分子)} \div \text{(分母)}}\) をするだけです。
\(\displaystyle y = \frac{3x + 4}{x + 1}\) を基本形に直せ。
\(3x + 4\) を \(x + 1\) で割ると、商 \(3\)、余り \(1\) なので、
\(\begin{align} y &= \frac{3x + 4}{x + 1} \\ &= \frac{3(x + 1) + 1}{x + 1} \\ &= \color{red}{\frac{1}{x + 1} + 3} \end{align}\)
これで、関数 \(\displaystyle y = \frac{3x + 4}{x + 1}\) は \(x = −1\), \(y = 3\) を漸近線にもつ直角双曲線であるとわかりますね。
一次分数関数のグラフの書き方
同じ例題で、一次分数関数のグラフの書き方を説明します。
\(\displaystyle y = \frac{3x + 4}{x + 1}\) のグラフを書け。
まずは、与えられた一次分数関数を基本形に変形します。
以下のように変形できましたね。
\(\begin{align} y &= \frac{3x + 4}{x + 1} \\ &= \frac{3(x + 1) + 1}{x + 1} \\ &= \frac{1}{x + 1} + 3 \end{align}\)
基本形の式 \(y = \displaystyle \frac{1}{x + 1} + 3\) から、漸近線は \(x = −1\), \(y = 3\) とわかります。
座標平面を用意し、漸近線を点線で書き込みましょう。
一次分数関数のグラフを書くときは、「漸近線」と「軸との交点(あれば)」を示す必要があります。
\(x\) 軸との交点は \(y = 0\) を代入、\(y\) 軸との交点は \(x = 0\) を代入してそれぞれ求めます。
\(\displaystyle 0 = \frac{1}{x + 1} + 3\) より、
\(x\) 軸との交点は \(\displaystyle \left( −\frac{4}{3}, 0 \right)\)
\(\displaystyle y = \frac{1}{0 + 1} + 3 = 4\) より、
\(y\) 軸との交点は \((0, 4)\)
最後に、双曲線のグラフを書けば完成です!
軸との交点以外の座標は必ずしも示す必要はありませんが、ある程度きれいなグラフを書きたい場合は数点の座標を調べておくと安心です。
漸近線と交わらないようにだけ注意しましょう!
【参考】二次以上の分数関数のグラフ
二次以上の分数関数についても、同様の手順でグラフの概形を求められます。
ただし、極値を求めるには「微分」や「相加・相乗平均の関係」を利用する必要があります。
(例)\(\displaystyle y = \frac{x^2 + x − 5}{x − 2}\) のグラフ
\(\begin{align} y &= \frac{x^2 + x − 5}{x − 2} \\ &= \frac{(x − 2)(x + 3) + 1}{x − 2} \\ &= \frac{1}{x − 2} + (x + 3)\end{align}\)
よって、漸近線の方程式は
\(x = 2\)、\(y = x + 3\)
なお、\(x > 2\) のとき、相加・相乗平均の関係より
\(\begin{align} y &= (x + 3) + \frac{1}{x − 2} \\ &= (x − 2) + \frac{1}{x − 2} + 5 \\ &\geq 2\sqrt{(x − 2) \cdot \frac{1}{x − 2}} + 5 \\ &= 7 \end{align}\)
等号成立条件は
\(\displaystyle x − 2 = \frac{1}{x − 2}\) すなわち \(x = 3\)
よって \(x > 2\) において点 \((3, 7)\) で最小値をとる。
対称性を考えると、\(x < 2\) においては点 \((1, 3)\) で最大値をとる。
分数関数の方程式・不等式
分数関数を含む方程式(分数方程式)、分数関数を含む不等式(分数不等式)の解き方を説明します。
なお、分数不等式を解く方法としては 2 の「通分する」が一番オススメです。
分母を払う方法は場合分けが必要ですし、グラフを書く方法は式が複雑だと手間になります。
分数方程式の解き方
次の例題を通して、分数方程式の解き方を説明します。
方程式 \(\displaystyle \frac{2}{x + 3} = x + 4\) を解け。
分数方程式の場合、分母を払えば通常の方程式として解くことができます。
ただし、このとき \((\text{分母}) \neq 0\) という条件がつくことに注意しましょう。
分数式では、分母は \(0\) になり得ないと考え、はじめから \((\text{分母}) = 0\) の条件を除外します。
\(\displaystyle \frac{2}{x + 3} = x + 4\) より、
\(2 = (x + 4)(x + 3)\) かつ \(x + 3 \neq 0\)
\(2 = (x + 4)(x + 3)\) より
\(2 = x^2 + 7x + 12\)
\(x^2 + 7x + 10 = 0\)
\((x + 2)(x + 5) = 0\)
\(x = −2, −5\)
これらは \(x \neq −3\) を満たす。
答え: \(\color{red}{x = −2, −5}\)
分数不等式の解き方① 分母を払う
次の例題を通して、分数不等式の分母を払って解く方法を説明します。
不等式 \(\displaystyle \frac{2}{x + 3} < x + 4\) を解け。
両辺に同じ数をかけて分母を払うと、かける数の符号によって不等号の向きが変わるため、場合分けが必要になります。
例題では両辺に \((x + 3)\) をかければよいので、\(x > −3\) と \(x < −3\) で場合分けしましょう。
不等式 \(\displaystyle \frac{2}{x + 3} < x + 4\) を解く。
(i) \(x > −3\) のとき
\(x + 3 > 0\) より、両辺に \((x + 3)\) をかけると
\(2 < (x + 4)(x + 3)\)
\(x^2 + 7x + 12 > 2\)
\(x^2 + 7x + 10 > 0\)
\((x + 2)(x + 5) > 0\)
\(x < −5, −2 < x\)
\(x > −3\) との共通範囲は
\(−2 < x\) …①
(ii) \(x < −3\) のとき
\(x + 3 < 0\) より、両辺に \((x + 3)\) をかけると
\(2 > (x + 4)(x + 3)\)
\(x^2 + 7x + 12 < 2\)
\(x^2 + 7x + 10 < 0\)
\((x + 2)(x + 5) < 0\)
\(−5 < x < −2\)
\(x < −3\) との共通範囲は
\(−5 < x < −3\) …②
①、②より
\(−5 < x < −3, \,\, −2 < x\)
答え: \(\color{red}{−5 < x < −3, \,\, −2 < x}\)
分数不等式の解き方② 通分する
次の例題を通して、分数不等式を通分して解く方法を説明します。
不等式 \(\displaystyle \frac{2}{x + 3} < x + 4\) を解け。
項をすべて左辺に移動し、通分してから分子を因数分解します。
場合分けが不要なので解答がスッキリとします。
不等式 \(\displaystyle \frac{2}{x + 3} < x + 4\) を解く。
移項して、
\(\displaystyle \frac{2}{x + 3} − (x + 4) < 0\)
\(\displaystyle \frac{2 − (x + 3)(x + 4)}{x + 3} < 0\)
\(\displaystyle \frac{2 − (x^2 + 7x + 12)}{x + 3} < 0\)
\(\displaystyle −\frac{x^2 + 7x + 10}{x + 3} < 0\)
\(\displaystyle −\frac{(x + 2)(x + 5)}{x + 3} < 0\)
分母分子が因数分解された形になったら、不等式を満たす \(x\) の値の範囲を考えます。
\(\text{(因数)} = 0\) となる \(x\) の値が符号の切り替わる境界となります。
分数式のまま考える場合は次のような簡単な符号表を作るか、頭の中で代入計算をするとよいでしょう。
左辺「\(\displaystyle −\frac{(x + 2)(x + 5)}{x + 3}\)」について、
よって答えは
\(−5 < x < −3, \,\, −2 < x\)
答え: \(\color{red}{−5 < x < −3, \,\, −2 < x}\)
分数式のままだと頭がこんがらがるという場合は、分母の \(\bf{2}\) 乗を両辺にかけて分母を払い、\(y = \text{(左辺)}\) のグラフと \(x\) 軸との関係を考えましょう。
両辺に \((x + 3)^2\) をかけても不等号の向きは変わらないので、
\(−(x + 2)(x + 5)(x + 3) < 0\)
よって、
\(\color{red}{−5 < x < −3, \,\, −2 < x}\)
わざわざ両辺の「\(2\) 乗」をかけるのは、不等号の向きを変えないためです。
何かの \(2\) 乗は必ず \(0\) 以上の数になりますね。
分数不等式の解き方③ グラフを書く
次の例題を通して、グラフを用いて分数不等式を解く方法を説明します。
不等式 \(\displaystyle \frac{2}{x + 3} < x + 4\) を解け。
\(y = \text{(左辺)}\) と \(y = \text{(右辺)}\) のグラフを書いて、グラフの上下関係を考えます。
不等式 \(\displaystyle \frac{2}{x + 3} < x + 4\) を解くには、
\(\left\{\begin{array}{l} \displaystyle y = \frac{2}{x + 3} \ \text{…①}\\ y = x + 4 \ \text{…②}\end{array}\right.\)
のグラフにおいて、①よりも②が上側にくる \(x\) の範囲を求めればよい。
①は \(y = 0\), \(x = −3\) を漸近線とする直角双曲線、②は直線である。
\(\displaystyle \frac{2}{x + 3} = x + 4\) のとき、
\(2 = (x + 4)(x + 3)\)
\(x^2 + 7x + 10 = 0\)
\((x + 2)(x + 5) = 0\)
よって \(x = −2, −5\)
\(x = −2\) のとき \(y = −2 + 4 = 2\)
\(x = −5\) のとき \(y = −5 + 4 = −1\)
であるから、①と②の交点は \((−2, 2), (−5, −1)\)
したがって、①、②のグラフは次の通りとなる。
よって、求める \(x\) の範囲は
\(−5 < x < −3, \,\, −2 < x\)
答え: \(\color{red}{−5 < x < −3, \,\, −2 < x}\)
例題のように一次分数関数程度のグラフであればささっと書けますが、二次以上になると少し大変になります。
ただ、グラフを書いて求めよと指定される場合もあるので、流れは理解しておきましょう!
分数関数の計算問題
ここまでの知識をもとに、分数関数の計算問題に挑戦しましょう。
計算問題①「漸近線と通る 1 点から分数関数を求める」
漸近線の方程式が \(x = 1\), \(y = −3\) で点 \((2, 1)\) を通る双曲線について、次の問いに答えよ。
(1) 方程式を求めよ。
(2) グラフを書け。
分数関数の基本形がわかっていれば簡単ですね。
グラフはていねいに書きましょう!
(1)
求める双曲線の方程式は、
\(\displaystyle y = \frac{a}{x − 1} − 3\)
とおける。
これが点 \((2, 1)\) を通るから、
\(\displaystyle 1 = \frac{a}{2 − 1} − 3\)
\(1 = a − 3\)
\(a = 4\)
よって
\(\displaystyle y = \frac{4}{x − 1} − 3\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle y = \frac{4}{x − 1} − 3}\)
(または \(\color{red}{\displaystyle y = \frac{−3x + 7}{x − 1}}\))
(2)
グラフは以下の通り。
答え:
計算問題②「分数関数を平行移動する」
\(\displaystyle y = \frac{2x + 3}{x − 1}\) のグラフは、\(\displaystyle y = \frac{−x + 1}{x + 4}\) を \(x\) 軸、\(y\) 軸方向にどれだけ平行移動したグラフか。
移動前後の分数関数を両方とも基本形に直してから、平行移動量を考えます。
平行移動の問題では、符号に注意しましょう。
\(y = \displaystyle \frac{2x + 3}{x − 1} = \frac{5}{x − 1} + 2 \) …①
また、
\(\displaystyle y = \frac{−x + 1}{x + 4} = \frac{5}{x + 4} − 1\)
これが \(x\) 軸方向に \(p\), \(y\) 軸方向に \(q\) だけ平行移動したグラフを①とすると、
\(\displaystyle y = \frac{5}{x + 4 − p} − 1 + q\) …②
①と②が一致するから、
\(−1 = 4 − p\)、すなわち \(p = 5\)
\(2 = −1 + q\)、すなわち \(q = 3\)
答え:
\(\color{red}{x}\) 軸方向に \(\color{red}{5}\)、\(\color{red}{y}\) 軸方向に \(\color{red}{3}\) だけ平行移動したグラフ
対象とする関数の種類にかかわらず、「グラフの平行移動」は基本的に同じ考え方で解くことができます。
グラフの平行移動とは?二次関数などの公式と作図を解説!
計算問題③「分数関数の不等式を解く」
不等式 \(\displaystyle \frac{4x − 3}{x − 2} \geq 5x − 6\) を解け。
分数不等式には \(3\) 通りの解き方がありましたね。
ここでは、通分による方法を示します。
左辺より、\(x \neq 2\)
\(\displaystyle \frac{4x − 3}{x − 2} \geq 5x − 6\) より
\(\displaystyle \frac{4x − 3}{x − 2} − (5x − 6) \geq 0\)
\(\displaystyle \frac{(4x − 3) − (x − 2)(5x − 6)}{x − 2} \geq 0\)
\(\displaystyle \frac{(4x − 3) − (5x^2 − 16x + 12)}{x − 2} \geq 0\)
\(\displaystyle \frac{−5x^2 + 20x − 15}{x − 2} \geq 0\)
\(\displaystyle −\frac{5(x^2 − 4x + 3)}{x − 2} \geq 0\)
\(\displaystyle \frac{(x − 3)(x − 1)}{x − 2} \leq 0\)
ここで、両辺に \((x − 2)^2\) をかけても不等号の向きは変わらないので
\((x − 3)(x − 2)(x − 1) \leq 0\)
よって
\(x \leq 1, 2 < x \leq 3\)
答え: \(\color{red}{x \leq 1, 2 < x \leq 3}\)
分数関数の微分法【公式】
ここでは、分数関数を微分する方法について説明します。
分数関数は関数同士の商で表されるので、商の微分公式で微分できます。
\(\displaystyle y = \frac{f(x)}{g(x)}\) の導関数は、
\begin{align} \color{red}{y’ = \frac{f’(x)g(x) − f(x)g’(x)}{\{g(x)\}^2}} \end{align}
特に、\(f(x) = 1\) のとき
\begin{align} \color{red}{y’ = \left( \frac{1}{g(x)} \right)’ = −\frac{g’(x)}{\{g(x)\}^2}} \end{align}
項の順序を間違えやすいので、「分子 \(f(x)\) を先に微分する!」と覚えておきましょう。
上記公式を含む、「微分の公式」について説明しています。
微分とは?微分のやり方と全公式をわかりやすく解説!
例題「分数関数を微分する」
次の例題を通して、分数関数の微分のやり方を説明します。
以下の関数を \(x\) について微分せよ。
(1) \(\displaystyle y = \frac{x + 2}{2x^3 − 1}\)
(2) \(\displaystyle y = \frac{2\sqrt{x}}{\log x}\)
慣れるまでは、ていねいに式展開しましょう。
分母、分子の微分を先に調べておくのも計算ミスを減らすポイントです。
(1)
\((x + 2)’ = 1\)
\((2x^3 − 1)’ = 6x^2\)
よって
\(\displaystyle y’\)
\(\displaystyle = \frac{(x + 2)’(2x^3 − 1) − (x + 2)(2x^3 − 1)’}{(2x^3 − 1)^2}\)
\(\displaystyle = \frac{(2x^3 − 1) − 6x^2(x + 2)}{(2x^3 − 1)^2}\)
\(\displaystyle = \frac{2x^3 − 1 − 6x^3 − 12x^2}{(2x^3 − 1)^2}\)
\(\displaystyle = \frac{−4x^3 − 12x^2 − 1}{(2x^3 − 1)^2}\)
\(\displaystyle = −\frac{4x^3 + 12x^2 + 1}{(2x^3 − 1)^2}\)
答え: \(\color{red}{\displaystyle y’ = −\frac{4x^3 + 12x^2 + 1}{(2x^3 − 1)^2}}\)
(2)
\(\begin{align} (2\sqrt{x})’ &= (2x^{\frac{1}{2}})’ \\ &= 2 \cdot \frac{1}{2} x^{−\frac{1}{2}} \\ &= \frac{1}{\sqrt{x}} \end{align}\)
\(\displaystyle (\log x)’ = \frac{1}{x}\)
よって
\(\begin{align}\displaystyle y’ &= \frac{(2\sqrt{x})’ \log x − 2\sqrt{x} (\log x)’}{(\log x)^2}\\&= \frac{\frac{1}{\sqrt{x}} \log x − \frac{2\sqrt{x}}{x}}{(\log x)^2}\\&= \frac{\frac{\log x}{\sqrt{x}} − \frac{2}{\sqrt{x}}}{(\log x)^2}\\&= \frac{\log x − 2}{\sqrt{x} (\log x)^2}\end{align}\)
答え: \(\color{red}{y’ = \displaystyle \frac{\log x − 2}{\sqrt{x} (\log x)^2}}\)
分数関数の積分法【公式】
分数関数の積分は、式の形によって解き方を工夫する必要があります。
ここでは、代表的な \(3\) つのパターンの解き方を説明します。
① 分子に分母の微分が隠れているパターン
分子に分母の微分の形があれば、次の積分公式を利用できます。
\(\displaystyle \int \frac{1}{x} \ dx = \log x + C\) より、
\begin{align}\color{red}{\displaystyle \int \frac{f’(x)}{f(x)} \ dx = \log|f(x)| + C}\end{align}
(\(C\) は積分定数)
分母よりも分子の次数が \(1\) つ低い場合は、このパターンでないかチェックしましょう。
(例1)
\(\displaystyle \int \frac{x}{x^2 + 3} \ dx\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} \int \frac{2x}{x^2 + 3} \ dx\)
\(\displaystyle = \frac{1}{2} \int \frac{(x^2 + 3)’}{x^2 + 3} \ dx\)
\(\displaystyle = \color{red}{\frac{1}{2} \log(x^2 + 3) + C}\)
(例2)
\(\displaystyle \int \frac{x^2 + 1}{2x^3 + 6x + 1} \ dx\)
\(\displaystyle = \frac{1}{6} \int \frac{6x^2 + 6}{2x^3 + 6x + 1} \ dx\)
\(\displaystyle = \frac{1}{6} \int \frac{(2x^3 + 6x + 1)’}{2x^3 + 6x + 1} \ dx\)
\(\displaystyle = \color{red}{\frac{1}{6} \log|2x^3 + 6x + 1| + C}\)
② 分母が因数分解できるパターン
分母が一次式で因数分解できる場合は、部分分数分解で項をわけると積分しやすくなります。
(例1)\(\displaystyle \int \frac{2}{x^2 + 3x + 2} \ dx\)
\(\begin{align}\displaystyle \frac{2}{x^2 + 3x + 2} &= \frac{2}{(x + 1)(x + 2)}\\&= 2 \left( \frac{1}{x + 1} − \frac{1}{x + 2} \right)\end{align}\)
より、
\(\displaystyle \int \frac{2}{x^2 + 3x + 2} \ dx\)
\(\displaystyle = 2 \int \left( \frac{1}{x + 1} − \frac{1}{x + 2} \right) \ dx\)
\(= 2(\log|x + 1| − \log|x + 2|) + C\)
\(\displaystyle = \color{red}{2\log \left| \frac{x + 1}{x + 2} \right| + C}\)
(例2)\(\displaystyle \int \frac{3x − 1}{x^2 + 4x + 4} \ dx\)
\(\begin{align}\displaystyle \frac{3x − 1}{x^2 + 4x + 4} &= \frac{3x − 1}{(x + 2)^2}\\&= \frac{A}{(x + 2)^2} + \frac{B}{x + 2}\end{align}\)
とおく。
両辺を整理すると
\(3x − 1 = A + Bx + 2B\)
これが \(x\) についての恒等式となればよいので、
\(B = 3\), \(A + 2B = −1\) より \(A = −7\)
よって
\(\displaystyle \int \frac{3x − 1}{x^2 + 4x + 4} \ dx\)
\(\displaystyle = \int \left\{ −\frac{7}{(x + 2)^2} + \frac{3}{x + 2} \right\} \ dx\)
\(\displaystyle = \color{red}{\frac{7}{x + 2} + 3\log|x + 2| + C}\)
③ 分母に \(x^2 + a^2\) の形があるパターン
「\(\color{red}{x = a\tan\theta}\)」に置換するとうまく積分できることが多いです。
(例)\(\displaystyle \int_0^{\sqrt{3}} \frac{1}{x^2 + 3} \ dx\)
\(x = \sqrt{3} \tan\theta\) とおくと、
\(\displaystyle \frac{1}{x^2 + 3} = \frac{1}{3(\tan^2\theta + 1)}\)
\(\displaystyle \frac{dx}{d\theta} = \frac{\sqrt{3}}{\cos^2\theta}\) より \(\displaystyle dx = \frac{\sqrt{3}}{\cos^2\theta} \ d\theta\)
また、
\(x\) | \(0 \longrightarrow \sqrt{3}\) |
\(\theta\) | \(0 \longrightarrow \displaystyle \frac{\pi}{4}\) |
よって
\(\displaystyle \int_0^{\sqrt{3}} \frac{1}{x^2 + 3} \ dx\)
\(\displaystyle = \int_0^{\frac{\pi}{4}} \frac{1}{3(\tan^2\theta + 1)} \cdot \frac{\sqrt{3}}{\cos^2\theta} \ d\theta\)
\(\displaystyle = \int_0^{\frac{\pi}{4}} \frac{\cos^2\theta}{3} \cdot \frac{\sqrt{3}}{\cos^2\theta} \ d\theta\)
\(\displaystyle = \int_0^{\frac{\pi}{4}} \frac{1}{\sqrt{3}} \ d\theta\)
\(\displaystyle = \left[ \frac{\theta}{\sqrt{3}} \right]_0^{\frac{\pi}{4}}\)
\(\displaystyle = \color{red}{\frac{\pi}{4\sqrt{3}}}\)
以上で解説は終わりです!
分数関数の式変形が素早くできると、グラフを書いたり問題を解いたりするのがとても楽になります。
しっかりと練習しておきましょうね!